2018年11月26日月曜日

弁論ブログの「アロケーター」記事からakが受け取った3つの問いかけ

最近、キエフ弁論同好会さんが素晴らしい記事を連発しており、更新がとても楽しみです。

特に今回の記事「役職「アロケーター」がいてもいい気がしなくも無い」は、反響も大きいようです。ポイントとしては、従来ACは全ての役割(モーション作成、ジャッジ、アロケーション等)を等しくやると想定されてきていたが、大会運営を効率化するためには「アロケーター」としてアロケーションに専念する役割分担をAC内で行うべきでは、という問いかけです。(もちろんすべての大会で毎ラウンド行うべきか、というのは別の議論でしょうが。)

これだけでも当然示唆深いのですが、背後にある問いかけをさらにak的に深堀りすると、3つの問いかけを見逃してはいけないのではないか、と思いました。

1. 「AC」のベストプラクティスをコミュニティとして引き継ぐ工夫が必要ではないか?
まず、この記事で暗に私が注目しているのはN西さんの存在です。私も一度ご一緒したことがあるのですが、N西さんはまさにAC・コミの両輪どちらでも秀でている能力があり、大変すばらしいと思っていてこの大会でも素晴らしい貢献を果たされたのだな、と思っていました。一方で、ツイッター等の反応を見ると「このような制度は知らなかった」という声及び「この制度って他でもやっていませんでしたっけ?」という一見相反する声があります。これは、「ベストプラクティス」(wikiによると、ある結果を得るのに最も効率のよい技法、手法、プロセス、活動など)がコミュニティとして共有されていないことを示唆していると思いました

もう5年以上前のことになりますが、私の同期にもAC・コミどちらをとっても優秀なディベーターがいました。彼と一緒にACを行った大会では全て「アロケーター」なる役割が当たり前に存在していました。どこかでやったことを聞いた人、もしくは思いついた「ベストプラクティス」がコミュニティ全体にいきわたれば、reinvention of the wheelも起きないのにな…と思いました。

その意味で、今回のブログは素晴らしいです。まさにコミュニティへの「公共財」を提供することで、ベストプラクティスを共有しているので。Fantasticですね。

2. 「アロケーター」が解決している課題は他の方法でもさらに解消する工夫ができないか?
アロケーターがSolutionだとすると、背後にあるProblemは「遅延リスク」や「ACがスピーディに帰って来ざるを得ないためフィードバックを受けられないリスク」等に当たるかと思います。これらはアロケーターで解決できる部分もあれば、それ以外の方法も取ることでより効果をあげる、というケースもあるかと思います。(また、ジャッジがいなくなってしまう、のようにアロケーターのデメリットを鑑みて採用しない場合の代替案にもなりますね)
例えば、アロケーション周りでakがよく経験した遅れるパターンはパッと見ても下記があります。

・事前にアロケーション・フィロソフィーを決めていない
(最後の方になって、この部屋にどのジャッジを入れるかでもめる、等)

・「質」と「速さ」がトレードオフの際過度に「質」を優先しすぎるアロケーション・フィロソフィーになっている
(例えば、Round 1の結果をすべてRound 2に反映する、等)

・アロケーションのインプットとなる情報をそもそも得られていない
(オフライン・タブの場合はランナーの配置方法等、オンラインの場合はそれとタブとの連携)

・アロケーションの最終責任者を決められていない
(ブログにも少し書かれていましたが、例えばそれはCAなのか、それともDCAのだれかなのか、等)

・(もしアロケーションを全員でやるのであれば)ACを近い部屋にアロケートできていない
(最新のTabだと、部屋もいじれるようですね)

これらともセットでより効率化を目指すことはできるのではないかな、と思います。
そういう意味で、以前取りあげたRyoso Cupも素晴らしいですね。アロケーションが相当に合理的に決められています。

(これは、ある種「大会のコンサル」をakが行った際に作成した「Debate Tournament Frameworkから見た Ryoso Cup 2016、Momiji Cup 2016」の成果物のP.9-10にも引用させて頂いております。(記事はこちら))

3. ACの「役割分担」はアロケーションに限らず考える余地はあるのではないか?
アロケーションはもちろん役割分担を必要に応じてするとして、それ以外の役割分担もセットになるかと思います。

例えば、Adjudication Core Manualでは、ACの仕事をCommunication, Rules/Guideline, Allocation, Motions, Seminar, Presentationの6つに分けています。(5つめと6つめは大会によって異なる)

例えば私が常にベストプラクティスだと信じてやまないLokeの大会ではこの分業も徹底されています。私がこの前行った大会でも最初に役割分担が徹底されました。
具体的には、下記のような役割分担がなされました。

・コミ・参加者とのCommunication=Lさん、(当日の対ジャッジはBさん、ak)

・Rules/Guideline作成・プレゼン=Pさん、Rさん、Jさん、ak

・Motions=リードはBさん、(それ以外も自然に精緻化する人、ディスカッションをファシリテートする人、EFL/ESL等の観点からaccessibilityを確認する人等、ディスカッションをしているうちに自然に役割分担がされました)

・Allocation=草案はTabのGさん、FinalizeはJさん/Hさん
(ポイントは、Tabが相当に世界トップクラスの方でACも何度も行っている方なので、ほぼ草案が通るらしいです。これも示唆深い)

・Presentation(モーション発表スライド、マッチアップ等)周りを奇麗にする役割=Tさん

これらのLeadはCAが行う、もしくは経験者の方がCAにこっそり耳打ちする、とかがいいのかもしれません。


取り急ぎ以上となります。
アロケーターはオプションの1つとして広まることを願いつつ、これら3つの問いに関しても併せてご参考になれば幸いです。

ちなみに蛇足ですが、ブログ記事があると、色々それをもとにインスパイアされるのでいいですね。弁論ブログさんの記事があったおかげでここまで書けました、改めて感謝です。たぶんブログが活発になると、こうやって「ブログ間のディスカッション」とかも増えていい気がします。

2018年11月11日日曜日

その練習、ボトルネックを解消していますか?

1. ボトルネックとは何か?
突然ですが「ボトルネック」という言葉を御存じでしょうか?
ググるとこの定義が分かりやすかったので引用します。
「ボトルネック」とは作業やシステムなどにおいて能力や容量などが低い、または小さく、全体の能力や速度を規定してしまう部分のことを指します。つまり、「ボトルネック」は全体の能力や成果に影響する問題となる要因です。 
大きなボトル(瓶)でも通り道が狭いネック(首)になっていると、一定時間当たりの出る液体の量は少なくなってしまいますよね。「ボトルネック」は、この現象に由来してさまざまなビジネスシーンに利用されているのです。
(参照:https://gakumado.mynavi.jp/freshers/articles/43640)

上の定義にもありますが、ボトルって通り道が広いところと狭いところがあります。全部広ければ一気に水はだーっと出るのでいいのですが、狭いところがあると少なくなってしまいます。その狭いところを広げることを「ボトルネックを解消する」ということとイコールになります。

コンサルティングでも「今の問題のボトルネックは何だろう?」という問いがよくされます。最も効率的に問題を解決しようとすると、「一番影響する原因」に対する処方箋を考えるのが良いからです。これは、特にヒト・モノ・カネや時間が有限である際にとても重要な考え方となります。資源があれば全部できるのですが、そうもいかないからですね。

2. ディベートでも重要なボトルネックの概念
そしてこれはディベートにも応用することができる考え方です。特にディベートは多くの人が長くて4年程費やすことがありますが、365日フルであるわけではありません。大学の授業はもちろんとのこと、他のサークルやバイト等も考えると時間はどんどん限られてくるからです。

今あなたがやっている練習法が「ボトルネックを解消しているか?」という点で見直してほしいというのが私のメッセージです。

凄く言い方を悪くすると「非効率的な努力」に時間を費やし、その結果としてなかなかディベートがうまくいかない、という現象に陥ります。「たくさん練習はしているつもりなのに勝てない」「あんなに練習したのにスピーカースコアが伸びない…」という悩みはないでしょうか?実は私もありました。

3. ボトルネックを解消できていない練習例

練習例1:ラウンド依存症
分かりやすいのはラウンド練にのみ傾注しているパターンです。何度もこのブログでも取り上げているように、ラウンドはある種総合練習であり、特定の能力を集中的に高める上では向いていません。これが「(想定外なことが起きそうな)具体的なラウンドでの立ち回りができない」「最近のディベートやジャッジのトレンドが分からない」というのがボトルネックなのであれば最適な練習なのでしょうが、そうでない場合はラウンドばかりやることは向いていないでしょう。

Debating Cycle Theoryを見ても「ラウンド外」に注目する必要がありますし、どうすれば、上手くなれるのか? -"成長エンジンの設計方法"-でもラウンド依存症が陥りがちな罠としてご指摘させて頂いております。)

練習例2:「とりあえずIR」のリサーチ
他にもよくあるパターンは、とりあえずリサーチ=IRという等式に基づくことです。確かに、IRはできなかった時のインパクトが大きいためIRのリサーチは行いがちです。ですが、これはボトルネックなのか?というのは2つの問いが必要となります。

I. 知識不足と考えた際に、それはIRが最もボトルネックになっているのでしょうか?
例えば、IRは「大会でよく出るのか?」×「あなたが知らないのか?」の2軸で考えた際に最も優先順位が高いものでしょうか?
例えば、akの調査によると、最近の1年生の全国大会でIRの頻出度は11位です。もちろんこれだけで判断するのは浅はかですが(ACの傾向や近年のトレンド等、勘案すべき点は多数あるので)もし、政治、社会的弱者に関する知識が不足しているのであればそちらのほうがより「ボトルネック」ではないでしょうか?


(参考:【即興型ディベート部のマネジメント】練習における議題の選び方

II. そもそも、私はディベート力は大きくは「インプット(知識)」×「プロセス(思考法)」×「アウトプット(英語プレゼン力)」で構成されていると思っています。(厳密には色々他もありますが)
これは一種ボトルネックを特定するフレームワークとして活用できます。

換言すると、何がボトルネックになっているのか、ということをアセスメントできるのはこういう問いができます。
・議題に関する知識が足りない?
・思考力が弱い?
・英語プレゼン力が弱い?

すなわち、ここで実はあなたはそこそこ知識はあるものの、実はそれを短時間でArgumentにする「プロセス」が弱いかもしれません。またはArgumentやRefutationも考えられているのかもしれませんが、英語力が追いついておらずスピーチに反映されていないかもしれません。正しくボトルネックを解消できていない典型例になり得ます。

4. どうすれば、ボトルネックを解消できる練習方法を立案できるのか?

すこし答えを頭出ししていますが、下記の3ステップをおすすめしています。

Step 1: ディベート力の「全体像」を考える
私は「インプット(知識)」×「プロセス(思考法)」×「アウトプット(英語プレゼン力)」が全体像の一つの切り方だと思いますが、他にも「プレパ(個人)」「プレパ(チーム)」「相手のスピーチを聞く」「自分のスピーチをつくる」のように時間軸で全体像を捉えることもできるでしょう。
さらに一段解像度をあげれば、「知識」も、CJS、経済、IR等たくさんあり得ますし、「思考力」もTBH思考法に分けることもできます。
(なお、思考法に関してはこちら、プレゼンに関してはこちらも参考になるかと思います)

Step 2:その中でも特に自分に欠けているものは何か原因を考える
これは、チームメイトやジャッジなどからのフィードバックをたくさん得ることも大事ですが、それらをもとに「なんで勝てないのか?」「なんでうまくならないのか?」という問いを繰り返すことが重要です。
なお、この際コーチを依頼することも効率的です。僭越ながら私の例では、チームとしての思考法の部分をボトルネックと特定し、過去にプレパ・シートを提案したことがございます。

Step 3:実際にそのボトルネック仮説に基づいて練習を行い、成果が出ているか確認する
その後はいったんJust Do Itという世界にもなります。
実際うまくなっているのか、というところを何かしらの方法で「見える化」していくことが重要になります。
分かりやすい指標は勝率やスピーカースコアになるかと思いますが、色々あり得るかと思います。
成果が出ていないのであればボトルネックが違う、もしくはボトルネックは正しく特定しているがアプローチが異なるのどちらかになりますので、それを修正していくことになります。

いかがでしたでしょうか?
ぜひ「ボトルネックを解消している練習」を毎回行ってくださいね。

2018年11月7日水曜日

紙なしスピーチにチャレンジ!

最近お勧めしている練習の一つに「紙なしスピーチ」があります。
文字通り、プレパ用紙を使わずにスピーチをすることです。(プレパ中はOKだが、慣れたら無しも良いかも)

海外のディベートサーキットでは(それこそオックスフォードとかでも)たまにやられる練習スタイルらしいです。

私もやってみたことがあるのですが、下記のようなメリットがありました

スピーチを通じて「イイタイコト」が結晶化(クリスタライズ)される
(結局チームとしてのスタンスは?だとか一番伝えたいことは何か?だとかが必死に分かりやすくなる。特にボトムアップディベーターであるとすごく良いトレーニングかと。)

・上記と関連して、スピーチのストラクチャーが奇麗になる
(1st Argumentで言わないといけない点はこういう風に3点に整理する、のようなことができる、単純化しないと覚えられないので)

・「その場で考えながらスピーチする」ことで、プレパ時間の無駄を省ける
(これはakにとって実は1番のブレイクスルーでした。例えば1年生の時とかって最後の5分は自分で考える時間ね、のようなプレパスタイルが当たり前化していて、「5分は無いとスピーチができない」と思い込んでいました。実はそこまではいらないんだ、ということとかが分かったりします。)

「その場で考えながらスピーチする」ことで、実はその場でロジックとかを深めたり話を取捨選択することができる
(その場では何を言うかとかを丁寧に考えるようになるので、あ、その場で実はもう一つロジック思いついた、というような現象も。)

・(プレパのメモも禁止の場合は)話の流れを必死に頭の中で整理し(Issueの見える化)、重要なポイントとその対応へと取捨選択できる(ボトルネックへの取捨選択)
(これも意外と重要でした。特にBPだとか、AsianのWhipとかになると、紙を書きすぎるクセがあったんだなと思いました。意外とその場で「結局論点は2つでここを倒せばいいのか」と考えられるようになりました。)

もちろん、全員に全員この練習がベストだとは思っていません、が、
・イイタイコトが実はなかなかはっきりしないボトムアップ系ディベーター
・ストラクチャーが汚いと言われるディベーター
・長い間とりあえず最後の5分はスピーチをつくっているディベーター
・議論が整理できないディベーター
・「重要じゃない反論を打っている」と言われるディベーター

にはフィットするかもしれません。仮説的には、1年生とかよりも少し後のディベーターのほうがいいのかもしれません。
ぜひ一度やってみてください。

(追伸:なお、実際にやる際に人によっては「こいつ舐めてるのか?(失礼なんじゃないか?)」みたいな目で見られることもあるようなので、事前に伝えておくといいかもしれません)

2018年10月7日日曜日

akが見た世界トップジャッジ陣のトレンドと、日本のディベート観との比較

今年はKyushu Debate Open、Macau Tournament of Champions、China BPと3つの国際大会に参加しました。

その中で、ひたすらに海外のトップディベーター(近年/今年の、WUDC CA/DCA、Champion、Best Speaker、Australs CA、Champion等)にジャッジされたり一緒にジャッジしたりした中で、akが重視する傾向にあるなぁと感じたことを書いていきます。

(最近国内の大会に顔を出せていないので、日本でもこのトレンドがあるのかもしれませんし、サンプル数は25位なので十分に優位なのかもわかりませんが、ご参考になれば幸いです。また、これらは「近年」重視されはじめたのか、前からなのか、等のところは分からないというところも断っておきます。ややcontroversialになるかもと思いながらも、議論するきっかけになれば幸いです。何かご質問などあればいつも通り当然どうぞ!)

1. Argumentの強さを測るのはWhy true?とWhy important?の2つのレンズ
こちらのMDGによる有名なビデオにもありますが、基本的にArgumentはこの2軸で評価されます。(この2つの掛け算によりArgumentの強度が決定される)

Why true?というのは、akの解釈では、いわゆるメカニズムと呼ばれるような"how"(なぜ起きるのか)が中心となると思います。これは、モーションに関連性の高い(Relevantな)5W1Hにより「なぜ特定のことが起きるのか」というのを深く説明できるか、だと思っています。(なお、Secondary Mechanismの重要性はこちらの記事で書いています)

Why important?というのは、絶対的Impact/相対的Impact両方になるかと思います。(これも同じくこちらの記事で書いています)なお、所説ありますが、特にPrincipleとしてのWhy important?の説明は特に日本勢は下手な傾向にあるのでは?とある海外ディベーターに指摘されたことがあります(大きな主権とか自由とか、正義とかです。)。

事実、直近のChina BPでも、例えば「OpeningはWhy true?はあったけどWhy important?がなかったよね」だとか、「ClosingってWhy importantが無かったから評価できないよね」というコメントが多々存在しました。

なお、これを日本のSQ, AP, Impactと対比してみると、基本的なフレームとしては悪くないのかもしれません。いわゆるWhy true?はSQ, APの説明にあたるかもしれないので。ただ、昨今盛り上がっているSQ, AP, Impact批判論にあえて乗っかるとすると、Why true?を証明する一手段としてのSQ, APのフレームワークとして位置付けるほうが良いのではないか、と個人的には思っています。

なお、ジャッジをしていると「どんなArgumentであってもこの2軸で判断すればよい」と思えるようになるので、よりシンプルにかつ感覚にあったジャッジができたような気がしており、個人的にもお勧めです。フィードバックでも"Why true?というところは例えばX. Y, Zと証明していたけどWhy important?が抜けていたよね"というほうが、海外ディベーターの納得度も個人的に高くなっているように感じました。

2. Counterfactualとの比較でWhy true?を証明
Counterfactualという言葉が最近流行っています。ジャッジでもよく聞きますし、ディベーターも「OGはCounterfactualがなかった」というようなFailure指摘をするようにも増えてきているように思えます。直近でもMacau Tournament of ChampionsのOW(GF Best Speaker, Champion)は1st ClashをOG's missing counterfactualと明示して笑いもとっていました。

Counterfactualは直訳すると「反事実」となりますが、akの解釈では"what would the world look like in their/our world"的に、「もう一方の世界観」だと思っています。例えば、THS the dominant narrative of Xの場合、「Xがdominant narrativeな世界」のcounterfactualは「そうでない世界」になりますが、それは例えば「Xが1 narrativeとなっている世界」もしくは、「Yがdominant narrativeになっている世界」になり得るかと思います。

これを日本の今までのSQ, AP論に当てはまると、SQのcounterfactualは例えばAPにはなり得ることはあると思います。一方で、毎回そうとは限らない(分かりやすいのはcounterplanがあるとき)ので、万全なフレームワークではないのでしょう。特に、Policy MotionではなくAnalysis Motion (THS, THR,等)のときはさらにそうかもしれません。

なお、China BPのBriefingでもAnalysis Motionでは「We need to describe and justify how an alternative world would look」と言っているので、counterfactualがなぜ起きるのかという説明も必要になる(Why true?の説明は当然必用)ことだけ留意ください。

感覚的ですが、本当に多くのジャッジ陣がRFDでも使うことが増えてきているなぁと思ったりしているので、ディベーターとしてスピーチで使うだけでも「おっ」と思わせられるかと思います。事実、China BPで3日目に大きく点数を伸ばしたThe Kansaiチームは、OFも"counterfactualがない"とスピーチにねじ込んでいたところを見ると、アジャストしたのかもしれません。

さらに日本のコンセプトに近づけて論じると、Oppのcounterfactualでは実際もっと悪くなってしまう、という考えだけを見ると、いわゆるBlack Marketの考え方の構図に近いのかもしれません。

3. Mutual Exclusiveであれば、一気に相手のWhy important?を弱体化
ここ数年流行っている概念の一つはMutual Exclusiveかどうかです。Mutual Exclusivityとは、Gov, Opp 2つのModel/Paradigm/Worldにおいてどちらかだけに排他的に存在するか?と問いかけている概念です。要はGov or Oppだけで起きるのか、Gov, Oppどちらでも同じくらい起きるのかという2パターンあるうちのどっちなのか、もし前者であればArgumentとして重要だし、後者であれば重要性ががくっと下がる、というものです。これは上記のWhy true? important?にのっとると、仮にimportanceもめちゃくちゃ説明していたとしてもnot mutually exclusiveということを証明できれば一気に弱くなる、という位置づけになるかもしれません。

もちろん、どのようにExclusiveになるのか/ならないのかというのはディベーターの説明に依存し、何ならそこが論点になることもある、というような感触を得ました。

日本での示唆ですが、反論の型の一つにIt is not mutually exclusiveという型を入れ込む、というのもアリなんじゃないかなと思っています。

なお、余談ですがあるアジアのトップディベーター曰く、この概念はここ数年のトレンドだとか。でも結構アジアでは前から聞いていたような気もしているし、Tateとかも"non-contentious"という反論も結構打ったりしていたなとも思ったので、もしかしたれあHorizontal思考のトップディベーターの中ではずっと概念としてはあったがそれが定着した、ということなのかもしれません。

2018年9月30日日曜日

BP クロージングのプレパ方法

最近よく質問されることの一つが、BPのクロージングでのプレパの方法です。
もちろん絶対的な答えはないと思いますが、ak流のやり方をご紹介します


1. まずはオープニングと同じようにプレパ
まずは普通に考えます。Spiritってなんだろう、1st Principleのクラッシュってなんだろ、一番強い話はなんだろう、具体的なExampleやAnalogyはないかな、変なスタンスとかってあり得るかな、Necessity/Solvency/Justificationは?などです。いわゆるTop-Down, Bottom-Up, Horizontal は全部バランスよく考えます。
意外とOpeningが普通の強い話を埋めない場合もあります。その場合は普通の話を普通にして勝つスタイルになるかと思います。

2. アイデアの種を幅広に出しておく
これは、deputy以降だと必ずやります。普通の話じゃなさそうな話をあえて意識的に探すのが特徴かもしれません。それは例えば、
-中長期的にどうなるのか?(Secondary Mechanismに近いかもしれません) というのも、だいたい最初のメカニズムは強いチームは言うので。
-他のステークホルダーはいないか?(ある程度MECEに考えることも意識します。男性、女性、子供、貧困層、中間層、富裕層、マイノリティ、企業、政府、、、など、イメージとしてスキャニングしていきます。)
-モーションのワーディングの抜け落ちはないか?例えばなんでsubsidy? なんでaggressiveなど、ワーディングのチェックリストじゃないですが、ユニークネスを考えます。

3. オープニングで話されそうなことの仮説を立てる
これが結構大事かもです。強いラウンドになると、オープニングが普通に話すことは話してきます。つまり、1.は既にカバーされていることが多いです。
そうなると、じゃあどうやって抜くか、を考え始めます。それは例えばオープニングだと特定のクラッシュが水かけになりそうだからそれを超えよう。だとか、オープニングなと確実にこの話はされなさそうだからこの話を準備しよう、だとかになります。2.と組み合わせて確実に抜けられそうなNew ideaが1個でも見つかっていればしめたものだと思っています。

4. ラウンド中は、まずどのチームを倒しにいくかを考える
ラウンドに入ると、オープニングのファーストコンタクトの段階で、まずどこにどう勝とうか考え始めます。例えば自分のオープニングが圧倒的に強い場合は、斜めのオープニングにエンゲージしてもゾンビを倒してるだけで無意味です。逆に斜めが強くそこを対処する、またはオープニングがデッドロックになっていそうでそれを超える、とかもあるかと思います。または、クロージングになるとオープニングをごっそり抜きにかかり、クロージングの横のチームを上回る、というパターンもあります。いわゆるオープニングをBox Outしにかかる魅せ方になるかと思います。
また、試合によっては必死に2位をとりにいく、というのも戦略です。BPは、GF以外は1位になる必要はないのですから。

5. 3チームより上になる理由を考える
最後に、3チームを上回る理由を明示できるとなおよしです。なんであなたのチームはオープニングを超えているのか?横のクロージングを超えているのか、が大事です。もちろんIssue-basedが基本となり、一番クリティカルな論点に答えた、とかもあり得ます。
また、Macau Tournament of Champions 2018 GFでは、COがあえてほかの3チームのFailureをClashにするという面白い戦術を使っていました。1. OG’s missing counterfactual 2. OO’s missing mechanism、などのようなやつです。別にこれが良いというわけではないですが、結局相対的Impactを明示する、というところに尽きるかと思います。

2018年9月28日金曜日

海外の高校生/初心者向けトレーニング方法に学ぶ

最近、海外で高校生/初心者向けのディベートのトレーニング方法についてよくヒアリングしているのですが、日本と異なる(かもしれない)特徴がいくつかありました。示唆深いのでシェアします。

・まずは"スピーチ"することに慣れるところから
まずは身近なトピックで行う、母語で行う、準備時間を伸ばす、等としてスピーチをするところから始めることが多いようです。
いきなり7分に向けて話させる、という練習方法も私のときはあったりしましたが、おそらく人によるんでしょうね・・・

・"分析"とは何かを最初に抑える
海外ではArgument(立論)をWhy true?  Why important?の2つで構成していると教えていることが多いようです。(特にヨーロッパでは)。
日本で言うと前者がメカニズム、後者がインポータンス、インパクトとかと教わることが多い気がしています。AREAという型もここで
そしてそれらは、何度もWhy? How?を繰り返していく訓練になるらしく、「こうだと思う、理由はこうだ」「じゃあそれはなんで?」「こうだ」「それはなんで?」という風に対話を繰り返していくようです。
また、面白かったのはある国ではあえて「Example」はなし、という縛りをすることもあるようです。曰く、「Exampleだと逃げてしまう」とのことです。

日本のチームはよく「アイデアは良いが分析が浅い」と言われますが、
これはもしかしたらAREAの型は教える一方で、Rをひたすら深めていく、というところが足りないからかもしれません。例えば、Secondary Mechanismが弱い傾向にあるのは、私も以前この記事で指摘している通りです。

・早い段階で多くのMotionの種類に触れさせる
これは2つ意味があり、①Policy Motionに限らず、Analysis Motion (THBT, THR THS等)と、Actor Motion (TH, as X,...)にも早い段階から触れること、②テーマとしても色々多岐にわたらせること、がポイントのようです。
特に前段の"分析"とは何か、というところが分かっているので、それは普遍的にPolicyだろうが、Analysisだろうが、Actorだろうができるんだろうな~と思いました。
(日本だと、Policy Motion-heavyになっている大学もあると聞いたので、示唆かもしれません)

・反論でも最初から幅広に型を教える
日本だと昔ICUがメソッドにしていた5つの反論の型等もあったかと思いますが、
基本的にはArgumentの構成要素(Mechanism, Importance等)に対応する形で教えることに加え、
高校生の早い段階からEven ifの話をするようです。Argumentに対する反論をDirect Refutationだとすると、Even ifというのはIndirect Refutationだと呼んでいる国もありました。
(日本だと、Rに対するMechanisticな反論は教わる一方、
counterproductive, not mutually exclusive, even ifのようなバラエティを教えるのが少し遅い傾向にある、とヒアリングで聞きました)

ご参考になれば幸いです!

2018年9月3日月曜日

ジャッジのコツ ディベーターの話が理解できないあなたに

ジャッジは難しいですが面白いですし、やりがいもあります。そして何より、ジャッジの存在はディベート界において不可欠です。

かなり前のことですが、Golden Cupに参加した時や、また最近ディベートの初心者の方に対してジャッジのやり方をお話させて頂くことがあります。その際にまず最初に躓くのが「ディベーターの話を理解するところ」になります。「ディベーターが何を言っているのか理解することができませんでした…」という相談を受けることがあります。

これは、①英語力、②最低限の前提知識、③整理(構造化)のどれかがボトルネックになっていることが多いです。

①英語力
①英語力というのは、文字通りとなります。これも解像度をあげて考えると、例えば所謂「1-2年生の海外経験の無い人の話を聞けない」というものなのか「ネイティブの人の話を聞けない」なのかによって処方箋が変わってくるかと思います。前者であればpremitiveではありますが、文法であったり幾つかの単語力というところが良いかもしれません。

個人的には単語力の向上をお勧めすることが多いです。日本語が苦手な方のお話も、いくつかの単語を並べられるとなんとなくわかる、という経験って多いですよね。おすすめブックリスト50にも書きましたが、TOEFL 3800とかはおすすめです。ここでのランク2まで抑えておくとなんとなくは話は分かりますし、ランク3まで行けると大体困りません。後は英語力の向上方法の記事もご覧ください。

また、発音の問題であれば、結構耳で慣らしにいくのも重要です。よくイギリス発音が聞きづらい、というようなこともあるようで、友人はイギリス系のディベーターの音源を聞きまくっていたと言います。

②最低限の前提知識
②の最低限の前提知識、というのは、①ともかなり関わりますがそのトピックごとによくでるコンセプトやアクター等となります。5日間の記事でも書きましたが、1st Principleのような話もありますし、例えばCriminal Justiceであれば、Retribution, Deterrence, Isolation, Rehabilitationというようなコンセプト、lawyer, victim, perpetrator, prosecutor, judge, juryのようなアクターなどは抑えておきたいところです。Economyであれば、negative externalities (負の外部性)、information asymmetry(情報の非対称性)のようなコンセプトや、shareholder, investor, employee, employer, labor unionのようなアクターは知っておきたいところかと思います。ショートカットしたいのであれば幾つかの有名音源をさらっと聞くということでもいいですし、入門書的なものを英語とセットで一気に読んでしまうのもお勧めです。

とはいえ、15分-30分じゃあたふたしちゃいますよね。こういう時は賛否両論ありますが、ACであったり、他のジャッジの人と話をしてみたり、オンラインで少し議論を調べるような人もいるようです。あくまで最低限の前提知識の理解のためであり、その後のバイアスにはならないようには注意が必要ですが。

③話の整理・構造化
③の整理・構造化というのは実はあまり教えられることがないかと思います。結局ディベーターは15分-30分の準備時間しかないため、話がごちゃごちゃしてしまうことがあります。それらをうまくジャッジとして整理することは介入ではなく裁量ですが、これはどういうことでしょうか。例えば、

・ディベーターが伝えようとしていたキーメッセージを要約する(AREAで言う、Aの要約) 
(結局Argumentはこういう話だった、だとかCase(Argument/Refutation等を全て含んだ、イイタイコト)はこういう話だった、ということ) →特にボトムアップ型のディベーターの人は苦手な傾向にあります。

・キーメッセージの理由を整理する(AREAで言う、Rを整理)
(理由を4つあると言っていたが、実は結局2つめと3つめはほぼ同じことだった、等)

のようなことがあります。

人によっては図解することや絵でかくことで話を整理する場合もあります。

この整理・構造化は難しいので改めて詳細は別途どこかで話すかと思いますが、
すぐできるTipsとしてのポイントは2つあります。
(1) 「結局この話って何だった?」「Argumentを一言で言うと何だった?」と自分で問いかけること(ラウンド中に何度も聞きます。特にスピーチとスピーチの間)
(2) メモをとる紙とは別に、ラウンドの全体像が分かる紙を準備。(akの場合は、各スピーカーのフローをとる紙と、まとめる用の紙をわけています)そちらでは、たとえばPMが何を言ったのか、LOが何を言ったのか、等を書いていたり、BPであればチームとして何を言っていたかというキーワードを複数書いてあります。deterrence!とか、rehabilitation!とかそういうレベルだったりします。クリティカルな反論とかが来た場合はそれもNot mutually exclusive!のように書くこともあります。ポイントは「大きな流れ」を常に見える化することです。

いかがでしたでしょうか。ディベーターの話が理解できない方がよく陥りがちな3つのパターンに分けて紹介してみました。どれもすぐ出来るようになるものではないですが、いくつかTipsも書いてみたのでぜひ実践してみてください!

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主要記事まとめはこちら
※ ジャッジの部分では、よくあるディベーターからの疑問の解消法や、BPのジャッジのコツ等も書かれているのでぜひあわせてご覧ください

2018年8月4日土曜日

Do not reinvent the wheel!

最近、上級生の人に教育関係のお話をさせて頂く際に、
"Do not reinvent the wheel!"とお話させて頂いております。

Wikipediaによると下記の意味です。
車輪の再発明(しゃりんのさいはつめい、英: reinventing the wheel)は、車輪を題材にした慣用句であり、世界中で使われている。「広く受け入れられ確立されている技術や解決法を知らずに(または意図的に無視して)、同様のものを再び一から作ること」を意味する。
すなわち、実は簡単に学べることがあるにもかかわらず、それを苦労して学んでいる構図があるのではないでしょうか、と思っています。

例えばPrincipleに関して、特定の専門性(法律、経済、IR)、戦術(BPのClosingでの勝ち方)等に関しては、コミュニティを見ていると残念ながらReinvent the wheelが起きているような気がします。

逆にReinvent the wheelをしていない例は、いわゆる基本ルールに加え、AREA、Triple Aをはじめとした、1年生向けのベーシック・ディベート・スキルだと思います。

これは何もあなたのせいというわけではなく、日本ディベート界が持つ構造的な問題なのかもしれません。例えば、3年生で就職活動などをはじめとして一回ディベートから離れてしまうため指導者不足に陥ってしまうことはどの地域でもあるかと思います。ディベート・コーチというロールが(一部の大学が過去に行っていたことはありますが)あまり浸透していないこともあるかと思います。Pro-Amのように上級生-下級生が組む大会があまりないというのもあるかもしれません。また、全体的な運営体制が1年で引継ぎというところで、引継ぎの断絶が起きていることもあり得ます。

抽象化して、一般論としてReinvent the wheelをしないためには暗黙知を形式知化しアクセシブルにすること、もしくは暗黙知を継承できる制度になるかと思います。

>部の運営者の皆様
前者は、いわゆるレクチャー資料づくり、勉強会、資料共有等になるかと思いますが、例えばそれを部の単位でいうとIntelligence機能の具備もありますが、実は「レクチャー/エジュケのノウハウシェア」というところが抜け落ちている気がします。「レクチャーのレクチャー」とかが増えるといいのかもしれませんね。
現役の頃からを合わせると、10校以上に対してエジュケ等の相談を受けましたが、どうやら継続的にはないようです。昔はIXIAという部長会でインフォーマルで行われていた、ということも聞きますが。あと、UTでは伝統的に上級生が春合宿でレクチャラーを務めるような制度になっています。
あとは意外にも、「どこにどういうソースがあるかわからない」という情報の一元管理不足ということも根深いかもしれません。いわゆるディベートを熱狂的に行っている人はJPDUのセミナー資料も全部読んでいますし、ありがたいことに本ディベート自由帳も全部読んでくださっています。また、海外レクチャー系もEUDCも含め見ています。でもそうでないと、そもそも知らない…ということも大きいようです。

後者でいうと、コーチ制等があるかと思います。昔はUTでも例えばBP Noviceに向けて上級生が下級生に教える(最近だと道場という形で続いている模様)とかがあり、AGU等でも取り入れられていたと聞きます。海外ですと、Pro-Amが結構あるみたいで増えたらいいなぁと思っています。ただこれはちょっと留意が必要で、例えば社会人になると正直直前のドタキャンリスクがあっていつも申し訳ないという構図もあったりするので、それが解消されると(オーストラリアだと飛び入り参加とかもできるとか?)さらに嬉しいなと思ったりもします。

>レクチャー担当者の皆様
また、レクチャー担当の個人となると、まずは「類似資料をあさる」「他のレクチャー経験者に話を聞く」というようなところからスタートするといいかと思います。

akもUTでおそらく5年以上にわたって使われたエジュケ資料をつくるにあたっては、先輩のエジュケ資料を全部もらいました。JPDUの資料は全部読みました。Principleの今は有名となったTriple Aの型も先輩とディスカッションしたこともあります。

また、もし可能であればそういったレクチャー資料の公開等も行っていくとよいかと思います。どんな人にとっても「公共財」になるというところがあるといいなと思いディベート自由帳もスタートしているので、もしこのパッションに共感頂いたらぜひ。

Do not reinvent the wheel!

2018年6月25日月曜日

ディベートを辞めたくなったあなたに4つの問いかけ

他の部活と同様、ディベートを辞めたくなる時ってあると思います。特に、ディベートは辛い時期があります。
ak_debateもそうです。特に全然伸びずに自分はディベートが向いていないんだなと日々思ったときは何度もありました。他のサークル活動と比較したこともありました。"引退"として、9ヵ月間一切ディベートの大会やイベントに出なかったこともありました。

ディベートを辞めたくなる理由は人によりますが、結論として辞めるのもありですし、距離を置くのもありですし、またはがむしゃらに再スタートするのもありだと思います。私は以下のような4つの問いかけをさせて頂くことが多いです。

1.改めて、今ディベートを辞めたい理由って何なんだろう?
 まず、ここの言語化はかなりつらい部分もあると思います。感情の吐露にもなることが多く、akも過去に紙にがーーーっと書き殴ったりして無理やり思考を言語化したり、多くの先輩を捕まえては愚痴を聞いてもらったりしたこともあります。
 これを考える上では、いつごろから辛くなったのか、もやもやしたのか、そのきっかけは、等を考えることが多いです。そしてそれはなぜか、というのをWhyを繰り返しながら考えていきます。
 その結果として、辞めたい理由を分類します。例えばそれがディベートの競技に起因するものなのか、コミュニティに起因するものなのか、もしくは一時的なのか恒常的なのかなどが分かってくるかと思います。これが例えば結構競技・コミュニティ両方にまたがり、恒常的なのであればもしかしたら辞めるという選択肢が現実的になってくるかもしれません。
 そしてその原因を考えます。例えば競技だとしたら何でうまくならないのか、のようなことを考えるわけです。その結果として原因が自分でどうしようもないものとどうにかしようのあるものにも分かれてくるかと思います。自分でどうにかできそうだったらそれを解消する、とかになるかもしれませんし、逆にどうしても解決できないとかであれば諦めるとかかもしれません。
 
2.ディベートをやりたいと思ったきっかけって何なんだろう?やりたいと思った瞬間は何だろう?
 ディベートを始めたきっかけって人それぞれだと思います。また、やり続けようと思った理由もそれぞれだと思います。どういうところが楽しいと思ったり、感動したり、心が動いたりしたのでしょうか?
 これも、競技やコミュニティの話になるかと思います。akの場合は先輩が色々なアイデアをポンポン出せることに感動していたり、英語力を維持したいなと思ったりしていたのが最初で、それが徐々に人の成長に寄り添える喜びなどに代わっていきました。特にakゼミ等のコーチを通じてそれを感じました。理不尽さ、不条理さをなくしたいという自分のミッションにミートする部分が多いと思ったのもあると思います。最近は色々アカデミックな面やディベート初心者向けへのチャレンジ環境も魅力的ですし、OBOG会をはじめとした組織運営も非常に楽しいです。それら関係なしにかけがないの無い友人が属しているというのも大きいかと。

3.例えば、これから1年、2年とディベートを続けたとするとどういう未来が待っているのだろうか?自分は将来どうありたいのか?
 この問いも重要です。時間は有限のため全部やることはできません。どうしても何かしらの優先順位もつけないといけなくなります。
 個人的な所感ですが、競技ディベーターとしてトップを目指してコミットすることはその分かなりの時間的投資を要することにはなるかと思っています。何ならコスパが悪いと評している人もいます。思考力・知識・プレゼン力を上げていく必要性がありますし、当然これはコミュニティが成熟すればするほど相対的に満たさないといけない水準もあがっていきます(=競争は激化します)。もちろん例えばそれがそういう優勝というような結果ではなく、あくまで自分のディベート力を身に着けたいというような教育的意義であれば、その目標が達成されるまでかもしれません。
 ちなみにakは社会人1年目はディベートを"引退"していました。その最大の理由は、私がそんなに器用な人間ではないということと、自分の将来である理不尽さや不条理さを解決したいというミッションに照らし合わせたときに、明確に職業上得られるスキルをつけることが優先順位として高くなるからです。いくらディベートと社会人スキルの一部が重なるとはいえ、未知のスキルのほうが多い中、新しいスキルを身に着けるというのはかなりチャレンジングでcomfort zoneからも抜けないといけません。うまくバランスをとれる人ならともかく、ある種、やり方もわかっているディベートに行くことをakの場合"逃げ道"としてしまうことがありそうだと私の場合は判断し、あえて"引退"にしたわけです。(もちろんもっと器用な人とかはうまくできるでしょうし、これは決して社会人ディベーターを批判している意図では当然ありません)。今は改めて足りないスキルを訓練したり、またはコミュニティビルディングやディベート普及、教育や研究等別の理由があるため"比較的"適度な距離感をもってディベートに携われるようになりましたが、最初からやっていたらできなかったと思います。
 他にも、学生時代から院の研究が忙しい時期、就職活動の時期などはあまりディベートしませんでした。あとはその意思決定はしませんでしたが、他のサークルに入る、だとかをしていたとしたら(ちなみに2年くらいまで2つくらいサークルはやっていましたし、イベントとかはM1とかでも私は出ていました)さらに競技の優先順位は下がっていたかと思います。ディベート以外のコミュニティや活動も当然魅力的なので。
 ネガティブなことをかなり書きましたが、もちろん一方で、ディベートで継続的に得られる短い時間での思考力や、勝つために必死に得られる知識、人を説得するという汎用的なスキルが身についていく様や、それ以上にコミュニティのあったかさなどはとても魅力のため、そこに居続けるという未来もわくわくするものでもあるとは思っています。

4.これらの結果、ディベートとどう向き合うか?
以上の3つの問いに答えると、おのずと今後どうするかというオプションが見えてきます。それは例えば下記のようなパターンになり得るかと思います。

・ディベートに起因しないような一時的な悩みだったのでとりあえずまた明日からがむしゃらに頑張る
・ディベートに起因する問題であり、それを解決できるようにする(例:XXの観点から伸び悩んでいたのでそれを伸ばすためにYYをする)
・しばらくディベートをやった結果の燃えつき症候群だったのでしばらくディベートから距離を置く
・他のやりたいことがあるのでしばらくはそちらを優先する
・ディベートをきっぱりやめて、別のことにコミットする

私自身、この4つの問いは定期的に考えます。どのような選択肢を選ぶのかも、あなた次第だとは思います。ただ、この4つの問いを考えてみると、思考が一歩前進するかもしれません。

2018年6月22日金曜日

大会直前の準備方法

大会直前って不安ですよね。最後の2-3日にak_debateが何をやっているのか、4点ご紹介します。

その1:
「大会中に意識すること」を書きだすリストを最終化します。これは「イントロを短くする」「Intuitiveなイラストをする」とかが5個くらい並んでます。大会中には必ずプレパ用バインダーの一番下のページにおいて、何度も見返しています。

その2:
今までのラウンドの復習をします。やった練習を思い出して、こういうこと言えたなぁというディベート各論的なことであったり(ディベートノートを更新する)、スキル的にこういうことがうまくなったなーとか学びを棚下すイメージです。新しいことよりも定着重視です。新しいことをやり始めちゃうとなかなか一気に習得できないんで。

その3:
自分のディベートの調子を最大限に高める工夫をします。ディベート10年目でもいまだにやっているのは、自分がお手本にしている、こういうスピーチをしたいなという有名音源を聞いてイメトレしたり、調子が良かった時の自分を聞いてモチベートしています。仮に直前で調子が悪かったとしても、寝て切り替えるくらいの勢いです。

その4:
そして最後に、身体的なコンディションを整えることを最優先します。結局持っているスキル・やる気がいくら高くても体調が悪いと元も子もないので、ゆーっくりお風呂に入って、好きな音楽(僕の場合いきものがかりとか)聞いてリラックスします。

少しでも参考になれば幸いです。Good luck!









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2018年5月31日木曜日

【御礼】10万アクセス&1000フォロワー超え! + ブログを書いている理由

ついにブログの10万アクセス、Twitterの1000フォロワー超えを達成いたしました!

ブログを始めたことろはこんなにアクセス数が伸びるとは思っていませんでした。読んでくださっている皆様のおかげです。

ふと過去ログを振り返ると、2012年にスタートしているようです。もう6年たつということで早いものです。最初はひっそりと行っていたのですが、今ですとこのブログを読んでくださっている、ないしはak_debateのアカウントを普段フォローしてくださっている、という声を掛けてくださる方も増えました。大変嬉しい限りで、それが励みになっています。

なぜブログを書いているのでしょうか?それは私が理不尽さ・不条理さが嫌いだというところに根差していると思います。例えば、それがいわゆる強豪校じゃない場合、先輩が就職活動等でいなくなってしまった場合、地理的に簡単に試合ができる状況にない、部を立ち上げようとしているけれども仲間がいない、練習機会が限られている…等、大学生であれ、社会人であれ、中高生であれ、色々な理不尽さ、不条理さってあると思います。要は自分でコントロールできない要因でディベートの楽しみを知れないだとか、うまくなれるはずなのになれない、のようなことって辛いと思います

それから、教えることによって、他の方が「できるようになった」という場面に立ち会うのが好きなんだと思います。人に教えるというのは責任が重く頭を悩ませますが、その分やりがいも大きいことです。ふと途中から自分の結果も当然さることながら、必死にコーチした後輩が活躍していたことに嬉しさを覚えることも増えました。(それでも負けず嫌いなので負けると悔しいですが 笑)

それから、日本ディベートコミュニティ全体が強くなってほしい、という想いもあります。私がディベートを始めたきっかけのひとつは「世界で戦える」ところに魅力を覚えたからです。昔テートという超絶強いマレーシアのディベーターが言っていたことですが、「君たち(日本人)が言ったからといって、説得力を持たないわけではない」というようなことは印象に残っています。考えてみれば、日本人だからという理由で頭が悪いわけでもないはずですし、説得力を持たないわけでもないはずです。もちろん英語などのハンデはあっても、勝つポテンシャルはあるはずです。ここ数年で東南アジアも強くなりました。北東アジアも活躍するようになりました。次は日本がより世界に羽ばたいてほしいと思っています。僕は1年生で世界大会に行って4回連続最下位を取るなど、散々な結果でした。最後の年で意気込んでもメインブレイクには到底届きませんでした。そういう意味ですと、その夢をコミュニティに託しているのかもしれません。それが、ある種"公共財"の提供なのかなと思っています。ここには、私が運よく先輩・同期・後輩から教わったこと、自分で考えていることをできる限り言語化・理論化したいという意図があります。

このような想いから、ブログを書いているんだと思います。勿論私の理論も完ぺきではないところも多々あるかとおっもいます。それでも、少しでも理不尽さ・不条理さが解消されれば、少しでも成長に寄り添えれば、少しでも日本が強くなれば、という思いで書いていきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。

2018年5月20日日曜日

【80点超えのスピーチシリーズ各論⑤】Reply編

総論としての「80点超えのスピーチをするには」を受けた、各論シリーズです。
今までのPrime Minister編Leader of the Opposition編Deputy Speakers編Whip編の続編となります。

厳密に言うと、Replyは1/2の点数なので40点超え、ということになりますが、そちらはご容赦頂ければ幸いです。

Replyに関しては、下記がポイントだと思っています。

1.ラウンドの固有のまとめを、Whipと異なる形で出す
Whip編でも書きましたが、「汎用的なフレームを活用しながら、ラウンドに固有な纏め方を探す」ことが重要になるのはReply Speakerも同様です。ただ一つポイントとなるのは、Whipとは異なる纏めの方法が推奨されていることです。
この理由は定かではないのですが、「同じ纏め方だと飽きちゃうから(Newがないから)」という点に尽きる気がします。Whip、Replyでチームとしての優位性を示すチャンスが2回ある中で、同じフレームで戦うことは一本足打法にならざるを得ないのでお勧めはしないです。

2. "Biased Adjudication"として勝ちの理由を示す
特にオーストラリアでは、Whipとは異なりReplyは"Biased Adjudication"になる必要があると教えています。これを解釈すると、どのようなことが考えられるでしょうか。ジャッジのReason for Decisionに近い言葉を使うということになるかもしれません。
例えば、Failureの指摘が考えられます。これは改めてDrop等が発生しているというようなClash basedの議論もあるかもしれませんし、相手の議論の強度に関してRelevancy、Logic、Uniquenessの薄さ等を指摘することもあるかと思います。特にかなり競っている場合はこれがVoting Issueになり得る可能性もあります。
あとはNewになるのかは見せ方次第な部分もありますが、優位性の軸(インパクトの大きさなど)を示すことも可能かもしれません。

3. 伸ばせる部分は伸ばし続けること
NA StyleだとそもそもNew examplesがReplyでOKであることからそれを出すことでぐっと具体性を引き寄せることもあるかもしれません。ただ、NAではなくReplyであったとしても、ギリギリ、イラストでは伸ばしきれる余地があることもあります。すでに出た話を最大限伸ばしにかかることは非常に重要です。
私自身、あるクロースな試合の決勝で、リーダーが話した話を改めてごり押して勝利をもぎとったことがあります。意外と主要なポイントを伸ばすことがキーになることもあるという好例かもしれません。
どの部分を伸ばすかというのは、あくまで強い部分、すなわちExclusiveであったり、Intuitiveであるような部分が優先になるのではないでしょうか。

4. 反論ができないにしても、前のスピーチを踏まえること
これは意外と教わらないポイントですが、例えばGov Replyの場合Opp Replyを踏まえることも重要です。例えば、Emotionalに訴えかけられた際は、Emotionalに返しつつもLogicalな部分で優位性を保つということもあり得ます。また、例えばOpp ReplyでFailureを指摘されていた場合は、そのFailureが存在しないことor相手にも同じ軸でFailureがある、というような暗黙の反論もあり得るかと思います。反論以外でも対応方法はあるという示唆ですね。

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2018年5月6日日曜日

後輩と組む時に ~akが考えていたこと、やってもらえて嬉しかったこと~

皆さんGWはいかがお過ごしでしょうか。
エリザベス杯に残念ながら間に合わなかったのですが、akが後輩と組む時に気を付けていたことを知りたい、というリクエストを頂戴したので書いてみます。
akも色々な先輩と組ませて頂いた中で、やってもらって嬉しかったこと+やろうとしていたことを取りとめもなく書かせてください。

(ここでの前提は、先輩ということで一定程度ディベートの能力・経験は比較的高い、ということにしています。毎回そうとは限りませんが…笑)

1.あくまでパートナーとしてフェアな関係性を目指すために、Welcomingな雰囲気をつくる
これが一番大事だと思います。結局のところ、先輩ー後輩間にはどうしても何もしない場合だと遠慮というか、力関係が発生してしまうことは避けられないと思います。("power imbalance"ってやつですね)

普通のパートナーでも、「あなたなことを大切に思っている」「あなたの意見・スピーチにも価値がある」というようなコミュニケーションはチームビルディング上肝要ですが、いい先輩方はそれを特に意識してくださっていたように思えます。

例えばですが下記のようなBehaviorに落ちるのではないでしょうか。

・プレパの間で出たアイデアをちゃんと聞いてくれて、それがスピーチに組み入れられる
(例えば、akが思いついた話がちゃんとArgumentになっていくことがある)
・ラウンド外でしっかりと褒められる/リスペクトが払われる
(例えば、ある伝説的な先輩は「akくんはとても組みやすいね」とふとおっしゃってくださったことがあり感激しました)
・フィードバックが双方になされる
(だいたい先輩から後輩への一方通行になりがちですが、先輩も後輩からの意見を求める。例えば、akは「もしよければ僕もフィードバック欲しいんだけど・・・」と話して、困惑された場合「あ、じゃあ良かったところ褒めて(笑)」と言って話しやすそうなところを言ってもらい場を温めてから、「しいて言うとしたらスピーチのどの辺が気になった?」と聞くようにしています。その時出なかった場合は「あ、まあ今後また気になったら教えて!」といって閉じて2回目に聞くと教えてくれたりします)

こうすることによって、勝ち負けに関係なしにラウンドが楽しくなりますし、さらには後輩もよりリラックスして発言してくれるより好循環に入りやすくなるため、チームとしてのパフォーマンスもあがります。

正直、後輩の視点ってめちゃめちゃ参考になります。私もああその話全然思いつかないなぁとか、結構ありますね。(後輩のおかげで勝てたラウンドとかも結構あります)なのでこの1.の話を言い換えると、後輩のいい話をどんどん出してもらえるようにする環境づくり、というところだけは先輩の役割かなと思います。あくまで走りたいなら道路ちゃんと整備するだとか、花を咲かせようとするなら土くらいちゃんと耕すか、くらいの心づもりかもしれません。

2.チームとしての"成長エンジン"の設計;その際、普段よりも人一倍パートナーのディベート力を分析し、勝ちに繋げる

では、後輩と組んで勝ちに繋げるためにはどうすれば良いのでしょうか。
結局のところ、チーム全体としての「総力」が勝敗には基本的に直結します。
となると、チームとしての総力をあげにかかることが重要になるわけです。

そのためには、"成長エンジン"の記事でも書きましたが、To-Be、As-Is、Approachをしっかり考えることが重要になります。この場合の3つの問いは、下記の3つになります。

1.どういうチームになりたいのか?
2.今、パートナーと自分はどういう状態か?(今どういうチームか?)
3.なりたいチームになるためには何が必要か?

1.はブレイクのようなディベートの実績的なこともあるかもしれませんし、イラストがうまくなる!のようなものもあるかと思いますが、
特にキーとなるのは2.となります。

自分のことをよく知ることはもちろんですが、パートナーのディベート力を人一倍分析することが重要となります。

どういうことかというと、例えばパートナーがPracticalが強いと。で、あなたもPracticalが強い。そうだとすると同じことを繰り返してしまいがちでチームとしての最大出力があがらないとかありますね。となると、例えば自分はPrincipleをうまくなる、とかしていくことも場合によってはあるわけです。

例えばakが一回あったのは、後輩をみているとすごくマクロな話が強いと。いわゆるフレーミングはいいのだが、具体論があまりないと感じていて、ジャッジからもそういうフィードバックを多くもらっていました。そこでやったのは、当然具体的にするためのコツみたいなことはその後輩に教えつつ(例えば、こちらで書いたような内容です)、特に具体的な話は意識してプレパでakが詰めるようにしました。一部それを言ってもらったり、どうしてもその後輩がカバーできなかった部分のイラストはあえてakがイントロで言う等するようにしたりしました。

そんな風に今の段階で目立つ強みがない、という場合は彼/彼女ができることを起点に「役割」をお願いする、というところかもしれません。特に、自分の強み/弱みと掛け合わせて考えることがポイントです。例えば、akは具体的な話があるほうが議論がしやすいタイプなのです。(チープな言い方ですが、「叩き台」があればそこからブラッシュアップするほうが得意)なので、一人の後輩にお願いしたのは相手が何を言うか考えてくれない?ということもありました。後輩が考えてくれる相手の話は確かによくて、じゃあそれをどうやって上回ろうか、という議論に時間をより効率的に割くことができるようになったこともありました。

また中長期的な教育の意味も込めて、今までやった練習方法などはかなり積極的に教えるといいとも思います。参考になった練習法やディベート資料はどんどんシェアしましょう。個人的に一度あったのは、昔ICU出身の先輩の方と組ませて頂いたときに、リサーチのメソッドを教えてもらったことがあります。具体的にはPost Itに具体的なArgumentと具体例が貼ってあると。スピーチのときにはそれをぱっと貼って話せるようにしている、と聞いてすごく合理的だなと思いました。(なお、この練習法を最初に始めた人は、世界大会で日本人記録を持っている方です)akも一時期やってかなり役立ちましたが、今はより自分にフィットした形にカスタマイズしディベートノートとマターファイルにしました。また、普段読んでいるメディアなども色々教えてもらいました。

3. 定期的にコミュニケーションをとり、より良いチーム作りを目指す

akはかなりこれをどのような人ともやるのですが、定期的にラウンドやディベートに関してコミュニケーションをとることは意識しています。具体的には、下記をよくコミュニケーションしていました。

・今悩んでいること
・より先輩としてサポートできそうなこと
・より先輩として改善できること

例えば、よくあるパターンというのは、後輩に「独裁的に」なりすぎていないかということです。あと、例えばスピーチづくりなどもPrime Ministerだとついついかなり指示してしまうこともあります。これだと組んでいる側からすると「先輩の言いなり」になっている感がぬぐえなくなってしまう場合もあります(一方で、それを欲しがる場合もありますが…)

なのでそういったこともざっくばらんに聞いていったりできるとより良いですね。

あとくだらないかもしれませんが、akは一緒に食事をとることも結構意識しています。美味しい食事を一緒に食べるとチーム力ってあがるだとか、場合によっては手作りの食事を食べたりすると結束力があがるだとかという研究もあるようです。(最近だと色々な会社が取り入れたりしているだとか。もちろん人それぞれだとは思うので、強制とかはしませんが。)たまたまですが、昔ある大会で、関東圏に住んでいない後輩と組んだ時は家に泊まってもらったのですが、ついでに大したことはないですが手料理もふるまわせて頂きました。後で聞いたところ「手作りの食事をふるまってくださったおかげでだいぶ距離が縮まりました、同じ釜の飯を食った、じゃないですけど」と言ってくれたので、効果があったのかもしれません。
(ちなみにもちろんですが食事中にフィードバックなどはしません。楽しく食べることに集中したいので雑談です 笑)

4. マインドとしては「勝ったら後輩のおかげ、負けたら自分のせい」として臨む

これは特定のアクションに落ちないのかもしれませんが、このスタンスでいる人って格好いいなと思います。
やや蛇足ですが、社会人になっていい上司もこの要件を満たしていると思います。ミスがあっても、上司が矢面にたち「そうですね、ごめんなさい」と言い、「しっかりとリードできずにすみません」と謝られたこともありその時はこの人すごいな…と思いました。

ディベートで言うと、昔尊敬する他大学の先輩と組ませて頂いた時があったのですが、その人の実績を鑑みると十分決勝トーナメントで勝ち進めなかったことがありました。結果が出たときは当然のごとく落ち込みましたし、ああ僕のせいだなぁと思っていたところ、先輩が「あの負けは僕のせいだ」とおっしゃった際は改めてこの先輩は恰好いいなと思った次第です。

あと、ジャッジのイケてないフィードバックのパターンとして、言い方が悪く結果的に「足を引っ張ってしまった」人をかなり責めることがあります。「リーダーでは全然立ってなくて~」「Memberが反論で機能していなくて」のようなことは、フィードバックとしてはあんまりイケてないので他の言い方が当然必要ですが、そのような言葉を聞いて落ち込んでしまうことがあります。そういう時に「あのいい方はちょっと無いよね」「まあ確かにXXの観点はそうかもしれないけど、Yの観点とかよかったし」等のフォローができるといいなぁと思いますね。

ここで言えるのは、ついつい人は他責にしがちです。自責って結構辛いですからね。やれモーションのせいだと言ってACを批判し、やれジャッジのせいだと言ってジャッジにイラジャとラベルを貼りがちです。akも何度もおそらくやっていたので反省しかないのですが、その中でチームメイトである後輩のせいにしたい、というのは無意識的に分かりやすいところではある逃げ道だとは思います。ただ、先輩の責務としてそれを言い訳に絶対にさせない気概で組む、というのが一つ個人的には刺さる先輩像だと感じています。

これは勝敗に少し直結しないかもしれませんが、人として先輩として意識したいポイントかなと思っています。

以上となります。ご参考になれば幸いです。

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2018年4月28日土曜日

【即興型ディベート初心者向けポスト】 プレゼンテーションの型・"AREA"

スピーチって結局どうすればいいの?というなった際に、ディベートを始めたばかりの皆さんが最初に触れるのがAREAというプレゼンの型だと思います。

Assertion、Reasoning、Example、Assertion の頭文字で、主張(結論)、理由、例、主張という、結論のサンドウィッチ形式で話すのが良いとされています。
(ちなみに余談ですが、人によってはOREOと呼ぶこともあるようです。この場合はOはOpinionということです。)

念のため図示化するとこうなります。

Assertion
Reasoning
Example
Assertion

例えば、タバコ禁止(THW ban tobacco.)という議題であれば、下記のようなパターンがあり得ます。

Assertion タバコは健康に悪いので禁止すべき
Reasoning タバコには有害物質が含まれているし、中毒性もあるため継続的に健康リスクが高まる
Example 肺がん、脳卒中や心筋梗塞を引き起こすこともある
Assertion なので健康に悪いタバコは禁止すべき

ここまではよく教わります。ですが、意外とコツとセットでは教わらないこともありまるので、ak_debateが教える際に伝えている点を3つシェア致します。

1.R(理由付け)は直観的 and/or複数で
第1に、Rである理由に関してですが、理由はできれば直観的なものや、複数(できれば3つがよく説得的とされます)挙げられると良いです。
ややハイレベルなことを申し上げますと、理由が出ない場合はTBH思考法を試してみるといいでしょう。初心者の方には、中でもBottom-Upで考えること(具体的にどういう人が影響されるのか?等)をオススメしています。
逆に理由が出すぎる場合は、似たような話をグルーピングするといいです。
ここは余談ですが、プレゼンのとき3は覚えやすい数字だとされています。2つだと少ないな、4つ以上だと多すぎて覚えられないな、となるようです。

2.E(例)は解像度をあげて感情に訴えかけろ
第2に、例はほかの人と共通の理解が得られるほどに解像度を上げる(想像できるほど具体的にする)ところまで深掘りできると良いです。どのような人が、どのように影響されるのかをストーリー的に話せるとよく、特に不満、不安のような負の感情に訴えかけられると良いです。
ak_debateがよくやるのは、具体的な映像を頭に思い浮かべることです。漫画、小説、映画のようなフィクションに頼ることもありますし、家族や友人などの顔を思い浮かべることもあります。またニュースで見たことのあるドキュメンタリーで特集されている人のことを思い出すこともあります。

3.あらゆるレベルでAREAを徹底しろ
第3に、AREAは、スピーチの中のあらゆるレベルで使うと良いということです。サイド全体として言いたい大きなAREAもあれば、具体例としてのアーギュメントとしての小さなAREAもありえます。また、反論もAREAで話すとよいです。相手はこういったがそれは成り立たない、なぜなら・・・例えば・・・のようになります。
要は大きなAREA、小さなAREAを積み重ねる、というイメージでしょうか。いつどこでもAREAを徹底するということですね。

(多くの教育現場で教えられている、いわゆるSQ AP IMPACT(Status Quo, After Plan, Impactの略で、現状(政策導入前)の現象-政策導入後の現象-その重要性)などのフレームの中でもそれぞれでAREAで話すことをおすすめしています)

終わりに
いかがでしたでしょうか。ぜひデビュー戦に向けてAREAを自分のものにして下さい。なお、この話し方はディベートに留まらず、プレゼン全般、就活、社会人生活でも役立つシーンがあるので是非!

補足 AREAのスピーチの型
高校や大学の教育現場では、AREAをもとにしたスピーチのワークシートを準備していることもあるようです。例えば、立論では下記のようなパターンを準備しているようです。型にはめることはよくないですが、守破離でいう守のときには使いやすいのでぜひ。その後、AREAを崩したり、よりいい言葉に言い換えたりするような柔軟性が持てるとよいですね。

[英語]
<Argument>
(A) Our first argument is _______.
(R) We have __ reasons.  / This is because ____
(E) For example, .... / Let me give you an example.
(A) Therefore, ....

[日本語]
<立論>
(A) 第一に・・・
(R) 理由は_つあります・・・/なぜなら・・・
(E) 例えば・・・/具体例を挙げると・・・
(A) したがって・・・

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2018年4月15日日曜日

【80点超えのスピーチシリーズ各論④】Whip編(Asian Style)

総論としての「80点超えのスピーチをするには」を受けた、各論シリーズです。
今までのPrime Minister編Leader of the Opposition編Deputy Speakers編の続編となります。

最初に注意しておいたほうがいいのは、Whipはラウンドの流れに影響を受けやすく、また、Deputy Speakersの原則は引き継ぎぐことです。すなわち、「相手の一番強い話をつぶす」ことや、足りない点を伸ばすことも当然Whipでも継続されます。それ以外の点で幾つかポイントを書かせてください。(本当はこれ以外にも色々書きたいのですが、スピーカースコアに直結しそうなポイントであえて絞りました)

1. 汎用的なフレームを活用しながら、ラウンドに固有な纏め方を探す
よく「まとめ方に正解はない」と言います。一部の先輩にフィードバックを求めても「ケースバイケース」だと言われることもあるのではないでしょうか。確かにそうなのですが、「汎用的なフレーム」を参考にできる部分はあります。
例えば、下記のようなフレームがあり得ます。

<ディベートフレーム系>
・Principle, Practical
・説明責任(Necessity, Solvency, Justification) ※Solvencyに相手のHarmも含む

<4W系>
・(When)Time-frame-base (例:Short Term, Long Term)
・(Who)Actor-base (例:Impacts on Female, Impacts on Male)
・(Where)Place-base/Micro-Macro base (例:Impacts on Individual, Impacts on Family, Impacts on Society)
・(What) Keyword-base (例:Why ban?  Why now?)

このようなフレームを意識しながら、今までの双方の議論を纏めにかかります。
例えばですが、Australs 2013 GFのOW(GF Best Speaker)は大きくはPrinciple, Practicalのフレームワークに近いでしょう。(1. Whether this is a "just" law?  2. Impacts of the law 3. Social Perception )
また、Australs 2012 GFのGWもPrinciple, PracticalのClashながら、ラウンドの固有性を出しているサインポストになっています。(1. Is allowing these crimes worthy of criminal punishment? 2. What does the world look like, and what changes do we get under our policy?)。

もちろんフレームは結局のところ「なぜ勝っているか?」の合目的性とフィットしていないと意味がないですが、一つ参考になり得るかと思います。

なお、このフレームとラウンドの固有性を行ったり来たりするところが難しく、akは例えばポストイットを使用しながらラウンドを聞いています。そして大幅にスピーチ中に反論とかを動かし、クラッシュを作り直すこともあります。

2. 「勝たないといけない」部分に全力を注ぐ
「ここを取ったら勝てる」というようなポイントがあります。それは、ラウンドによって様々です。分かりやすく「分岐点」と呼ばれるようにClashの応報があるのであればいいのですが、必ずしもあるとは限りません。「自分がイイタイコトを言う際に、譲れないピース」というのを双方の論理構造からひも解く必要があります。

例えば、A→B→Cというような論理展開をしているとします。その場合、Aが証明されないとB, Cにいかない場合は、Aを全力で守りに行かないといけない場合があります。
この構図だと思っているのは、MDO 2011 Semiとなります。Govの論理構造というのは、「助かる人はZero-sumである(全員を助けることはできない)」→「そのような場合はLegalなchoiceを取った人を優先すべきだ」となっています。GWはその前者の前提を「This is not fair」と言いながらスピーチをしています。「PMからしっかりその前提を言っているにもかかわらず、Oppは反論してこなかった」と冒頭でいいつつ、相手のPOIへの反論で「もしZero-sumじゃない前提でディベートしないといけないのであれば、じゃあGovは負けるよね」という意図をジョークを交えて印象操作し、Govへの勝利を手繰り寄せています。

他にも、例えばTHW punish parents when their children commit crimes.のようなモーションの際に、論点となり得るのは親のcharacterizationです。Govは「親は子供の犯罪に大きく影響し得るため親もpunishすべき」、Oppは「親は子供の犯罪と関係ないので親をpunishするのはかわいそう」という風にラウンドが進んでいたとしましょう。その場合、論点となるのは「親はどのくらい子供の犯罪に寄与しているのか?」という点になるかと思います。Govであれば、多くの時間を子供と過ごすためモラル的な教育も含めて親が一番影響力があるというような話を展開するでしょうし、Oppであれば親以外の影響(social class、学校の先生等)と言ってくるかもしれません。その場合このポイントを全力でどちらかに持ってくるために反論したり伸ばしたりすることがWhipとしてあり得ます。
(あくまとして一例であり、他のstrategyも当然あり得ます)

3. Dropには敏感にあれ
AsianのWhipが、BPのWhipと違う点の一つはDropに対する厳しさだと思っています。(Dropとは、反論を「落とす」ことであり、議論を無視することだとご理解ください)BPは「【SIDO/QDO/HKDO分析】アジアのBP大会で活躍するための3つのポイント」で取り上げたように、Sell your ideaが重要になりますし、briefingでも「全部に反論する必要はない」と明示されることもあります。一方でAsianももちろん全部に反論することは不要だと思いますが、一方でDropに対して厳しい今年も事実です。

akもUADCでWhipをしていた時は、かなり細かめにWhipしました。一つの話に対して複数のレベルで反論しましたし、重要な話(格好いい話、聞こえのいい話、インパクトの大きい話等)は仮に1行だけでロジックが無かったとしても念のため反論しました。「反論していない」という理由だけで負けにするジャッジ陣対策でもありましたが。

また、先方のDropに対してもかなり厳しめにいきました。よくあるのが、PMやLOで話された内容が実はあまり反論されていないことです。これがDeputyでも特に伸ばされないと強いArgumentとなってくれないことがあります。そこでWhipでも改めて一つのClashにするくらいの勢いで「押しなおす」、そしてその際に相手のDropを強調していました。事実、ACに見られた予選ラウンドでも「Deputy以降の話等は優劣つけられなかったが、Whipが1つめに押した話は確かにLeaderから出ておりあまり反論されておらず、それで勝ちにした」と言われました。
(なお、この「押しなおす」というテクニックは意外と重要です。「浮いた」Deputy Speeches等を「埋め込む」ことも大事ですしね。)

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2018年4月9日月曜日

【80点超えのスピーチシリーズ各論③】Deputy Speakers編

総論としての「80点超えのスピーチをするには」を受けた、各論シリーズです。
前回のPrime Minister編Leader of the Opposition編に続いたDeputy Speakers編です。

Deputyって難しいポジションだと思います。スタイルもフィロソフィーも人によって大きく異なりますし、ラウンドの流れによっても変わります。とはいえ、それでもいくつかポイントがあると思いますのでak_debateが感じるところを書いてみたいと思います。
(なお、前提としてDPMはLOの話にかなり近い部分があると思います。そのような1st Contact特有の内容はLOの記事に譲り、それ以外のポイントを書きたいと思います。)

1. 相手の最も強い話を立論・反論の両輪で全力で対応する
相手の最も強い話を、"Constructive Speech"として対応することができるのは2nd Speakerまでです。また海外や一部のジャッジではWhipから反論されるのでは遅すぎると判断する人たちもいます。そういう意味で、立論・反論の両方を使い切ることが重要になります。
UADC 2013 FinalのDPMは反論を重視しているパターンだと思います。Inheritance Taxの不十分性(構造的な不平等の大きさ等を指摘)を含めてかなり細かく反論しています。
また、UADC 2012 QFのDPMは、LOのFearの話をFlipする形で犯罪がいつ起きるかわからないような状況のほうがむしろfearfulであることを指摘しています。

また、よく先輩にアドバイスされる点として所謂「counterproductive」Argumentを立てろということかと思います。相手が守りたいことが実はむしろ悪くなるorこちらの方で達成できる、という話です。ICUT 2013 GFのDLOでは、conflictがむしろ減るという点を立論として出しています。なお、これらの話は所謂Secondary Mechanismの強化とセットで行わないと、アイデアベースになってしまうかもしれないのでご注意ください。

2. Leaderのスピーチを「足りない点」「多角的な視点」をキーワードに伸ばす
まず、「足りない点」に関して。まず大前提として、Leaderのスピーチで足りない点というのは必ず埋めることが必要になります。説得やArgument等のフレームワークはいくつかありますが、それらに照らし合わせながらリーダーのスピーチを聞いていくというのはまず一手でしょう。分かりやすい話では、LeaderがStatus Quoの話はしたがAfter Planの話をしなかった、抽象的な話をしたが具体性に欠けた、等そういった場合はそこから入る必要があります。また、これより難易度の高い点としては、「特定の前提」が抜けている場合です。そもそもどういう世界観を目指しているのか、そもそもどういったキャラクターを前提としているのか、というような話は見えづらいですが説得力に大きく影響するため、それらもidentifyできることがnext stepになるかと思います。

次に「多角的な視点」に関して。UniquenessやTime Frame等でMECEに考えることも重要になるでしょう。(思考力の習得方法はこちらに書いています。)(なお、特に日本人ディベーターはここが弱く、Asian Styleでなかなか勝ちきれなかったりClosingでExtensionを出し切れずに負けてしまうことをよく見てきたのでナショナル・アジェンダかもしれないと思っています)例えば、JPDU Pre-Australs 2013 GFのDPMではreligionのuniquenessとしてafterlifeの話が伸ばされています。また、ずいぶんと古くて恐縮ですがAustrals 2004 GFのDPMはDomestic/International Implicationの話をきれいに伸ばしていると思います。なお、個人的にはオーストラリア勢は歴史的に総じて2nd Speakerが上手いと思っており、例えば2009のGF等でもそれを感じています。

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2018年4月1日日曜日

フィードバックのコツ② 対初心者向け(新歓期)のフィードバック

前回のフィードバックのコツ① フィードバックの型 ~4つの点を伝えることを目指す~の続きです。

今回は4月ということもあり、初心者向けのフィードバックの話をしたいと思います。
(それにしても、新人だったころって何年前ですかね…ak_debateにも今より可愛い時期があったというと、信じてくれないんですが…)

初心者のときってどういうことを言われたら嬉しかったですかね?不安な中、チャレンジングなゲームをやった際の落ち込みって色々ありますよね。その時を思い出してフィードバックする、ジャッジした目の前の人のことを思ってフィードバックするという当たり前の原則を起点にすると色々な工夫ができるかと思います。今回は、ak_debateが気を付けてきた各論を話そうと思います。(これ以外も当然あると思います)

1.4つの型で言うところの、「良かったこと」を特に多めに言うこと
前回の記事で、フィードバックの"型"として、①良かったこと、②改善できること、③今後の実行方法/練習方法、④今後の期待の4点を徹底することをオススメしたかと思います。
特にこの①の「良かったこと」を多めにしましょう。昔UTDSでは8割くらいのイメージ感というところでやっていました。
「とはいえ、そんなに褒めるところがありますか?」という懸念があるかもしれません。確かに1分のスピーチとかだと最初はなかなか難しいかもしれません。
とはいえ、必ず何かしら褒めることがあるはずなのでそれを探索してください。例えば、ak_debateはassertionでもいい話が一言でもあったら(事実、自分が思いつかない話とかも良く出たので)伝えました。また、フィードバックの際に「どういうことを言おうと考えたりしていたのかも教えてもらってもいいですか?」「他にどういうことが言えそうですかね?」のように「言おうとしたが言えなかったこと」や「今思いついたこと」も聞いたりすることもしていました。(こうやって書きだすと少し恥ずかしいですね)

2.「改善できること」はポイントを絞って、シンプルにすること
特に上級生になると、うまくなっているのでたくさん言いたくなると思います。うわあ、Logicがないな、Refutationで反論と言いながら話をぶつけてるだけだな、Principleっぽい話しているけどふわふわしているな、等、等、等。もちろん細かいフィードバックは当然ありがたいのですがあまりたくさん言うとパンクしてしまいます。キャッチボールは取りやすい球を投げることが鉄則ですが、最初の球が何度も、文字通りハイボールでくると十分に吸収できないことがよくあります。なので、特に一番効果がありそうなことに絞るといいでしょう。(例えば、UTDSでは昔はSQ, AP, Impactというような型をAREAでしっかり言えるようにすること、を最優先にしていました。)

小技ですが、この際「ディベート用語」の多用には気を付けたほうがいいです。Uniqueness、Relevancy、Exclusivity、Framing等の言葉は我々にとっては当たり前かもしれませんが、ディベート初心者からすると新しいことばかりです。特に最初は各スピーカーの名前やルールから覚えたり、POIであたふたしたりしているはずなので、パンクしてしまいます。もちろん、この際例えばUTDSではレジュメと併用していたのでそこで良く出る言葉は書く、のような工夫はしましたが、それでも限界はあるかと思います。

3.普段にもまして具体的に話すことを意識すること
コミュニケーションは徐々に「阿吽の呼吸」になっていくこともあったりしますよね。それはある種お互い「あああの話ね」というイメージ感がより擦りあっていくからできるものです。例えば「具体性をつけよう」と言われたら「ああ、アクターが可哀そうである状態を描写しないと」、「具体的なケーススタディをロジックの後に出そう」のような解釈が一種できる、ハイコンテキストな会話になるのですが、初心者はその前提を共有していないので、ぽかんとなってしまいます。ただでさえディベートはチャレンジングな部分が多々あるため、しっかりと具体的にリードしてあげましょう。

なので、普段にもましてフィードバックでは「例えば」というような話をつけてあげましょう。具体的なアーギュメントを説明する、事例を説明することもいいと思います。反論も「こういうのが良くなかった」という指摘ではなく「こういう風に言うと良い」という例示とセットであることが大事です。

4.今後の期待を話す際は、特に「最初はできないもの」であることを強調すること
最後になりますが、これが一番大事かもしれません。ディベートって難しいです。特に難しい社会問題に関して20分で話すとか、社会人になっても人に驚かれます。特にそれが英語の場合、英語を第二言語としている人の苦労は計り知れません。
そして「うまくいかなかった」ことというのは本人もよーーーくわかります。スピーチが1分しかできなかったらそりゃ落ち込みます。他の人と比較できたらなおさらです。それが負け、というものとセットときたらさらに辛いです。
そこで重要なのは「今後できるようになる」というイメージ感をしっかりと伝えることです。チープなことですが、「最初は1分しか話せなかった人もたくさんいるけど、そのうち7分じゃ足りなくなるよ!」というような話であったり、いわゆる海外経験がない人に対しては「海外経験がある人も倒す例ってどんどん出てくるよ」というような話は本当ですし、とても助かります。

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2018年3月30日金曜日

フィードバックのコツ① フィードバックの型 ~4つの点を伝えることを目指す~

ラウンド後のフィードバックってすごく大事ですよね。
ディベーターからすると、ラウンドを客観的にみてくれていた人からのコメントを通じて次の試合は勝ったり、自身が成長するための貴重なインプットです。

ちなみに、学会の方でも、ジャッジが実質的なディベートの教育者というところで、その重要性はとても認識されています。(なお先日の学会の一つに、調査型ディベートの方のフィードバックを分析していた発表もありました)

フィードバックは奥が深く、ak_debateも色々模索中ですが、今回は今まで個人的に気を付けてきた点を共有します。今回は第1回ということで、"フィードバックの型"をご紹介します。

【結論】
フィードバックの"型"として、①良かったこと、②改善できること、③今後の実行方法/練習方法、④今後の期待の4点を徹底する

このような構成は、部内でのフィードバックの"型"ともしていました。先輩方がこの順番で話してくださっていて、いいなと思ったのでそれを型化しただけなので私はたいしたことはしていないのですが、これはすごく意味があると思っています。
もちろん全部言えるのが理想ですが、一部だけでも言うようにして、徐々に全部言えるようになっていこうと勝手に目標にしていました。

【詳細】
① "良かったこと"
特に、「良かったところ」は自分では見えづらいです(ディベーターの方々はとても自責の念が強い方も多いことも影響しているのかもしれません)。ですが褒められると嬉しいものです。世界最強ともいわれるディベート・コミュニティが一同に集うAustralsに行ったとき、ジャッジの方がかなり褒めてくださったこともとても印象的でした。(ディベーターが陥りがちな罠として"できないことへの傾注"があります。参考:どうすれば、上手くなれるのか? -"成長エンジンの設計方法"-

特にこれは高校生ディベーターや1年生等、ディベートを始めたときは手厚くやる必要があると思っています。UTDSでは、今はどうか分かりませんが、当時は8割くらい褒めて、2割くらい改善点、という分配だね、と先輩からアドバイスを受けました。

なお、褒める際は、できるだけ具体的に褒めることも大事だと思っています。「1st Argumentのこの話はxxx」のように、具体的に話しましょう。

これを行うためにak_debateは各スピーチのフローの際にそもそもArgumentやRefutationを「いいね!」「good!」「〇」や、「ん?」「△」等とつけているのですが、その結果を受けてささっと良かったところを書いたりしています。(uniquenessが良かった、イントロがパワフルだった、等)

② "改善できること"
一方で、次は勝ちたい、よりうまくなりたい、というようなニーズもしっかりとケアすることが重要だと思います。したがって、「どうすれば良くなるのか」という視点でもフィードバックすることが重要です。

ここでのポイントは、幾つかあります。まず、毎回できるわけではないですが、特に負けたチームに対しては、「どうやったら勝てるのか?」というところまで話せるようにできればしようと思います。競技って勝敗がつくので当然気になるのは「どうやったら勝てたのか?」だと思うので。例えばこういう風にUniquenessをつけて、だとか、この主要な点にこうやって反論して、だとか考えます。(もちろん難易度は高いのでMUSTではないとは思っています。ですが、ak_debateからすると、具体的な改善方法がなくても、気になったところだけ教えてくれるだけでも貴重なインプットですのでドシドシほしいです)

また、あくまで相手の感情にケアした形で言うことも重要だと思います。一方的に「全然ダメで」のような言い方は99%の場合避けたほうがいいです。当たり前ですが人格とは切り離し、I messageで話すことも有効でしょう。「今回のラウンドではXXと言ってくれたのですが、それは残念ながらYYだと私は思ってしまって、ここまでやってくれればさらに評価をあげられたのだけれども…」のような言い回しをできるだけ意識しています。

③今後の実行方法/練習方法
これも難しいのですが、できればラウンドの話だけにとどまらず、他のラウンドでも当てはまるような話まで、だとかpost-roundの話まで踏み込みたいなと思っています。そのためには、一段抽象化した理論化が必要になります。そこまで含めたフィードバックがあると、経験上ディベーターの成長スピードが速くなる傾向にあると思っています。

例えば、以前どこかで残念ながらparallel debateになってしまったラウンドがありました。(akもやってしまうので難しいですよね。ちなみにparallel debateというのは、Gov/Oppでケースが完全に平行線をたどることです。例えばTHW make aid conditional to democracyのようなモーションの際Govが"aidを受け取る!" Oppが"aidを受け取らない”とただただ平行線をたどったりします)この際、私は一段抽象化し、「こういう時は3つの話をできるようになるとよくて、①どちらのcaseがよりlikelyか、②相手のcaseで何が起きるか、③自分のcaseで何が起きるか、まで話すと良いよ」というアドバイスしたところ、ディベーターが深く頷いてくれたことは今でも覚えています。

また、時間がある場合は具体的に今後のために参考となる考え方(例えばTBH思考法、具体的にお勧めの)やお勧めの練習方法(例えば、プレパ・シートの作り方等)まで踏み込むこともあります。

繰り返しになりますがこれは難易度が最も高いと思っています。なので、毎回akもできるわけではありません。その場で理論化することは難しいですし、日々経験則的に理論化したものをシェアできないと大変だったりします。ですが、できればそこまで踏み込めるようにと日々目指しているところです。

④今後の期待
やはり最後は期待していることも併せて伝えると思います。もちろん、そのトーンなどは人それぞれになりますが、本当に感動した場合は相当に熱量をもって私も伝えます。色々まだ苦労している段階であっても、「ここがすごくポテンシャルがあるのでここを強みとしたディベーターになってほしい」ということとかもあります。

これをわざわざ別建てしているのは、「サンドウィッチ方式」にしたいというのもあります。要は改善点ってセンシティブです。辛いです。できなかったことを自覚している場合はそれがもう一回言われるわけですし。なので最後はまた良かったところでしめることで、前向きになってほしいなと思っています。

ちなみに、ちょっと話はずれますが企業では「3K」が大事だとされています。仕事の種類のほうではなく、「期待する(Kitai)、機会を与える(Kikai)、鍛える(Kitaeru)」の頭文字をとったものらしく、そのように部下を育成することが重要とのことです。最初の期待をするところで人が伸びる、というのは自分もありがたいことにそうだったなと思ったので、それを他の人もやる責任があるし、そのほうが今できなくても、長期的に伸びる、と思っているからかもしれません。

いかがでしたでしょうか。もちろんこの4点のフィードバックは理想像なので毎回することはできません。ですが、その型に当てはめて自分のフィードバックの今を"見える化"して、より良いフィードバックを目指していく一助になれば幸いです。

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2018年3月27日火曜日

【80点超えのスピーチシリーズ各論②】Leader of the Opposition編

総論としての「80点超えのスピーチをするには」を受けた、各論シリーズです。
前回のPrime Minister編に引き続き、今度はLeader of the Opposition編です。

個人的に、Leader of the Oppositionは比較的難しいポジションだと思います。やらないといけないことがたくさんあるので。(余談ですが、日本だとロールごとに担当者を分けることもありますが、海外だと"1st Contact"ということで、LOとDPMは同じ人がやることもあるようです。)

そんな中ですが、Leader of the Oppositionとしてak_debateが行うほうが良いと思うポイントをご紹介します。

①まず前提として、Prime Ministerでも求められる(a)一連の"primary story"を立て切ることや、(b)主要な話への対応はLOとしても必要
これだけでも十分におなか一杯かと思いますが、(Prime Minister編をお読み下さい)結局リーダーというところで、ここはPrime Ministerと同じように重要になります。

② Governmentとの違いの明示化を通じたOpposition Modelの明示化
結局のところ、まずGovernmentとの違いを明確化することが重要だと思っています。これは各論では例えばProblemに対するアプローチの違いということにも表れます。

昔のエジュケでは、①Problemはない、②ProblemはあるがAlternative Wayによって解決できる、③ProblemはありGovernmentで解決できることは認めるがHarmがある、のどれかのスタンスをとれ、と言われた人もいたようです。これは間違いではないのですが、GovのPracticalな部分(Necessity, Solvency, Benefit>Harm)、Principleの部分(Justification)のどの部分にOpposeしているのか、のほうがより正しいとは思います。つまり、①Necessityがない(問題は無い/他の方法で解決できる)、②問題はSolveできない、③Harm>Benefit、④正当化し得ない、の組み合わせかと。

そしてそのスタンスによっては、Opposition Modelが具体的に説明されることが必要になります。特に海外ではその傾向が強いと思っています(参考:Australs体験記)例えば、BPということでやや雑いですが、WUDC 2010 QFのLOはそこを明示化しています。 THW ban all procedures to alter one's racial appearanceのOppositionで、多くの人のChoiceを促進するために、Researchを支援し、さらには同procedureに対するsubsidyもOKだとしています。その中で、cosmetic surgeryと同じように徐々に値段は安くなっていくため多くの人にとってアクセスすることができることも示唆しています。似たようなケースとして、UADC 2014 R8のLOもorgan shortageに対するアプローチをかなりの時間をかけて説明しており参考になります。

③ その上で、一言目から"Oppositionが勝っている感"の醸成
うまいPrime Ministerの後であればあるほど、空気をひっくり返しに行くことが重要になっています。例えば私はEUDC 2008 GFEUDC 2009 GFにおいて、シェンウーがLOを行う際、あえてゆっくり話しているのはトーンを変えに来ていることも大いにあると思っています。Logicalに来た場合はあえてEmotionalに、Passionateに来た場合はあえてCalmに、と雰囲気を作り変えられると良いと思っています。

内容面で言うと、例えばJapan BP 2013 SFにおけるLOはFragileであるContextを明示した上で、Arm Aidの必要性を言ったうえで、GovernmentのFailureも指摘しています。このように、相手ができていなかったことの指摘や、Opposition Modelの必要性を早めに話すことも一つ有益でしょう。

なお、もしGovernmentがあまりうまく行ってなかった場合は、それを「じゃあ代わりにやってやろうじゃないか」と説明する場合もあります。本来であればこういうディベートであった、というような"This debate is really about..."というイントロで入るパターンはこの例に入ると思います。この場合は勝ちを一気に決めに行く際に有効です。

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2018年3月23日金曜日

【ディベートニュース速報】Kyushu Debate Open(QDO)、世界で初めてSDGsにコミットする国際ディベート大会に

2018年3月22日に、QDOは、世界で初めてSDGsにコミットする国際ディベート大会になることを発表しました。

・SDGsの説明(外務省)
 持続可能な開発目標(SDGs)は,2001年に策定されたミレニアム開発目標(MDGs)の後継として,2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」にて記載された2016年から2030年までの国際目標です。持続可能な世界を実現するための17のゴール・169のターゲットから構成され,地球上の誰一人として取り残さない(leave no one behind)ことを誓っています。SDGsは発展途上国のみならず,先進国自身が取り組むユニバーサル(普遍的)なものであり,日本としても積極的に取り組んでいます

・Kyushu Debate Openの説明

2014年に設立。九州地域の学生を主体に運営される、日本で唯一世界大会フォーマットで行われる即興型英語ディベートの国際大会。昨年は1/3の参加者が海外から参加。外務省・文科省・福岡県・福岡市が後援。

Link:
https://www.facebook.com/QDO.KyushuDebateOpen/posts/562234414152537

2018年2月25日日曜日

【80点超えのスピーチシリーズ各論①】Prime Minister編

以前、「80点超えのスピーチをするには」という記事を書いたところ、実は総アクセス数上位にきている人気記事となりました。ありがとうございます。

色々な人にお話を伺っていると、各ロールでどのようにすればいいのか、という一段各論におちた話のニーズがあることが分かったので、シリーズで書いてみようと思います。

今回はPrime Minister編です。NAにしろ、AsianにしろBPにしろ、最初のスピーカーとなります。プレパ時間がある意味一番少なく即興性も求められるロールではありますが、どのようにすれば80点を超えることができるのでしょうか?

色々な考え方があると思いますし、すべてのラウンドで当てはまるとは限りませんし、正直細かい話はいくつもありますが、あえて3つに絞るとすると、ak_debateは下記の通りだと思っています。例えば「80点スピーチ練」に対するフィードバックを行う際も、この3点に沿ってフィードバックするのも一案かもしれません。
(なお、関連記事として「Definitionの戦略」もご覧ください。)

①「やらないといけない」感を醸成する
多くの場合、いわゆる現状を改善するほうに肯定側は立たされることが多いです。Policy Motionの場合だと、チープな言い方ですがAfter Plan(政策後)がStatus Quo(現状)よりも良いと魅せることが必要になります。色々な見せ方がありますが、現状の酷さを絵にした上で、特定の理想像に向かい、アクションをとるべきであると思わせることになります。

例えば、有名な動画ですがWUDC 2011 GF (THW invade Zimbabwe.)で優勝したPMは0:20からムガベによる悪意のある"systematic oppression"があることを具体例を交え説明しながら、"aim of the government"として、民主主義の回復を掲げています。国際社会が何もしない時期が長すぎたという表現を使いながら、アクションの必要性を訴えかけています。

また、近年ではWUDC 2016 GF(THB that the world's poor would be justified in pursuing complete Marxist revolution.)では、"The global poor, all around the world, and no matter what country in which they live, currently live in a system of dictatorship."と、世界規模での問題として、貧困層がある種"dictatorship"により支配されているとパワフルなイントロでスピーチを開始しています。

また、Australs 2013 GF(That women should be criminally liable for harm to foetuses in utero as a result of their lifestyle choices)では"An unborn child, Mr. Speaker, is not a person.  But it WILL be a person"と、一番守りたいfetusを最初にイントロとして持ってきています。かつここで留意すべきうなのは、単純にfetusというのではなく、"unborn child"ということで、人の想像力を掻き立て、シンパシーを覚えさせ、次の文章である「しかし人になる」という次の文章に送り出しているところの美しさです。

このようなパワフルなイントロを実現するには、結局チームとして「何を一番押したいのか?」と考え抜く抽象化が必要になります。誰のアドボカシーになろうとしているのか、という問いでも良いかもしれません。(さらには、感情的な説得という意味では、即興型ディベートに必要な能力を身に着けるための練習法シリーズ② プレゼンテーション力もご覧ください。)

②「やらないといけない感」を起点とした、一連の"primary story"を立て切る

ぐっと空気を作った後は、そこから一連の有機的なストーリーを組み立てる必要があります。ここでミソとなるのは、Prime Ministerはいわゆる多くのがモーションを見たら思いつくPrimary Mechanismを立てる必要があります。(Primary MechanismがSecondary Mechanismと対比して話されている記事【SIDO/QDO/HKDO分析】アジアのBP大会で活躍するための3つのポイント)要は、誰でも思いつくような話はまずしっかりと話さないといけないという期待感があるというところで、そこは人によっては減点式に見られるくらいには厳しい目にさらされます。

したがって、いわゆる多くの人が活用するフレームワークはここで活用することで一定の網羅感を担保しにいくことで説得力が上がります。いわゆる、"Problem, Solvency, Justification"であったり、"Principle, Practical"であったり、それを一段かみ砕いた"Triple A + S/Q, A/P Impact"となります。もちろん型にそったスピーチをしろと言っているのではありません。フレームワークはあくまで思考の網羅性を担保する上での手段であり絶対ではありませんし、それがないからといって減点されるのもおかしな話ではあります。ただ、網羅されていることで説得力はあがるので、その要素をちりばめることが重要になるでしょう。

また、いわゆるモーションのキーワードは大抵は説明されていることが必要になります。要は、特定のキーワードを無視していないか、です。すべてのキーワードがその有機的なストーリーの中で「ならでは感」を醸成しているかと言ってもいいかもしれませんし、よりテクニカルに言うと、uniquenessがあるかだとかもしれません。

例えば、分かりやすい例では、WUDC 2010 Semis : THB that the United States government should subsidize Twitter to liberalize oppressed societiesでは、Prime Ministerは主要な議論を網羅しています。具体的には、Argumentは、Principleとしてなぜ(民主化を推進する)Rightがあるのか、外部からどのように民主化が実現されるか、内部からどのように民主化が実現されるか、という構造になっています。

上記を実現するためには、多角的な細かい分析力、具体的なケーススタディなどのストックなども必要になるかと思います。また、できればSecondary Mechanismまで踏み込むのような強みまで発揮できると、期待値を超えているため、スピーカースコアも伸びやすいと思います。

③ 相手の主要な話へリーダーから対応する
今まではどちらかというとTop-Down/Bottom-Upでのアプローチであり、Horizontalの考えが薄いともとれます。(参考:即興型ディベートに必要な3つの思考法 ~ak_debate提唱「TBH思考法」~)次に重要になるのは、相手の話への対応です。

これは様々な場面で行うことができます。例えばイントロの場面で相手の守りたい話よりもこちらの話のほうが重要であることを出すのであったり、Signpostで行うことも可能です。ですが、やや外す可能性があったとしても相手が確実に言うであろう話への比較を直截的にArgumentの中で行うことも一手です。(ただ、これは相手が予期しないcounter-proposalを出してきた場合や別のスタンスをとった場合は無効化されてしまうという短所もあります)

また、別の角度では、先ほどご紹介したWUDC 2016 GF(THB that the world's poor would be justified in pursuing complete Marxist revolution.)は、なぜ強いPrime Ministerかというと、Oppositionが話すであろう失敗のリスクや悪化の話に関して、「とはいえそういったpracticalな話とはindependentなprincipleの話である」と明言したフレーミングを行っていることです。このPrincipleの部分を守り切ることで勝ち筋に繋げていると評価ができるでしょう。

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2018年2月13日火曜日

【即興型ディベートの練習方法】音源を活用した1人でもできる練習のデザイン方法/具体例4選

相変わらず寒いですね、ak_debateです。
最近「1人で練習するには?」というご質問をたくさん頂戴するようになりました。

(なお、身に着けたい能力ベースでは、(思考法プレゼンテーション力英語力)をすでにご紹介差し上げていたり、プレパ練お勧めの本マターファイル・ディベートノートなど、色々すでに書かせて頂いているのでそちらもご覧ください。)

今回は、「音源」にフォーカスして書いてみたいと思います。音源を活用すべきというのは海外のディベーターも言っていますが、とはいえどのように使うのかという話に踏み込んでいるのはあんまり無いなと思って書きました。

【1. 練習のデザインにおいて重要な問い】
ak_debateは前提として、音源だけでは当然練習は不十分であり、弊害を生む時もあるとは思っていますが、一方で有益な部分も多々あり、うまくデザインさえすればよいと思っている派です。どういうことかというと、下記の3つの問いにこたえてみてください。

1.今あなたはどういう能力を身に着けたいのでしょうか?
2.その能力を身に着ける上で、他の方法と比して、音源はどのように役立ちますか?
3.どのように成果を測りますか?

1.は最上流で見失いがちです。何の目的もなく音源を聞いても意味ないです。あくまで練習方法はHowであり、身に着けたい能力であるWhatから逆算しましょう。

2.は、日本では特に一部大学生の間で「音源病」があるからです。とりあえず音源を聞こうという状態です。音源を聞くのは数ある練習法の1つなので、固執する必要はなく、"Why 音源"という問いに答えられないのであれば別の練習方法のほうが適切です。

3.も重要です。とりあえず聞いて「うーん勉強になったな」となるのではなく、実際に能力向上につながらないと練習としては意味がないです(趣味なら別です)もちろん、勝ち負けないしディベートのスピーカースコア等個人によって最終的な成果は違うでしょうが、それにつながるような目標を設定しましょう。

【2. 具体的なデザイン例】

例えばak_debateは下記のようなシーンで音源を使っていました。

パターン① 英語力を維持・向上する("耳を慣らす")ための音源活用
こちらは、問いに対応すると、
1.今あなたはどういう能力を身に着けたいのでしょうか?
→英語力、特にリスニング力(相手が何を言っているのか英語で理解する力)

2.その能力を身に着ける上で、他の方法と比して、音源はどのように役立ちますか?
→国内ではネイティブ・スピーカーにあたる機会が少なく、集中して聞くことによって、次に出る大会でネイティブ・スピーカーやスピードが速いスピーカーにあたっても聞けるようになる。これはラウンドを行うよりも効果的

3.どのように成果を測りますか?
→①音源をどれくらい聞いたかという時間、②レベルの高い音源/普段のラウンドの英語の理解度

特に、英語力というのは「毎日積み重ねる」ことが重要であることから、ak_debateは、世界大会の決勝の音源は現役時代は毎晩寝る前に聞いていました。最初はぽかんとよく分からない内容だったりもするのですが、何度も聞くうちになれてくるため成長も実感しやすいものとなっております。
ちょっと古いですが、WUDC 2010 GFWUDC 2010 QF、あたりはお気に入りのスピーカーも多いので今でもたまに聞きます

なお、英語力に限って言うと、「少しストレッチ」して聞くのが重要です。最初から世界大会の決勝を聞くというハードランディングも人によってはありだと思うのですが、それは個人的には最終goalにしつつ、たまに聞くようにし、普段は「4-6割くらいしか分からないもの」を「8割くらいわかる」ようにもっていくとよいと思います。そういう意味で、国内のブレイクラウンドなどから始めるのもいいかもしれません。その次は北東アジアとか。(東南アジア、イギリスの発音などは難しい人が多いようです)

パターン② よく分からないテーマにおいてKey Issuesを特定するための音源活用
こちらは、問いに対応すると、
1.今あなたはどういう能力を身に着けたいのでしょうか?
→特定のテーマにおける「入門」的な内容(何が"重要"とされる議論なのかなんとなくヒントを知りたい)

2.その能力を身に着ける上で、他の方法と比して、音源はどのように役立ちますか?
→本来であれば基本書・学術書だとか、ニュースだとかを見るほうが良いし、ネットでググるほうが良い(特定のテーマであればなおさら)。特に、ディベーターがそのテーマに明るいとは必ずしも限らないので、Intelligenceはそういった1st Hand Informationから「センシング」するほうが圧倒的に良いです。一方で、14分で肯定・否定側のなんとなくの話が分かるのであれば1インプットとしては効率的

3.どのように成果を測りますか?
→特定のディベートノートにおける内容の多さ、特定のテーマにおけるアイデア数/勝ち数

例えば、Israel-PalestineであればAustrals 2012 SemiUADC 2014 Semi、ReligionであればAustrals 2014 GFを聞きました。また、日本人ディベーターが苦手なArgumentを立てるという意味では、例えばstate abuseのようなargumentであれば、This house prefers a world with memory writing technology.(HWS Robin 2016 R4)のOOを聞くのもいいと思います

そしてこれらは、聞いたら必ずマターファイル・ディベートノートにも反映すると効率的です。

パターン③ 特定のマナーを身に着けるための音源活用
こちらは、問いに対応すると、
1.今あなたはどういう能力を身に着けたいのでしょうか?
→特定のマナー(全体的なスタイル、具体的なword economy、レトリック、クロージングでのFraming等)

2.その能力を身に着ける上で、他の方法と比して、音源はどのように役立ちますか?
→もちろんこれはディベートに限らない有名なスピーチを聞くのもいいのですが、短い時間で何かを示すという意味で、特にClosingでのFramingはディベートで見るほうが効率的

3.どのように成果を測りますか?
→ディベートノートにおけるマナーの理論の数、ジャッジからマナーに関して褒められた数

特に日本だとなかなかMannerに関するフィードバックがもらえないことも多いと思います。(本来的にはもっと行うべきだと思っていますが。)

例えば、word economyをあげる意味では僕はクリス・クロークを追いかけました。あの短い時間であんなに反論できるのはすごいなと。(WUDC 2010 GFのMOです。それ以外でもWUPIDの予選のLO、Student Economic Review DebateのDPM)彼から「いかに効率的に反論するか」というマナーは学びました。フレーミングに関しては、秀逸なのはMDO 2011 SemiのGWのローガンはジョークや、ゲーム性に訴求しながらこのディベートにおいてはzero-sumであることをかなり時間をかけて説明しています。Wikileaksのモーションにおけるシャーミラはwordingによるrelevancyを説明するイントロが上手いです。このExtensionの仕方は線引きスタイルとしてとても参考になります。Closingのフレーミングが上手いなと思うのは、例えば国内だとJapan BP 2013 SemiのCOですし、Japan BP 2015 SemiのCOあたりです。どちらもmotionのwordingに忠実にうまくsolidなopeningを抜いているパターンだと思います。海外ですと、UT MARAは上手いなと持っており、WUDC 2015の予選の抜き方としてOpeningを簡略化した上で、一気に新興国の話を具体名を羅列することで雰囲気も含めて持っていくところはいいなと思っています。

なお、「なぜ、このMannerがよかったのか?」「どうすれば自分もできるのか?」という問いまであわせて、ディベートノートで考察するところまでを目指してください。

パターン④ アセスメント/実践の模擬フィードバックとしての音源活用

これは、今までのパターンとは少し異なります。というのも例外的に問いが当てはまらないからです。総じてGeneral Commentsや自分のスピーチに関するフィードバックが欲しい際に、音源を活用するというパターンです。(ただし、3つめの問いに関しては、問題を発見できた数、というところになるかもしれませんね)

どういうことでしょうか。具体的には、実際に行ったラウンド/スピーチ/プレパ練の後に、似たような、もしくは同じモーションの音源を聞くことで「模擬フィードバック」を得に行く練習方法です。

ak_debateはよく、プレパ練と組み合わせて行っていました。実際にプレパ練をしてそのsideの音源を聞いてみる。そこでひたすら自分と音源との差分を分析するのです。例えば、Matterの観点では「ああこういうアイデア出なかったな」だとか、Mannerでは「同じことを言っているけどこういう言い方のほうが効果的だな」というようなことを学ぶのです。もちろん自分のほうがうまくいっているパターンもあるので、音源を盲目的に信じるのは良くないのですが、gapが何か、そしてそのgapを埋めるためには何を必要か、と考えることが有効になります。

これは特に、具体的な問題意識がまだ芽生えていない場合に「どこに問題があるか」という「アセスメント」を行う上で有効です。というのも、ぼんやりとgeneralにフィードバックをもらうのは当然大事なのですが、それがactionableな、具体的な目的ドリブンで練習できるほうが、一気に能力をあげることができるからです。

いかがでしたでしょうか。
もちろん、これ以外の練習方法もあるのですが、3つの問いをベースに音源の活用方法をデザインするということの重要性はお分かりいただけたかと思います。これらは1人でもできる内容なので、ぜひあなたの練習方法をデザインしてみてください!
(なお、ご紹介した例は海外音源が中心だったのですが、より初心者の方はぜひJPDUの音源等を活用してみてください)

(なお、主要記事まとめはこちらです)

2018年2月4日日曜日

[KK-Cup 2018] Equity Briefingのベストプラクティス

2018年に入っての初大会である、KK-Cup 2018のEquity Briefingは注目に値するものでしたので紹介したいと思います。こちらは、Equity Officerが98%つくっているもので、ak_debateはアドバイザーとしては関与していましたが、ほぼ関わっていません。
1点だけアドバイスはしましたが、基本的には3人のCreditです。
(なお、名古屋大学OBもアドバイザーとして参加していた他、最終化の前にTDやACとの議論もあったようなので、かなり多くの人を巻き込みながら推進してくださったのだと思います)


現物のリンクはこちらになります

【総論:なぜ「ベストプラクティス」級なのか?】
・主に4ページ目にあるように、今までのEquity Violationは同じようなことが繰り返されてきたり、「結局何がEquityなのだろう?」というものが不明瞭だったことが挙げられます。もちろんEquity Policyが日本に上陸してから多くの日がたっていないことは影響しているのでしょうが。なのでそれを分かりやすくケーススタディやイラストをもってコミュニケーションした、というのは大きなValueだと思います
・そこでもちろん何がEquityにあたって、なにがあたらないかの判断はグレーゾーンではあるかと思います。その議論は継続的に行うにしても、ある種「決め」の問題でもあると思うので、リスクを多少とってでも、それをしっかり決めにいったところがすごいと思いました。不快感が感じた参加者がたくさんいた中で、とはいえEquity Briefingが曖昧であるがゆえに躊躇していたものを、しっかりとだめだと言い切った勇気をたたえたいと思っています。
・実際に参加者などからEquity Officerに対して個人的にいくつも「これは良いね」というフィードバックがきたようです。また、会場にいた人からは「普段よりもEquity Policyをしっかり聞いている人が多かった」という印象があったとのことです。

【各論:具体的に取り上げられている事例の妥当性】
・問題意識からおりてきているように、具体的な事例は過去に実際起きたことであったり、私も耳にしたことが多かったです。

・例えば、P.7の「ディベート中の居眠り・携帯いじり」に関しては、一部の大会において問題にはなっていました。ただ、それを行っていたジャッジが多くの参加者にとって年上であったことから、参加者が「それをわざわざ言って問題にしたくない…」中でむずむずしていたとのことです。
・P.8のGender Pronounに関してもしっかり踏み込んでいるのが良いと思いました。こちらはEUDC等では「当たり前化」しつつある話で、大会によってはpreferred pronounを聞くことが推奨されていたりもしています。こちらも今後増えていくことがいいなと思っています
・P.9-10の差別的・過激なスピーチに関しても、英語が母語出ない人にとってはチャレンジングな部分だと思います。近年日本語即興型ディベートを見ていると「日本語のほうが気を付ける余裕がある」とのことではあるようですが、WUDCでもこのような表現に関しては気を付けよう、とあるので世界基準の内容が輸入されているようにも思えました
・P.16で書いてあるような、SNSでの攻撃的な発言に関してもいいと思いました。こちらはSIDO等ですでに導入されているポリシーでもあります。もちろん建設的な議論はすればよろしですし、ディベーター的にロジックであったり、あとは単純に人として「こういうところはよかったのだけれども、ここのチャレンジが…」というような話し方をもって議論することは有益だと思っています。いきすぎない表現は重要だなというところです。

【総括】
Equity Policyをより早くから公開しておく、のような工夫を行ったり、よりほかの事例のピックアップなどのチャレンジはあると思います。しかし、具体的に地に足のついたEquity Briefingを、(1名はTabでしたが)コミッティーばりに貢献してくれたことは大きく評価されるべきだと思っています。

Equity Policyはak_debateが提唱している、「何が良い大会なのか?」という"物差し"を提供する"Debate Tournament Framework"で言うと、「イベントの質」の"Participation"という根幹のものです。「個人の属性に関係なく誰もが参加し易く、「参加してよかった」と思える」ようにするうえで必要不可欠なものです。
(参考資料はこちら)重要なピースである、Equity Policyがブラッシュアップされていくことを切に投げっています。3名の皆様、お疲れ様でした。

2018年1月19日金曜日

【即興型英語ディベートの練習法】ak_debate式英語の上達方法 5つのポイント

【背景】
「これをakさんに頼むのも変な話ですが、純ジャパとしての成長戦略についての寄稿文を読んでみたいです。(最近、レトリック、fluency、海外音源の聴き取り等、様々な面で帰国子女と比べてハンディキャップを感じることが多いので)」

という質問を頂戴しました。色々な回答方法がありますが、「同じ土俵に立つため」の英語力は重要かと思います。(競争戦略で言うところの「等位」にする部分)また、場合によっては「ノックアウトファクター」、すなわちそもそも「土俵にも立てない」状況になってしまうことがあり得ます。したがって、英語力の向上は至極命題になっているかと思います。

私は質問者の方が示唆してくださっているようにいわゆる海外経験のある人間です。とはいえ、全く英語の努力をしてこなかったというわけではないのと、英語の指導も英語ディベート部の部長やコーチを通じて行ってきました。また、実は英語の家庭教師/レッスン講師も行っていたりしたので、お話できる範囲でポイントを5つあげてみました。


1."伝えたもん勝ち"精神を持つ
 私が思うのは、今までお会いした多くの方(非ディベーター含む)は真面目に英語に取り組まれていることもあり、完璧主義に陥りがちです。きれいな文法で、きれいな発音で相手に伝えることを優先しているように思えます。もちろん、奇麗さを求めるのは中長期的には必要ですが、足元の取り組みとして「伝えること」が競技上も至極命題になるかと思います。
 勿論英語ができない状態が他人に見えることはとても恥ずかしい部分もあるかと思います。特に、英語力が高い人の直後にしゃべるとその差は歴然で、スピーチ中に帰りたい衝動に駆られることもあるかと思います。また、伝わらなかった時の辛さというのも引きずりがちです。私も、日本で何年か過ごした後、再び海外に戻った際、小学校の先生に全く英語が通じず、何度か試み、先生も何度か説明をしたり耳を傾けたりしてくれたのですが、最終的に匙を投げられたことは、未だに脳裏に焼き付いています。
 しかし、まずは英語をコミュニケーションツールとして捉えた際に、大目的は「伝える」ことになるわけで、その合目的性に照らし合わせればどんなに拙くても良いのです。
 私はそういう意味で、出川哲郎さんの「はじめてのおつかい」はとても好きです。この番組は、英語ができない出川さんがニューヨークなどの地で、知っている単語、ボディーランゲージ等を駆使して必死に伝え、それが花開きます。もちろんたまに奇想天外な発言もあり、それは笑いを誘う部分もあるのですが、それ以前に、私は実際にそれで伝わっていく様子を見ていて、伝えようという想いの下、どんなに拙くても、「伝わったら勝ちだ」と思うことが、重要なファースト・ステップであり、出川さんに対して笑って終わってしまうのは勿体ないなと思っています。
 これを繰り返していくと、必ずうまくなります。アウトプットを繰り返すので取りアンドエラーがなされていくかもしれません。

2.  Keep it Simpleの原則を徹底する
 完璧主義者になりがち、というところにつながっているのかもしれませんが、シンプルにすることはとても重要になります。これは特に「話す」という局面で大事になってきます。
 具体的には、whenがあったから…ifがあったから…のように文法をとても気にしがちだったりするかと思います。また、ついつい一つの文章が長くなってしまうことも傾向としてあります。また、単語という意味でも、「あ、あの言葉なんだっけな」とベストフィットな言葉が出てこず、悪戦苦闘することも多々あるかと思います。
 もちろん、それらは中長期的に改善していけばよいと思うのですが、特にスピーキングの文脈では、「シンプルに話すこと」はとても重要になります。私も海外でプレゼンテーションやディベートを中高時代に行った際に「akは言いたいことはとても良いが難しすぎて伝わらない、もっとシンプルに話せ!」と先生にアドバイスを受けました。その時、この原則を教えてもらいました。ーその際は、なんなら、ジョークを交え、「Keep it Simple Stupid!の頭文字で"KISS"の原則だ」と教えてもらいました(笑)
 具体的に英語ディベートの文脈で捉えなおすと、まずシンプルな文法で短く話すことをお勧めしています。文章は極力短くする。接続詞を使用して長くなるようだったら一回文章を切るくらいの勢いで大丈夫です。過去完了形等は難しくなってしまうので、できるだけ過去形のようなシンプルな構造に努める、等になるかと思います。また、単語も一番シンプルな言葉のレベルでいいです。"improve"という言葉が出てこなかったら、"make the situation better"のような言い換えで大丈夫です。Keep it Simpleですね。(もちろん、あとで言葉の反省とかはすればいいかもしれませんが、ラウンド後にとっておきましょう)

3. 最もベースとなる単語力を鍛えるため、文章で、書いて、聞いて、話して、覚える
 「元気 あなた ですか?」という文章を見ても、「あなたは元気ですか?」のように、言いたいことは想像がつきます。一方「xyz abc ですか?」だと、「何か聞いているようだが何を言っているかわからない」という状態になってしまうかと思います。そういう意味で、単語は最も重要だと思っています。いわゆる英語の4技能(リスニング、スピーキング、リーディング、ライティング)を横断するからだと思います。
 とはいえ、さあ、単語力を鍛えようと思ってもなかなか難しいところはあるかと思います。そこでak_debateは「文章で、見て、聞いて、話して」覚えることをお勧めしています。具体的には、私は日本の受験生のような、暗記カードをつくりました。どういうことかというと、表面に文章を書き、覚えたい単語に下線を引きます。右下には同じ単語を書きます。裏にはその意味を英語で書いていました。
 ここでのコツは、まず「想像できるシチュエーションの文章」にすることです。実際に自分が想像できる状態にするのです。稚拙な例で言うと、happyという言葉を覚えたければ自分が実際に嬉しかったシチュエーションの文章で覚えるとかですね。場合によっては例文の主語をリアルの人に代えて想像しやすくする、というようなこともやっていました 笑 仮にすぐ想像できない場合は、頑張って想像できる例文を電子辞書等で探しました。(なお、おすすめの単語帳はこちらにも書きましたが『神部孝(2006)『TOEFLテスト英単語3800』旺文社』です。)
 そして、暗記カードを使う時に「話す」ことも大事です。文章として実際音読(周りに人がいるときは黙読)して口を動かします。見るだけじゃなく、書いて話す、というようなところまで行うため五感をできるだけ使っているというのがミソです。
 これをディベートに置き換えても通じるところはそのまま多くあるかと思いますが、「想像できるシチュエーション」を一ひねりするのが良いと思います。「この単語はディベートだとどういう時に使うかな~」と思い、それを文章にする、場合によっては上手いディベーターのフレーズをそのまま書くとかも考えられます。例えば"pave the way for"という表現があります。weblioによると、道を開くとかの意味があるようです。実際例文は、「The function of the UN is to pave the way for world peace.」 国連の任務は世界平和への道を開くことだ.と書かれています。ak_debateの場合は「国連系のモーション、例えば安保理の拒否権廃止のモーションのときに使えるなぁ」とか思ったり、「また、principle一般で使えるなぁ」と思うわけです。というのも、principleは原則論を話すので、そのアクターが政府であれ国連であれ、NGOであれフェミニストであれ、何かしらの道を開くべきだという「べき論」があるからです。

4. 毎日英語は何かしらの形で触れる。「1日にまとめて」ではなく「毎日15分」
 帰国生であっても、英語をしばらく話さないと口がまわらない、だとかあります。何なら、英語以外でも例えばak_debateはピアノを3才からやっていたのですが、どんなにやる気がでんかうても、高校までは必ず15分はピアノを触っていました。万が一手をあんまり動かせないなという時は、机を鍵盤に見立てて、曲を弾き切るくらいはしていました。「1日ひかないと、取り返すのに何日かかかる」というのは音楽の世界では鉄則とされていたからです。私はこの考え方は英語でも当てはまると思っています。
 帰国生である私ですら、学生時代は毎日オックスフォードなどの有名スピーカーの音源は毎日最低1スピーチ、たいていは30分~1時間聞いて「耳をならす」ことをしていました。それに加え、その日のスピーチの復習としてのスピ練を、イントロだけ、1st Argumentという形だけでもよく行ったものです。「英語に触れないことのこわさ」を肌で感じていたからかもしれません。
 ここでのコツは、「とりあえず始める」ことと、「習慣化すること」の2つに尽きると思います。どんなにやりたくなくても、とりあえずYouTubeで流したら「まあ聞くか」くらいにはなって、だんだんはまっていきます。それから、嫌なことは習慣化するのが勝ちです。そのうち当たり前になります。例えば、ak_debateの場合は寝る前に必ずスピーチの音源を流しながら寝ました。この癖は実は受験時代からあり、英語の例文のCDを流しながら寝ていたのとまったく一緒です。「とりあえず流して寝よう」くらいの勢いでいいので、やっておく、という、その小さな積み重ねが、イチローも言っているような「とんでもないところに行くただ一つの道」だと思っているからです。

5. 英語の成果を"見える化"し、できた自分を褒める
 最後に大事なのは、英語の成果を"見える化"することです。英語はとはいえすぐはうまくならないところは当然あります。また、単語を覚える、文法を学ぶ、のような地道な作業が多いです。すぐに花が開かないし、他の人からも何なら見えづらい。なので、英語がうまくなったね、となかなかすぐには言われないわけです。
 この構造は即興型英語ディベートだとさらにあると思っており、勝ち負けの理由が必ずしも英語だけに依存しない、あくまで論理的・感情的に人を説得することに尽きるからであり、そのための要素として少なくとも、以前取り上げたような思考力プレゼン力がかかわってくるからです。さらに、だいたいディベートの中身(Matter)に対してフィードバックが中心になりがちという構造もあるかと思います。したがって、なかなか英語の成果が目に見えず、やめてしまうこともあるかと思います。(なので、もちろん、英語に関するフィードバックを自分から求めるのも大事です)
 そこで、何かしらの「指標」、つまりは「ものさし」を準備することが大事になります。目標とかKPIとかのイメージにも近いです。もちろん、この「指標」の置き方は難しいのですが、(合目的性などの要件が必要)例えば、ak_debateでは、下記のような指標を持ったり、お勧めしたりしていました。

・覚えた英単語の数 (自分で知らない単語だけをベースに(=暗記カードをつくった単語だけで構成した)テストを週1回等のペースで定期的に行って、何点とれたかを見える化していく。)
・聞けるようになったスピーカーのタイプ (帰国生で英語が早い人>英語が早い人>英語がゆっくりな人という優先順位付けで、まずは英語がゆっくりな人が聞けるのであれば、早い人を聞けるようにしよう、等)
・聞いた音源の時間 (毎日15分なのであれば、それが30日あれば450分という風に積み重ねが見えてきます)
・読んだ英語の文章の数 (毎日1記事読むだけでも、30日で30記事読んだなとなります。例えば印刷しておくと「ああこんなにやったんだな」という達成感にもつながります)
・英単語/表現をどれくらい使えたか (上記のpave the way等、「覚えた単語を使えた」ときは覚えておきました。赤ペン先生状態じゃないですが、「あ、これやったところだ!」となる瞬間は嬉しいものです)

もちろん指標は多岐にわたりますが、ポイントは成果を目に見えるようにするというこころです。(実は、指標も主に4種類あるのですが、これはまた別途どこかの機会で!)

いかがでしたでしょうか。少しでも5つのポイントが参考になれば幸いです!

2018年1月14日日曜日

【調査型/即興型×日・英ディベート交流】2018.01.13 ディベート教育国際研究会(ISTD)関東支部/CDS Project合同シンポジウム メモ

ディベート教育国際研究会/CDS Projectが合同で行っているシンポジウムですが、調査型/即興型、日本語×英語のディベートコミュニティの方が一同に会し、色々な議論が行われました。

今日は主なアジェンダとして、下記の3点が行われました。
① シドニー大学における組織論の基調講演
② 各コミュニティの代表者によるパネルディスカッション
③ 全体ディスカッション

(僭越ながら、②では英語即興型のコミュニティの観点からパネラーとして話してきました。)

総論として、ディスカッションは大変示唆深く、ディベート界がスタイル横断的に色々同じような課題に直面していたり、色々な工夫がなされていたりしている一方で、異なる固有の状況もあり、とても面白かったです。皆さんコミュニケーション能力も非常に高く、"ディベートのOSが入っている"人たちだけが集まると、傾聴や意見交換がこんなに楽しいのか、と思いました。

いくつか、備忘録として。

・が議論の内容、→がak_debateが思ったことになります。なお、下記の議論は当然のごとく網羅的ではないですが。

・世界の"最競校"ともいえるシドニー大学では、150人の部員をマネージするために、部の運営がかなり組織的に行われている。具体的には、部の貢献のポイント制・表彰制、女性のインクルージョン施策(女性専用の練習会など)が、専門の役職により協力に推進されている
→そもそも国内でも「どのような組織にしたいか?」から逆算して役職を見直したほうが良いのでは?(国内でも一部の部では「部長」「キャプテン制」が異なります。最近コミでもChief Innovation Officerという新役職を経験させて頂きましたが、この場合は"カイゼン"と"新規施策"のビルトインで有効だなと。ak_debateが提唱しているDebate Tournament Frameworkは、大会/部活/コミュニティビルディングにも通じるところがありそうだと思いました)

・シドニー大学では、色々な組織・制度により、「縦のつながり」「横のつながり」が実現され、それが「練習の質」にはねてきている。毎週社会人を含めたOBOGがレクチャーやジャッジで参加するなど、WUDC向けの練習が「WUDC SFレベル」だったりする。
→なぜこれができているのか、まで分析したいところですが、ak_debateは①縦のつながりを専門的に推進する人がおり、②それがレクチャーなどの制度に落ちてきていることが重要だなと思っています。また、単純にディベートだけのつながりではなく、ソーシャルな部分まである(ふらっと大会にきて飲んで帰る文化とかがある)のがミソかなと思っています。

・シドニー大学は総じて自分たちの強味を"principle/practical"両方、かなり細かいレベルで鋭く話すことができる分析力だと理解している
→競合であるヨーロッパ圏等を常に意識

・オーストラリアでは、多くの大会はスモールで行い、「選択と集中」が上手。普段の大会は20チーム規模で、タブも毎回同じ人で構成される"Expert Team"。運営者も3人くらいでまわす。案内等のホスピタリティは省き、参加も3日前まで可能、参加費の徴収も当日、提供ジャッジ不要。一方で、ランチ(タコス、ピザ)、ドリンク、スナックを配布、夜にはバー等で3000円クラスのパーティもある。10:00開始・18:00終了、その後はそのパーティという形で日本よりも"イベント"色が強い。この結果、運営側の負担を減らしながらも、参加のしやすさ・満足度をあげている
→大会の参加のしやすさ・運営のしやすさを両方追求するために、大会を小さくする、(参加者の数を目標やKPIにしない)のが一つ重要かなと。大きな大会はもちろん全国とかでやるのでそれが重要になるかと思いますが、普段の大会は小規模にしたほうが負担が少ないと思います。(Tokyo MiniはWUDC準備にコンセプトを特化し、最初は4部屋限定で、AdviserとしてかかわっているKK-Cup/K-Cup参加者「数」を最も重要視するKPIとはしておらず、参加者の満足度・ホスピタリティという「質」を重視)
一方で、案内はない、のように日本コミュニティでオーバークオリティになってそうな部分は一気に削減していくのもセットなのがいいなと。(=全方位的に全部やりがち。)
また、"ソーシャル"的側面がむしろ強いのでイベント的な楽しさがある。確かオーストラリアの別大会も3日間大会の2日目の午後から2ラウンドジャッジしてその後ソーシャルに参加して帰った、っていう人もいるとか。英語即興型は会場の都合もあるので大変ですが、ずっとラウンドやって1日が終わるイメージが強いと参加しづらいのではと思いました。(こちらも地方大会のほうが上手なイメージ。2009年の若葉杯は、R4の後に交流ということでお菓子とボードゲームが提供され交流があったり、KK-Cup/K-CupではCommunication Roundという、ディベーター/ジャッジがくまなく別の人と組んでディベートするというイノベーションが生まれています。詳細は)

・シドニー/オーストラリアがではジャッジ/大会運営者に対するリスペクトが相当に強い。(原因は要調査)。例えば、コミに対して大会のときに大きく拍手/recognitionがあるだけではなく、部のレベルでも「大会運営(特にTD等のコミ)」が「貢献」とされ、一定ポイントがたまると名前入りのワインや表彰までされる。トップディベーターも、「かみつく」ことは無く、初心者ジャッジに対しても熱心に耳を傾けることがあたりまえ。
Australs体験記でも書いた気がしますが、ジャッジの質がとにかくオーストラリアは高いです。ただそれだけではなく、そもそも参加者からのリスペクトが大きいとは思いました。この相互作用(ディベーターがジャッジやコミをリスペクトする→ジャッジやコミが増える、続けるのでレベルがあがっていく→ディベーター、ジャッジへのベネフィットも増える→ディベーターがジャッジやコミをリスペクトさらにする)が好循環だなと思いました。

・シドニー/オーストラリアでは、"噛みつき"だとか、他の人の"でぃすり"というような行為はほぼ行われず、"いけてない"というのが当たり前。
→これもなぜ?というところまで掘り下げたいですが、多くの人が実際コミを経験しているからというところがあるだとか、色々ありそうです。でも確かに、国際大会に私が招聘ジャッジとして参加するときも、ほぼ"噛みつかれた"ことはないです

・シドニーでは大学・中高を巻き込んだ教育制度が仕組化されている。中高の法人としてバイト代を学生に出し、大学は会場と昼食を提供している、分業体制が成立。コーチには相当な報酬が払われている
→早期教育がなされているのがいいなというのと、「エコシステム」的なのが素晴らしいなと。さらにいうと、マーケットメカニズムも重要だなと。

・調査型のトップディベーターのリサーチのアプローチは基礎理解→キーパーソン特定→アウトプット向けの深堀りという順番。まず論題の課題や周辺領域をぱっと読み、学者がどういう人たちがいるのか、その論理や派閥なども理解し、それを「こういう議論をつくりたい」と思いながらアウトプットへ。
→なんならコンサルティング業界の基本のようなアプローチがトップディベーターではされており素直にすごいなという感想。即興型もかなり参考になるし、私もこの方法で社会人になってIR等の知識は指数関数的に伸びました。効率的なリサーチ方法はuniversalだなと。

・調査型のトップディベーターは、ラウンドの後のディスカッション/フィードバックが長い。その後の食事・飲みの場でもひたすらに「この議論はこういう風にやったほうがむしろいい」「その証拠よりもこっちの証拠のほうがいい」のような情報共有やフィードバックが多くてどんどんブラッシュアップされていく
→今はあんまりお邪魔できていないのでわかっていませんが、創設時のWAD(早稲田大学)も確かラウンド後のディスカッションの時間が長かったのは特徴的。2010年代前半のICU(国際基督教大学)も、成蹊大学も、OBOGの方が1時間位かなり細かくフィードバックくれたことを覚えています。
フィードバック、ファシリテーションの技術は今後よりいっそう重要だなと。
もちろんそこでのインクルージョン(ディベート初心者、留学生や女性等、ディベート界においてマイノリティになりやすい人たち)とセットでしょうが、重要だなと。

教育ディベートの文脈に関連すると、フィードバックは必ず「その個別のラウンド」にとどまらないことが重要。一段抽象化して「こういうことを伝えたかったんだよね」というところまで踏み込むと大学や中高、社会人研修などの満足度があがる
→「三重のフィードバック」をak_debateは提唱しようと思います。「そのラウンド固有に関するフィードバック」「どのようなディベートでも使えるフィードバック」「ディベート外でも使えるフィードバック」が大事かなと。今後深堀りします。

・ディベーターは、調査型・即興型、日本語・英語にかかわらず、「反論=人格否定ではない」という前提が共有されており、できていない点を指摘されることは苦ではない。ただし、非ディベーターは必ずしもそのような前提を持っていないので、社会人になった際などは気を付けることが有効。特に「相手の一番言いたいこと」を理解しないとディベートでは負けてしまうため傾聴力・理解力は実は高いというところがあるので、いかに伝えるかだけ、人によって変えることが大事
→私もコンサルティング業界にいるのでディスカッションや、アサーション(ここは違うと思うと、何なら執行役員に対して主張すること)は当然よしとされているのですが、それでも、ディベーターと話すときとは話し方は当然のごとく違います。相手が考えていることを引き出したり、こういう観点だったらこれと一緒に合わせ技にできますねというような建設的なブラッシュアップをするのはもちろんですが、相手の話のこういうところがいいと思ったところをよりしっかりと言うことですとか、言い方としても「こういう風にしたほうがよりよくなるかもしれない」「私の理解が追い付いていないのですがもしかしてこういうことですか?」「そのメッセージだと、お客さんがこうお話してくるなと思っていて、その際ってどうすればいいですかね・・・?」のように手を変え品を変えて、ソフトにしている部分もあります。勿論私もまだまだなので、だし結構自分のリサーチなどに自信をもって話してしまうこともあるので日々かえって反省しているのですが、「伝え方」はずっと精進しないとなと。とはいえ、一般論としてディベーターは「伝え方」を工夫するとより能力が生かせそうだなと。

・調査型・即興型に共通して、教育論として、「守破離」すなわち最初は限界がありながらも型を教えOR特定の型を模倣、そしてその型を超えていくということが大事。前半は先人の知恵もたくさんあるのでちゃんと教えたほうがいい
特に外資系企業はこれが強い。マーケティング系大手だと「誰でも60点がとれる」ようにいわゆるセグメンテーション、4Pと言われるようなマーケティングのフレームワークを最初は教え込む。もちろんその限界は多々あるが、最初はそれ。
教えるほうは実は型をすでに破っているので型を教えることの心理的抵抗感があったり、型を批判するタイプのディベーターの"イキリ"や"プライド"が邪魔することは、後輩ディベーターにとっては不幸。型は最初はちゃんと教え、そのやぶりかたのコツ(自分の強み、弱み起点の競争戦略や、他分野からの"輸入"等)までシャイにならずに発信するのが良いのでは。
結局のところ、調査型でいうディベートの議論の三要素だったり、即興型でいうSQ, AP, ImpactやTriple Aは色々限界もありますが、やっぱり最初は教えたほうが総じて皆さん伸びやすい。
→ここはかなり示唆深かったです。ak_debateとしても過去に「どうすれば、上手くなれるのか? -"成長エンジンの設計方法"-」という内容を書いており、東大全体練習会でもレクチャーしておりますが、示唆として「守」はもっとまず大事にしようかなと。そしてこの上記の記事はどちらかというと「破・離」の話なんだなという整理ができてすごくすっきりしました。
即興型の文脈でも、Monashは(最近弱くなっているとはいえ)安定的に強いのは1st Principleがどの人にも共有されていることでしょう。(AustralsでMonash 11?くらいにあたったときに、彼らは1st Principle起点でプレパしていました。普通に強かったです。)

・調査型では、社会人もディベート大会の運営に本気でかかわる。そこで、コミに金銭的に報えないこともあり、社会人が今思っているのは「コミに対する唯一の報酬」はプロジェクト遂行能力だと捉え、プロジェクトワークの動き方等をかなり細かくブリーフィングし、説明し、習得できるようにしている。なんなら、企業のインターンも別に学生を成長させることが最大の目的ではないことを鑑みると、むしろそこよりもレベルが高い可能性すらある。(なお、プロジェクト運営のような大学の授業もニーズはとても強い。)
→ak_debateの理念とも合致しました。私もかけだしですし、ペーペーなので全然仕事はまだまだできませんが、「即興型ディベート(英語/日本語両方)に関して、競技者にとどまらず、審査員・部の運営者/コーチ・大会運営者・教育の観点からも幅広く考察し、オリジナルの分析・教育理論の提唱・提言を行っています。」というのはトップページにある通りです。また、UTDSも運営能力がとても高いレジェンダリーなMr.Xにより発展してきましたが、その方とやることの教育効果も大きかったと私も思っています。
なお、上記の議論はコミに対する金銭的リワードを与えるべきではない、という論調では当然ないです、念のため。


・調査型・即興型でも「伸びるな」と思うのは、大会運営/ディベートどちらでも「いい上司」(「いいパートナー」)と組むこと。なお、仕事でもそう。
→これはじゃあどうするのかという風になると即興型でいうPro-Am Tournament(経験者と非経験者が組む大会)とかが増えることとかなのかもしれません。


2018年1月13日土曜日

【初心者向け】即興型ディベートって何?

このブログにおいて、実は最も基本的な問いである、「即興型ディベートとはそもそも何か?」ということを取り上げていないことに気づきました。

したがって、簡単な資料をつくりました。リンクはこちら
(なお、基本的には公開情報をベースに作成しており、必要に応じてupdate致しますのでなにか齟齬等ございましたらご連絡ください)



【コンセプト】
・「政治家が一般大衆を説得する」議会を模していることが即興型ディベートの最大の特徴(英語では“Parliamentary Debate”と呼ばれるのが一般的)

【基本ルール】
・肯定側(与党)と否定側(野党)に分かれ、第三者である審査員を論理的・感情的に説得することを競う(肯定側・否定側はランダムで決定される)
・審査員は一般的な市民(投票者)を模して、説得度を包括的に評価(一般的に“Matter”と呼ばれる「話す内容」及び”Manner”と呼ばれる「話し方」の観点で評価)
・議題が発表されてから15~30分の準備時間を経て試合開始(発表後の調査は不可)
・1チーム2~3名により構成されることが一般的

【議題】
・議題は政治・法・経済・倫理・ジェンダー・宗教・環境・国際関係など多様
・具体的には、死刑廃止、タバコ廃止、ベーシックインカム導入、AI開発禁止、遠距離/近距離恋愛の優劣、不老不死になれる技術の是非、安保理拒否権廃止等、幅広く議論

【競技人口】
・国内で主流の英語即興型は、ESS/ディベート部を中心に学生団体46団体*がJPDU(日本パーラメンタリーディベート連盟)に加盟。1大会に200名以上集まることも
・高校生、社会人ディベートも盛ん(HPDU、PDA等の高校生大会も200名規模)
・毎年行われる大学生の世界大会では約1000人が参加(2017-2018年にメキシコで行われた世界大会は選手約600人、審査員約250人が参加)
・(参考)海外ではメディアも注目・報道(例:2017年に韓国が高校生を対象としたディベートのテレビ番組を放映)


そして下記のように、国内では多くの団体/メディアが即興型ディベートを推進しています。

また、よくある質問は下記のとおりです。



【よくある質問】
Q1. 勝敗はどのようにして決められるのでしょうか?
A1. 第三者への説得度を、“Matter”と呼ばれる「話す内容」及び“Manner”と呼ばれる「話し方」の両方から評価します。論理的に分かりやすいだけではなく、パブリック・スピーチとして感情にも訴え かけることが重要になります。どうしても人による主観は入ってしまう部分もありますが、「より多くの人を説得できること」を目指してディベーターは練習を重ねます

Q2. その場での“でっちあげ”や“でまかせ”が横行しないのでしょうか?
A2. 競技の性質上可能ではありますが、①明らかな嘘などは審査員が考慮しない裁量があり、②特定の事例だけで勝敗が決まることは少なく、③競技ディベーターは多くのテーマに対応するために日常 的に国内外のメディアをチェックする傾向にある等するため、多くの場合行われません

Q3. 調査型ディベートとの違いは何でしょうか?
A3. 調査型ディベート(通称アカデミック・ディベート)は、「一般市民」ではなく「専門家を説得する」ことをコンセプトとして、数か月にわたる準備時間を経て証拠資料を用いて議論します。(ディベートの種類が異なるため、異なる能力が身につく傾向にあります)

Q4. ディベート経験者はどのような就職先に進むのでしょうか?
A4. 人それぞれですが、国内のディベート経験者に限って言うと、法曹・官僚・経営コンサルタント・学者・メディア・商社・投資銀行・エンターテイメント業・サービス業等多岐にわたります

2018年1月8日月曜日

【即興型ディベート部のマネジメント】練習における議題の選び方

Q.「普段どのようにモーションを選んだら良いと思いますか?」
このようなご質問を、部を運営している人から頂きました。

(競技ディベート目的なのか、教育ディベート目的なのかによるところはありますが、
いったん競技ディベートだと想定してみます)

その場合、色々な考えはあると思いますが、一つ大会で結果を残せるようにする(それは以前と比べてもありますし、その"結果"の定義も色々あるかと思いますが)が、部員にとって良い(勝てて嬉しい、勝てなかったとしてもそれに向けて的確な努力ができたため成長実感も大きい、等)とすると、下記のような考え方をお勧めしています。

A. 大会での出題確率×部の成熟度で考えること
私がおすすめしているのは、縦軸に「大会でどれくらい出るか?」、横軸に「部としてどれくらい対策できているか?」をとり、優先順位付けすることです。
(もちろん、他の考え方もあるかと思いますが。)

具体的には下記のようになります。


資料にも書いてありますが、出題確率はその時の時事問題、大会レベル/特性、モーション作成者等を勘案することがポイントです。
海外大会だと最近「過去のACの出題モーション」を公開していることもありますが、これはこの対策ニーズが大きくなっていることが背景にあるのではないでしょうか。

部の成熟度は測るのが難しいのですが、こればかりは色々なモーションを見ながら日々観察しておくことがキーになるかと思います。私がUTで昔部長をしていた時は、よく同期や先輩、場合によっては他大学の方に「どれくらいできているか」をうかがっていました。その結果、特に法学部のディベーターが多かったというのも相まってか、なんとなく法律系のディベートは強いということは分かったりしていた気がします。

なお、縦軸を考える際に、過去の議題の傾向から選ぶのは多くのディベーターの中でも暗黙の了解になっている気がします。(もちろん、時事、ACの傾向等もあるかと思いますが)それをもう少し精緻にアプローチすると、例えば下記のような分析をak_debateが試してみました。
1年生大会であると、政治・社会的弱者の議題が最もよく出ており、企業・労働、教育、紛争・戦争、法律なども続いてくる、という結果が見えてきました。
(なお、社会的弱者とはいわゆる"minority"関係のsocial movement関連などです)


このやり方は色々難しいところがあります。(例えば、大会といってもどこまでを対象とするか、テーマもどのように選ぶか、等。実際今回、モーションの分類をしようとしたときにとても困ったときがありました。またテーマは違っても出る議論や背後の対立軸が似ている場合とかもあるので、「テーマ」だけだと限界もあるのかもしれません。また、結局その年のACによっても大きく変わる部分もあるので、今まではこうだったけど急に変わるということも考えられます)ですが、個人的にやっている/やっていた感覚としては一定程度の成果はあるように思えました。)


したがって、部の運営者/コーチ、ないし教育を担当している人というのは上記のようなイメージをもってモーションを選ぶのが一つ良いのかもしれないなというのが示唆です。(もちろん一言で「部」と言っても、人によって横軸は大きく変わってくるので、個別化した対策も必要になるかとは思いますが…)

なお、ここまでデジタルには行っていませんでしたが、このアプローチは、私が部長を行っていた時にやっていたものです。具体的には、梅子杯を一つ大きな目標として、どういうテーマがでるか過去の議題から分析していました。(そのcontributing factorの大きさはもちろんわかりませんが…本人たちの努力も大きいですし、自主練とかは分からないですし…)

なお、これまで「部」という単位で話していましたが、これは個人という単位でも使えたりもするので、そちらでも応用できます。自分で横軸を分析するイメージですね。

いかがでしたでしょうか。モーションの選び方の参考になれば幸いです。

2018年1月6日土曜日

即興型ディベートに必要な能力を身に着けるための練習法シリーズ② プレゼンテーション力

前回の「思考法」に引き続き、「プレゼンテーション力」(プレゼン力、パブリックスピーキング力)に関して書きたいと思っています。

そもそも即興型ディベートは議会を模していることから、政治家が「一般人」を説得することが求められていることから、ディベートの中でも特にプレゼン力が重要視される傾向にあります。(毎年行われる世界大会だと余興的にではありますがPublic Speakingの大会も並行して行われていることからも、親和性が高いなと思っています)

まず、下記の2枚がサマリとなります。


【1. そもそも即興型ディベートで目指す「効果的なプレゼンテーション」とは?】
色々な整理があると思うのですが、私は即興型ディベートにおいては「論理的な分かりやすさ」と「感情的な分かりやすさ」の両輪が大事だと思っています。
(巷ですと、前者を左脳的、後者を右脳的と表現していたりですとか、古代ギリシャの哲学者・アリストテレスが人を動かす上で必要だと言っているエトス(ethos)・ロゴス(logos)・パトス(pathos)でいうロゴスとパトスにあたるものだとご理解ください。)

即興型ディベートで言うと、「論理的な分かりやすさ」とは、下記のような特徴があります。

  • アイデアの結論が最初に述べられ、根拠によって支えられている
    • 単純に“言いっぱなし”ではなく、その理由や例が説明されている
  • 複雑な事象であっても、シンプルに本質を抽出している
  • 特定のメッセージを伝えるために効果的なストーリー/構成になっている
    • 理解する上で必要な前提条件から説明したり対戦相手やチームメイトの発言内容の文脈と関連づけたりする
一つ目がKeyとなる原則であり、それが難しい内容であっても、個別最適だけではなく全体最適の観点からも「論理的に分かりやすい状態」であるか、という整理をしております。

「感情的な分かりやすさ」とは、下記のような特徴があります。
  • まるで目の前で起きているかのような、具体的な描写を通じて五感に訴えかける
    • 例えば、政策をとらない場合最も被害を被る人のドラマを描写
  • 声のトーン、表情、身振り、視線、相手との距離等、“非言語的”なコミュニケーションを活用している
  • 最低条件として、誰に見られても好感を持たれるような言い回しになっている
    • 差別的・侮辱的な発言ととられないよう、一言一言配慮している
言語的・非言語的なコミュニケーションを駆使して感情に訴えることが「0からプラスへ」の話だとすると、そもそも「マイナスを0にする」という前提条件が最後の話です。

(なお余談ですが、一部の方は「論理的なわかりやすさ」のみをディベートでは重視する、言い方を悪くするとロジック・マシーン、ロジック・モンスター、場合によっては口喧嘩のようなイメージを持たれています。ですが、実はそもそも「感情的な分かりやすさ」も同じくらい重要であるという話をすると、よく驚かれます)

【2.プレゼンテーション力を強化するための練習方法】
色々な練習方法が様々な本などでもご紹介されているかと思いますが、即興型ディベート関連ですと、下記のような練習方法があるかと思います。

まず、「論理的な分かりやすさ」の強化に関しては「通常よりも短い時間でのスピーチ練習」をお勧めしています。これは短い時間であればより何を言いたいか強制的に考えさせられ、結論・根拠の明示化につながりやすいというのがあります。

「イントロ」の1分だけに集中するのも非常に効果的です。昔は西日本地域の大会で「イントロ合戦」というような余興イベントも大会中にありました。これはどちらかというとエンターテイメント要素も大きかったとは思うのですが、強豪校では練習の一環として取り入れられていた時期もありました。自分でもできるのでおすすめですし、「ちょっとフィードバック頂戴!」というのも気軽ですね。
ak_debateがコーチする際も、イントロだけ書いていただきそれをwordで送っていただき、その添削をすることもあります。

「常に結論を先出しした完璧なスピーチづくり」というのもとても重要です。
AREAの型(Assertion、Reasoning、Example、Assertion;結論→理由→例→結論)を徹底することは、プレゼンテーションにおけるノウハウの一つです。巷では、別名OREOの型とも呼ばれているようです。(O=Opinion、意見)
ミソは、結論が最初と最後でサンドウィッチされているため分かる、またそれが根拠によって必ず支えられているというところです。
ak_debateはラウンド終了後、反論から立論まですべてAREAを徹底しなおした内容を納得するまでスピーチしなおしていましたし、結論の端的な言い方の言い回しをストックしていました。(英語即興型で言うと、具体的には、2010年の世界大会で優勝しているシドニー大学のクリス・クロークがword efficiencyも高く何度も聞きなおしていました)

また、「結局何を言いたいの?」を3回繰り返すディスカッションも重要です。特に思考がボトムアップ型の人、(積み上げ型の人)というのは、「で、何なの?」を他の人よりも意識的に繰り返す必要があります。(何を隠そう、ak_debateがそうでした)他の人と議論しながらso what?を繰り返していくと言いたいことが洗練されていく傾向にあります。コーチのセッション等でよくやらせていただいています。


次に、「感情的な分かりやすさ」で言いますと、まずドキュメンタリー、映画、小説等のストーリーテリングの技法を応用することはお勧めです。すぐできるのは、言い回しのストックですね。例えば、「痩せすぎているモデルの活動を禁止する」という議題があります。(最近フランスで話題になっていますね)こちらの肯定側の議論を行う際ですが、例えば下記のような記述の迫力があります。

In addition to extreme weight loss, symptoms of anorexia can include fatigue, dizziness and fainting, thinning hair, the absence of menstruation, dry skin and irregular heart rhythms. It can be life-threatening, warns the National Institute of Mental Health.

こちらは、モデルの目の前の健康状態の被害が目の前に浮かんできて、とても説得的だと思います。自分でやる方法としてはこのようにリサーチと組み合わせて表現をストックしていくことですね。

他にも「特定の感情(喜怒哀楽)のみを表現するスピーチ練習」も効果的です。これは昔ウィル・ジョーンズ(過去の世界大会チャンピオン)とリディアン・モーガン(現パブリック・スピーキング講師)が日本に来てレクチャーを行ってくれた時に聞いた話ですが、実際にやってみても効果的でした。「はい、じゃあ悲しくスピーチしよう!」「じゃあ次は楽しく」のように、喜怒哀楽の特定表現だけに特化して、すぐ内容にあわせて感情をこめられるようにする「ストック」づくりが重要です。なお、この際、感情を表現する際は表情であったり、場合によっては入場(ないしスピーチ台への向かい方)まで含めてすべてコントロールする必要があり、まさに「雰囲気を作り出すこと」「場を支配すること」が重要だとされています。
これは、鏡の前で自分でもできることなので、私もあえてやったりしています。特に、ディベートの国際大会になると海外は個々の表現が豊かで所謂「印象操作」で負けてしまうのでアジア大会で負けて悔しかった後はかなり練習していました。

最後に、悪い癖の矯正も大事です。不要な「まあ」「皆さん」などの表現を使用してしまった場合、スピーチをやり直すのが一例です。これもリディアンに教えてもらったのですが例えば海外では「特定の悪い口癖」がある場合それをスピーカーが言った瞬間先生や他の生徒がそれを即座に真似するらしいです。すると「あっ、やってしまった」となり恥ずかしさもあり必死に悪い癖を直しにいく傾向があるとのことで、荒治療ではあるものの一定の効果はあるんだろうなと思っています。

自分で行う場合ですが、私は自分のスピーチの音源を必ずその日のうちに聞き直しているのですが「よく使いすぎている表現」などは聞いて、次のラウンドでは「言わない!」という目標を立てたりしています。例えばLadies and Gentlemen!という表現ですが、これは最初や、本当に聴衆に訴えかけたい時は重要ですがそうでない際の「つなぎ」としてよく使ってしまっていました。なので、途中から一切使わないようにしています。

なお、これら一連のプロセスの際のコツですが「いろいろなバックグラウンドの人からフィードバックをもらう」ことが重要です。是非自大学だけではなく他大学の人も、ということもさることながら、社会人の方の視点や何ならディベートをあまり行っていない人の視点も重要で、場合によってはよりクリティカルだったりします。UTDS(東京大学英語ディベート部)で世界大会の日本人記録をたたき出したチームはよく「社会人練習会」で社会人の方にフィードバックをもらっていたのは有名な話ですね。

いかがでしたでしょうか。ぜひ「論理的な分かりやすさ」「感情的な分かりやすさ」の両方を身に着けてください!