2022年11月8日火曜日

もしかしたらチェアーより難しい?あたふたしないBPジャッジのパネルのやり方入門

徐々にBPの季節に入りますね。
今回は、意外とあんまり記事がなさそうなBPジャッジのパネルについて書いてみます。
WUDCでジャッジブレイクした時のパネルの経験を思い出しながら書いてみているので、少しでも参考になれば幸いです。

【アロケーションが決まったら】
変に自信を失わない:そもそもパネル≒ジャッジブレイクできない、という訳でもありません。確かにブレイクのボーダーにいて、ACチェックが発生することもありますし、チェアーからパネルになっていると「どこかで失敗したのかな」と焦ることもあるかと思います。大会によってポリシーは様々なので気にしすぎないのが大事です (akもガチチェック受けてますね…)
チェアーも所詮一ジャッジという気持ちも持つ:もちろんチェアーは一定ネームバリューや実績がある人がやるケースも多いと思います。とはいえ、失うものもないですし、チェアーが毎回正しいCallをするというわけでもありません。役割が異なるジャッジという風に考えてよいかと思います。

【試合中は】
基本は、普段と同じジャッジをする:パネルだからといって普段と違うことをする必要は一切ありません。4チームの比較を行うことは変わりませんし。また、チェアーの反応を気にしすぎても仕方ないと思います(チェアーがなんでそこ頷くの?とか考えるとドツボにはまります。)
・もしかしたら普段より「基準」と「比較」を端的に言えるように意識する:これは詳細は次の内容になりますが、時間がないので「短く」「端的」に違いが何なのかを意識するのは違いかもしれません。AKの場合は、各チームの比較理由だけをぱっと書いた紙を置いたりしています。
・完璧さを捨てる:極論2チームの位置づけで悩んでいるとかもあると思います。その場合は素直に悩んでいるもありです。現時点ではOGだが、COとこういう点で近い、等と理由があれば大丈夫だと思います

【Initial Callの説明方法は】
普段よりも短く話す:基本的には短く話すことが重要になります(15分のディスカッション、3人だとしても1人5分しか最大でないわけですし)。一言で言うとEngageできていなかった、よりWhy True/Importantの両方を埋めることができていた、コアクラッシュを勝ち切っていた…等色々あると思います。
求められたことだけ話す:最初のRankingの説明だけと言われたらRankingのみ、4チームの中でもOGとOOの比較だけであればそこだけ。POIと一緒ですね。適宜Happy to elaborate further if needed(詳細に関しては別途)のような表現も用いましょう。
・(好みかもですが)どこがClose, Clearかは言ってもいいかも:ここは好みですが、例えばOOとCOはInterchangableのような話もディスカッション上はありがたいとは思います

【Discussionの進め方は】
・基本的にはChairに任せるものの、Chairの気持ちを持ち続ける
:進め方はChairによる色もでるので任せてよいかと思います。他方で、例えばジャッジ全員がかなりランキングが違うときには「3人ともOO>CGなのは合意しているみたいですね」のように合意しているところを言うことであったり、CG-COの議論をしていてなかなか煮詰まってしまった場合「おそらくCGの評価はOGがどこまで言ったかに依存しているため、一度OGとCGを比較しませんか」のような提案をすることなども流れによってはアリかと思います。また、明らかにReasonableに特定のチームが勝つべきところを、他のパネルがごねている時にその「火消し」をお願いされることもあるかと思います
・結局は「基準」と「比較」のメタ認知:だいたい議論がズレる場合(Rankingがズレる場合)は、見ている「基準」(詳細はこちら)がずれているか、「基準」は一緒なものの、その中で具体的にみている内容の「比較」がずれているかのどちらかです。議論の差異がどこに出ているのかを見極め、それを解消していくことに尽きるかと思います。(発展ですが、国際大会では少し古いですが「akが見た世界トップジャッジ陣のトレンドと、日本のディベート観との比較」、「【SIDO/QDO/HKDO分析】アジアのBP大会で活躍するための3つのポイント」なども適宜ご参照ください。去年のWUDCでも大きくこの考え方はずれていなかったので参考になるかと)ここを細かく書くとそれだけで一つの記事になってしまうのですが、「この基準(群)は妥当か?」「その基準の下比較するとどちらのチームが優勢なのか?」の2つを常に意識しましょう
・変えすぎも変えなさすぎも良くない、結局は第三者視点と第二者視点:ランキングを直ぐ変えるのも変えないのもいずれもネガティブに働きえます。結局はジャッジという第三者としてどう思ったのかという視点と、ディベーターを説得できるのかという視点を行き来することに尽きます。ディベーターに説明できない内容はDissentしていいと思いますし、他方で自分が気づいていない「基準」や「比較」の説明に納得がいく場合は「議論の中で確かにXXという基準だけでは大きな差がないと感じたので、YYという基準で差をつけるのも、フェアだと思ったので~」のような説明とセットでランキングを変えて問題ないです。
普段より短く、とはいえすべての発言でValue Addする:しつこいようですが時間はないです。ので短さは大事で、詳細を説明してよいですか?と聞きながら進めましょう。他方でこちらもClosingと同じようにNewがないと意味がないので(迎合しているだけのように見える)、Newを出せるようにするか、Newがない場合は変にその議論で価値だしするのではなく、「まとめる」ことや「ほかの議論で価値を出す」ように徹底するのも重要です。
・話し方のHonestyも大事:Honestyという表現にあえてしていますが、特定のチームができていないことはしっかりとできていないというのも大事ですし、他のPanelやChairと意見が違うのはHonestに言うことはむしろ大事なことも多いです。他方で、HonestyとRudeは違うので、That is a great point / I can understand your point, however...のように受け止めながら話すことも重要です。

【ジャッジのOralの時は】
・ジャッジのBPの気持ちで:ジャッジによってはPanelに少し補足の機会を求めてくれたりします。その時にNewが言えるといいですね
徹底的に盗む:よかったところはどんどんRFDから盗みましょう。AKも格好いいジャッジ表現はパクり続けました。特に国際大会では英語の発音,表現なども同じ土俵に上がるために必要だとは思います。AKは結構色々なひとのRFDがネットに広がっていたのも含め読みました

少しでも参考になれば!

2022年9月11日日曜日

久しぶりにジャッジするときのポイント4つ

お久しぶりです。気づいたらずっと更新していませんでした。
久しぶりということで、「久しぶりにジャッジするときのポイント」というのを書いてみたいと思います。akも社会人になって、前のように「試合勘」や「トレンド」に追い付いていないというときに結構困りました。そんな中、レベルの高い大会という輪にかけた無謀な挑戦をしてしまったものの、一昨年はWSDC、去年はWUDCでブレイクできたのでその時のLessons Learnedを書いてみようと思います。

したがって、就活なのか仕事なのか、そのほかの人生の優先順位は様々あるかと思いますが、ふと、ディベートの面白さなのか後輩から頼まれたのか、いろいろなるかと思いますが戻ってきたいなぁと思ったり、もしくは少し「チャレンジ」をしないといけないと思ったら読んでみてください。

1.ジャッジの「枝葉」ではなく、「幹」に戻る;捨てることを厭わない
ジャッジは「(一定の合理性を仮定した)第三者として、勝敗の理由を腹落ちできる形で伝える」ことがその役割です。もちろん、ジャッジのConstructive Feedback(建設的なフィードバック)等教育的な役割や、試合のフォーマットへの対応(BPだと4チームの比較になる)、適宜言語の壁の突破等、そもそもとして、気になるところは多々あると思います。

特に「久しぶり」にジャッジする場合は最近のモーション、ジャッジトレンド、ディベートジャーゴン(Symmetrical、Deltaとか…)等色々足元で気になることが多々あるのは当然の反応かと思います。

それを一つ一つすべてにキャッチアップしていくことは可能な限り行ったほうがそれはもちろん良いに越したことはないですが、ずっと現役でディベートしている人たちに比べるとどうしても期間は開いており、その時間を効率的にキャッチアップしようとしても、一定の時間を要することは当たり前かと。したがって、優先順位をつけないといけない局面ではやはり「幹」なのだと思います。

したがって、「良い教育的なフィードバック」などを一定あえて捨てる、最近のディベート用語がわからなくてもまずは気にしない(もちろんメモってどこかで聞くとかはアリかと)、一定馴染みがありそうな議題での音源から戻って、まずは「昔のディベートの勘」を取り戻すことが重要かと思います。ちょっと悲しい気持ちにはもちろんなりますが仕方ないいので、いい意味であきらめることを覚えました。

2.今こそ「加点式」に;特に新しい強みから考える
とはいえ、久しぶりに戻るとやはりできないことに目が向くかと思います。特に競技ディベートは一定ストイックなスポーツ的な局面があることは否めないので。他方で、久しぶりにジャッジしているのですから、ある種「少しずつできてきた」自分をほめる形が大事かと思います。(1年生の時に、AREAが話せるようになった、などの加点式の時代があったかと、そのイメージです。)

また、意外とディベートから離れていた期間に、新しい強みを獲得しているケースも十二分にあり得ます。就活や、場合によっては新社会人になった後では特定の業界に詳しくなっていることや、そもそも企業活動に触れていることから、Economy系のモーションが意外とできるようになっているかもしれません。同じような構図は院試対策でもあるかもしれません。AKも国際法などは院試対策で意外と学べてIRの力があがったりしたこともありました。司法試験やロースクール等の対策をしていた先輩も、意外と「ロジカルに考える」癖が強くなったというケースもあるといいます。また、話し方という面でも意外と「枕詞」をつけたり、合意形成を重視される環境下に身を置くケースもあるため(グループディスカッション対策、インターン等?)それが負けたディベーターの説得の際に活きてくるかもしれません。

そのような強みはもしかしたらあなたのジャッジの「強み」にもなりえるかもしれません。ぜひいいことに目を向けていただければと思います。

3.「何ができていないのか」を徹底的に細かく考え、経験に頼らない新たなやり方も模索
「久しぶり」な時は、ジャッジをする数もきっと限られていると思いますし、勘や勢いでできたところができなくなってきていることもよくあるかと思います。こういう時こそ、自分がなんでジャッジができていないのかを徹底的に細かく考える良い機会でもあるかと思います。

そのためには、「何が原因でいいジャッジができていないのか」、「それはディベートから離れていた中でなぜできなくなったのか」をセットで細かく考えることが有益になります。

例えばですがAKの場合は意外と「情報処理能力」が落ちていたなと思ったことがありました。特に最近Rapid Speech(速すぎるスピーチ)を差別化戦略として採用しているディベーターもいるため、なおさら困ることもあるかと思います。冷静に、7分前後のスピーチを6-8回聞くというのは、1時間弱の内容を頭の中で一気に処理しきることとイコールであり、なかなかそのような機会は日常生活ではあまりないのかもしれません。

というのは、PMくらいのスピーチなら追えますし、LOくらいまでなら追えるものの、DPMくらいからClashが増えてくるとなかなか追えなくなってしまったりしたからです。

こればっかりは、おそらくディベート現役の時は議論のパターン認識もできていた(こういう議論ではこういうのが出てくるだろうとわかる)ため議論がなんとなく初見でなく理解ができる、意識的にミクロとマクロを行き来しながら今どっちが勝っているかがわかる・・・などがあったのですが、それができなくなっていたからかと思います。

そうなると戦い方を変えるしかありません。おとなしく、議題が出たら一定私はプレパしたりどういう議論が出そうかぱっとリサーチすることにして経験に基づいたパターン認識を補い、明確に紙を数枚準備して、ディベートの中でも重要な部分だけ取り出した「マクロ」な紙を準備するようになりました。(現役の時も一部やっていましたが、あまりやらないことのほうが多かったです)これで強制的にミクロとマクロを行き来し、手元におくことでブランクを補いにいったのです。

これはあくまで私の例ですが、結局「ディベーターの話を理解できていないのか?」「理解はしているものの情報処理ができないのか(論点がわからないのか、論点間の重みづけがつけられないのか、各論点の優劣がつけられないのか?)」「すべてわかっているがうまく伝えられないのか?」等、どこに問題があるのか、なんでなのかと徹底的に考えるしかないということかと思います。

4.「効率」に徹底的にこだわる
とはいえ「久しぶり」の際は時間がないかと思います。そうなると、もう効率をあげていくしかありません。いろいろな方法があるかと思いますが、AKがWUDC、WSDC前にやったことを列挙してみますので、もしよろしければぜひ。

・ディベートの試合を倍速(もしくは1.5倍)で聞いてジャッジする
・一番よくまとまってそう+最新のジャッジレクチャーを聞く
Korea WUDCのはかなり役立ちました。特にEntingはさすがでした。)
・ジャッジの試合+実際のOA(Oral Adj)がセットな内容を探して聞く
(上記とかですし、YouTubeでも意外とぐぐると出てきたりします&昔の音源を拾い出しました。Adj Testとかもいいですね。)
・大会ではひたすらにパクって、次の試合で実践する
(恰好良い表現などは全部メモりましたし、フィードバックの仕方のパターンとかもなんとなく毎回理解しにいきました。WSDCは特にジャッジが全員フィードバックするので超絶チャンスでした)
・うまいジャッジと同じ部屋になったら臆せずにフィードバックを聞く
・過去に自分が褒められたORあまりうまくいかなかったジャッジをできるだけ全部思い出す
・OAがスムーズに出てくるように英語で話す(無駄にスピ練とかしました)
・ディベートのパフォーマンスが最大化する各種ルーティーンは全部戻す(寝る、甘いもの食べる、好きな音楽を合間に聞く…)

いかがでしたでしょうか。どれも全部自分自身が苦労した話なので、ちょっとでもお役に立てていれば何よりです!