2020年9月22日火曜日

WSDC 2020で感じた世界の高校生のポイント

久しぶりの投稿です。

この前WSDC 2020にジャッジとして参加しました。大学生の世界大会であるWUDC以上にジャッジプールの質が高く、あっぷあっぷでした。なんとかSFまでジャッジしてきました。

その中で感じた世界の強豪校の特徴をいくつか箇条書きで書きます。

・フィードバックに貪欲
WSDCはただでさえラウンド後にチームごとに、全ジャッジがコメントをします。もちろんタイムテーブルに余裕があるようにセットされてはいるものの、3人別々の観点からジャッジが入るというだけでも相当大きいです。また、ACから"transferrable skills"に関してフィードバックするように、というお達しもあることから可能な限り一つのラウンドだけではなく、将来も使えるようなフィードバックも求められます。
強豪校であればあるほど、個人のフィードバックに関してもすごく貪欲でした。「すごく良かったよ」と言っても「さらに良くするため、さらにクリアに勝つためにはどうすればいいでしょうか?」という質問が来るのは印象的でした。
また、とりあえず「全部聞く」というのも印象的でした。ジャッジの中では当然Splitもあるので取り方がすごく異なることもあっても、顔に出さず全部メモするのはすごいなと。
日本国内でも、大会では難しいかもしれませんが練習会では特にこういう試合方式が進むといいなと思いました。

・リーダーで決めに来る
今年のコーチ陣がそういうスタイルが多いからなのかもしれないのと、調査型のディベートは特に時間がある(+即興型でも1時間のプレパ時間がある)ことも影響していると思いますが、やっぱりリーダーの出力がいいですね。具体例もそうですし、相手の話のPreemptionもしっかり行っている印象です。まさに80点スピーチ超えのような印象でした。
(ブログの80点超えシリーズはこちらから
改めて80点スピーチづくりのための練習などは有効だと思いました。

・2nd以降は"Why Likely"でクラッシュを勝ちきりに来る
Why likelyで勝ち切るチームが上に行く印象がありました。要は例えばCharacterizationがどちらもありえるとか、シナリオ(良くなるのか悪くなるのかなど)もどちらもあり得るという時に、なぜこちらのほうがより起きやすいのか、という話で決めに来る印象が特に接戦を制したチームではよくありました。
試合では当たり前ですが、早々のことがない限りすぐTieにはならない(こちらのブログ参照)こともあり、しっかり分析の深さでとっている印象が強かったです。この前ToCでシャーミラに言われたフィードバックですが"押し込む"反論が特に日本人のウィークポイントなのかもしれませんのでそこはhorizontalで練習したほうがいいのかもです。
日本国内での対処法としても、ジャッジがそこまで踏み込み続けること(また、ずっと言われていることですが、安易にtieに逃げないこと)は一つポイントかもしれません。

・FailureはExplicitに指摘する
これはやりすぎでは?というくらいに例えば相手のmodelがよくない、コントラしている、個々のメカニズムが無い、というのは(特にアジアの強豪からは)散見されました。ジャッジとしてもそういう勝敗の基準があると入れやすいんだなと。
ただ一方で、「やりすぎ」なチームも散見され、「もうわかったからいいよ」というフィードバックをたくさんもらっているチームもありました。が、日本からすると幾つか引き出しをもって活用するのは勝ちに繋がりそうですね。

・Strategicなチームが多い
WSDCの特徴としてstrategyの項目があることも影響していますが、戦略面でどこを守り切ってどこで勝つかというのが多いような気がしました。一番強い話はsqueezeするという前提ではありますが。ジャッジからのフィードバックも「ここがもっと戦略上重要なのだから反論したほうがいい」のようなフィードバックが良く見られました。もともとシンガポール等はHorizontalな練習が多い特徴がありますが、もっともっとHorizontalになり切るのが重要かもしれません





2020年4月18日土曜日

"SMART"にディベートの目標を立ててみよう!

全国で緊急事態宣言が発令されてしまいましたが、皆さんいかがお過ごしでしょうか?
皆さんや、皆さんにとって重要な人たちの健康を最優先で行動してくださいね。
多くのディベートの大会がキャンセルになってしまい、私も残念です…。オンライン化等色々な試行錯誤の中で新歓や練習も続いていると聞いています。

今日は、1人でもできることとして目標設定に関して書きたいと思います。
なんとなく、ディベートが上手くなりたい!

突然ですが、"SMART"の原則を御存じでしょうか?目標設定の際に意識したほうが良いポイントの頭文字をとったものとなります。
グロービスのこちらのページによると下記のように定義されています。

◆要素1:Specific(具体的に)
誰が読んでもわかる、明確で具体的な表現や言葉で書き表す

◆要素2:Measurable(測定可能な)
目標の達成度合いが本人にも上司にも判断できるよう、その内容を定量化して表す

◆要素3:Achievable(達成可能な)
希望や願望ではなく、その目標が達成可能な現実的内容かどうかを確認する

◆要素4:Related(経営目標に関連した)
設定した目標が職務記述書に基づくものであるかどうか。と同時に自分が属する部署の目標、さらには会社の目標に関連する内容になっているかどうかを確認する

◆要素5:Time-bound(時間制約がある)
いつまでに目標を達成するか、その期限を設定する

ビジネスで使われることも多いSMARTですが、私はディベートでも当てはまると思います。私になりに解釈すると、こうなります

◆要素1:Specific(具体的に)
ディベートのどの能力を身に着けるのか、「なぜ?」を最低3回は繰り返して明示化する。例えば、インプットとしての知識×プロセスとしての思考力×アウトプットとしての英語プレゼン力だとすると、その中でも何の知識?どういう思考力?どういうプレゼン力?となるかと思います。ここを深堀りする際には、例えば目標としているスピーチ、スピーカーなどがあるとより“解像度が高まる"と思います
◆要素2:Measurable(測定可能な)
頑張って"数字"にする。それは例えば最終的な"アウトカム(結果)"であるブレイク、スピーカースコア等も良いかと思いますが、それだけではなく"プロセス"(行為)も重要だと思います。知識をつけるのであれば何冊本を読みますか?音源ならいくつ、何時間?英語力だといくつの単語を覚えますか?…等。 
◆要素3:Achievable(達成可能な)
"2重の目標"にすることが重要だと思います。1つは本当に理想の"優勝"のようなものかもしれませんが、1つは今から少しストレッチしたらできるもの。例えばバブルラウンドで負けてしまう傾向にある場合は、それを一つ超えたブレイクになるかもしれません。本等のプロセスであれば、1日にどれくらいやらないといけないか?と割り戻してみるのも重要です(1か月で100冊、となると1日に3冊以上読まないといけませんが、授業やバイト等もあるかと思います。実現可能ですか?)
◆要素4:Related(目標に関連した)
これは、まずは一義的には大きな「ブレイク」のような目標に紐づくようなものなのか、と解釈しています。(すでに強い部分を伸ばしていても関係ない、評価されない点を伸ばしても仕方ない、等)また、最終的に自分がディベートで何を得たいのか、と言う目標とフィットしているかも重要になると思います。
◆要素5:Time-bound(時間制約がある)
それぞれの目標は短期・中期・長期等があるかと思います。お勧めは両方持つことですが、一つ良いのは大会、引退等をマイルストンにすることです。「ジェミニまでにXXする」のような。そこから「では、4月はこういう目標になる」のようになりますね。

せっかくのタイミングですので、SMARTで目標を立てているか、一度見直してみませんか?

2020年3月20日金曜日

家で1人でもできるAsian Style(3 on 3)の練習方法 "2分 Veto練"

コロナウイルスということで、以前よりも練習がしづらくなってきている状態だと思います。

まず、ラウンド以外での練習方法に関してはIndexとして「上達方法(ラウンド外)」とまとめています。色々な記事が纏まっているので、ぜひ読んでください。(ダイレクトな戦線)

今回紹介するのは、Vetoを2分で決める練習です。
(3 on 3でも、HPDUやWSDCのように、3 motionsではなく、1 motion制の大会もありますが、それでも役にたつ練習方法だと思いますのでぜひ)
昔、akが粛々とやっていたりもしました。

【どういう人がやると良いか?】
・Vetoを決めるのに5分くらいかかってしまっている人
・特にHorizontal思考が弱いと思う人
・ぱっとArgumentが出てこないという人
・特に若手(あまり多くのディベートの"パターン認識"をしていない人)

【練習方法】
(チームでやることを想定。個人の場合は、全部下記を1人でやるイメージ)
3 motionsはだいたい5分くらいでVetoを決める、ということが大会では一般的かもしれませんが、これはぜひ、普段は「2分」を目指してやってみましょう。
(海外のディベーターはなんなら2分以前にやってくることもありますね。)
具体的な流れは下記のとおりです。

(1)ストップウォッチを準備し、サイド、モーションセットを選び
UTDS等でAsian Styleのモーションを選ぶと良いと思います。もし、ある程度やりつくしている場合は、適当に2 on 2, 2 on 2 on 2 on 2, (NA/BP等)で3つ選ぶ形でも良いと思います。

(2) 2分で絶対に終わらせる
2分以上伸ばすのはだめです。絶対に2分で終わらせましょう

(3) その後、5分で選ばなかった方のサイド(GovならOpp、OppならGov)でVetoを考える

(4) その後、5分で、最初のVetoの反省に関して議論
具体的には、(a) Vetoはあっていたか?(相手サイドの話も踏まえて良かったか?) (b) (あっていた、あっていない場合どちらでも)これ以上早くするにはどうすれば良かったか? (c)Vetoをうまく決められなかった原因は何か?(各人の考え方?ディスカッション?そもそもVetoの基準がチームとしてなかった?)(d)次はどうすれば良いか?の4点をディスカッション

(5) 時間があれば、先輩や他の人にもVeto及びその理由を聞いてみて、Vetoの仕方に関してアップデートしてみる

(6) 全てのリストアップを見て、傾向が無いか考え、打ち手を考える
例えば、特定のテーマ(宗教等?)のモーションだと遅くなってしまう、というのが無いでしょうか?もしくは、モーションのHardさ/Softさではないでしょうか?

(7) その一つとして、"対立軸"を意識することは有効かも?
その結果としての打ち手は、例えば"対立軸"をしっかりと抑えきれていないHorizontal思考に起因しているかもしれません。
その場合、即興型ディベート初心者へのおすすめの「最初の詰め込み」 ~もし初大会まで5日間しかないとしたら何をするか~の記事にも書いてありますが、大きな対立軸をMonashやJPDU資料等で抑えるのも良いかと思います。

例えば、ある世界大会のGrand Finalist、EUDCのChampionはディベートを結局何種類かにパターン分けしているようです。オーストラリアのディベーターもこういう風に対立軸を意識している傾向があるように気がしています。

以上となります。ぜひ、たくさんVeto練をしてみてください。

2020年3月14日土曜日

「オンラインディベート」か、「オフラインディベート」か?の議論は本質ではないよね?

コロナウイルスの対策の一環として、オンラインディベートが盛んになり始めました。オンラインでディベートをする、と言うこと自体は今までも多く存在しておりましたが、大会としてオンラインディベートが始まったのは一つ大きな一歩だと思っています。

新しい技術/試みが立ち上がる時は、賛否含め色々な議論がされるかと思います。私は、一つポジションとしては「オンラインディベート、オフラインディベートのどっちがいいのか?」のような議論は本質的では無いと思っており、正しい問いは「どのように、オンライン/オフラインのディベートを活用していくべきか?」だと思っています。

私は特に先日、オンラインでの大会(Asian Online Debating Championship:以下AODC)にジャッジとして参加したり、過去にはオンラインツールを活用して部内大会をジャッジしたり、練習では試合を行ったりもしてきました。参加者の規模や使用したツールは毎回違いますが、私の意見としては下記のとおりです。

・オンラインディベートは、地理的/金銭的格差の解消につながるポテンシャルがある
私はディベート格差を0にしたい、というパッションも持っておりますが、その一つに資するものだと思いました。地方の学校ですと、どうしても関東圏の練習リソースにアクセスできないこともありますし、金銭的な影響から国内遠征/海外遠征にも限界もあります。
例えばAODCでは韓国とシンガポールの高校生のラウンドを家からジャッジしましたが、こういうのが増えると良いな、と思いました。また、過去には九州大学の普段の練習試合を家からジャッジすることもでき、楽しかったなと思いました。

・シンプルにオンラインディベートは柔軟性や利便性が高い
AODCでは朝1からのラウンドでしたが、普段よりも長く家で睡眠時間を確保し、朝ご飯をしっかり食べてからジャッジし、昼ごはんもさっと普段のように食べたりすることができました。仕事柄リモートワークも多いおかげか、あまりストレスは無かったです。
移動時間がないことから、次の予定を入れる上でも柔軟に対応できました。

・一方で、悩ましいなと思うことはあいにくある
(a) 【映像は欲しい!】使用するツールによりますが、映像が無いと少し辛いなと思ったり、違和感を持つ部分はありました。映像がある場合ですといいのですが、無い場合ですと、ジャッジをしている際にNon-verbal languages(つまり、ボディランゲージ等)を見ることができないので、違和感を覚える(ないしは、そこを頑張っている人が評価されない?)のは正直ありました。また、Reason for Decisionを説明したり、Feedbackをする際はかなり相手の顔を見ながら臨機応変に説明のトーン、速さ、やり方等を変えられるのですがそれができないのはすこし苦労しました。(特に初めて会う人は…)
(b) 【接続環境は怖い】私の場合は過去の取り組みでは大丈夫でしたが、一部回線が聞きづらくなった時などは(練習の時はまたもう一回お願い、とかしやすいですが)ちょっとめちゃめちゃ聞くことに集中しました。一部のツールや回線状況に応じては、ラグも少し発生したりするらしいのでそれはリアルの良さを少し感じました。
(c) 【初めて使うツールはちょっと不便】普段からよく使っているツールであれば、使い方もわかりやすくすぐできるのですが、初めて使うツールである場合は少し操作がうまくいかず、結構運営の人にご迷惑をおかけすることになるなと思いました。これは、念のため断っておくとどのようなツールでも共通です。
(d) 【不公平感への配慮は必要】たとえばですが、AODCでは結局あるチームは1部屋に集まってラウンドしていたようです。(全員がリモートだと、チャットがしづらい等あるため)それは全員をある種同じ状態にしたほうがいいのかもな、とかは思いました。また、あまり即興型のディベートに関しては日本国内では事例を見たことがありませんし、オンラインとの差分は分かりませんが、より不正行為をしやすいみたいなものはあるのかもしれず(プレパ中に、コーチと話すとか?)懸念の声はあるようです。

・"悩ましさ"の解消はコミュニティとしての工夫/使い分けに依存。立ち上げ期は試行錯誤が続く可能性はある
強調しておきたいのは、別に上記の議論は「じゃあオンラインをやめよう、やっぱアナログだよね」と言う話がメッセージではありません。もしかしたら「オンラインがいいのか、オフラインがいいのか?」というような極端な議論になってしまうかもしれず、それはコミュニティとして望ましい方向性ではないと思っています。あくまで「どうやって活用するの?」という問いが良いと思っています。

例えばですが、(b)の接続環境は、事前のテスト等を通じて可能な限り接続ができるようにしておくことや、念のためPC、携帯の両方からアクセスできるようにすることかもしれません。また、万が一接続が切れてしまった際の事後策の合意だと思います。例えば練習などであれば、「再度やり直し」かもしれませんし、大会であれば「ディベーターであればディベーターの責任」と(割り切って行う)ことも一案かもしれません。

(c)に関しても、早めに利用者が使うということであったり、丁寧なマニュアルの準備等にもあるかもしれません。また、コミに新しい役職としてTechnology Officerかもしれませんが、技術面に関していつでも質問できる、ホットラインが重要になるかもしれません。(1人では全部に対応できないので、もしかしたらLINEグループ、Facebookグループ等のように、困ったらここ、みたいな風にするのかもしれません。)

(a)や(d)はより難しい問題ですが、(a)は、まずは顔が見えるツールを使うということかもしれませんし、すでにお互い顔見知りと言う関係であればまずは使おうよ、と言う話かもしれませんし、あとはあえて「見えないことが良い」(≒むしろ人のバイアスが減る?)ということに注目する、等かもしれません。(d)はルールの準備等かもしれませんね。

・どんな方法も完璧ではない。あくまで補完関係で、みんなで「どう使うのか」議論しよう
再度強調したいですが、オンライン/オフラインはそれぞれの良さがあります。最初に書いたように、アクセシビリティや柔軟性のメリットは、オフラインの大会よりも勝っているかもしれません。一方で、諸々の懸念もあったりします。ディベートで言う"not mutually exclusive"じゃないですが、オフラインでも起きる問題じゃん、のような話もあると思います。(例えば、不正行為等。)

やはりここからはコミュニティ全体で議論していくタイミングになると思います。なぜなら、例えば現在コロナ対策で必死に大会をオンラインで開くことになると思います。その中で何か失敗や問題があった際に、例えば、それが安易なコミ批判になることは避ける必要があると思います。(コミだって分からないこと、予想できないこともあると思いますし。)また、メリットがある中で安易に「これだからオフラインだ!」という風潮になり、オンラインにより恩恵を受けられる芽をつむことも良くないと思っています。どのような技術/新しいものにもつきものですが(パソコン/スマホ全般、Uber/Airbnbのようなたらしいビジネス等)、結局は使い方次第だと思います。

・じゃあ、どうするの?

オンラインでディベートに参加することになったら:
早い段階で普段よりも丁寧にオンラインツールを試したりしましょう。Online Tabと一緒の考え方かもしれません。他の人の迷惑を最小化したいですもんね。
また、何かあっても「批判」ではなく「建設的な議論」を意識しましょう。コミはリスクを負ってくれているというのはあると思いますし。

オンラインの大会/練習を運営することになったら:
どのツールを使うのか、どのようなルールを設けるのか、どのように懸念に対応すべきか、というのは過去の参加者/運営者、テクノロジーに詳しい人等も含めて考えつつ、もしかしたらコミュニティからのフィードバックも貰った方がいいかもしれません。
まずはとりあえずは慣れているツール、ということもあるかもしれません。
また、可能な限り使った際の工夫や試行錯誤の内容は、ぜひ可能な範囲でいいので発信してくれると嬉しいです!

どちらにしろ、コミュニティの一員として:
正直ケースバイケースというのは本当にあると思います。オンラインの懸念点は、練習なら普段からどんどん使うことを否定しきらないとも思いますし。一方で、ちょっと慣れていない、こういう懸念が怖い、のような議論もとても重要だと思います。いかにステップを踏んでいくか(まずはやりたい人が練習で使う、等)、かもしれませんしね。難しい議論、意思決定が続くかと思いますし、解は現時点で絶対はないですし、関係者の"腹落ち"が必要だと思いますが、少しずつ前進できればいいなと思います。

こんな感じです。きっと数か月、もしくは1-2年もしたらこんな議論は「化石」になっているのだと思いますが、移行期であるからこそ、ぜひ建設的なディベートができればと思います。


2020年3月4日水曜日

「新歓を成功させたい!」という運営の方に向けたメッセージと昔実際にやったこと

もう3月ですね。コロナウイルスの影響もあり、新歓の見通しが見えづらくなってきているのはつらいところですね…。

新歓に関して書いたのがもはや8年前のこの記事なので、少し手を加えてみようと思います。

① まずは理想の状態を、可能な限り"解像度高く"妄想しよう!
部によって目標は様々かと思います。発足年数、地域、今いる在籍人数等によって大きく変わってくるかと思います。ただ、その中でも一定の部員数を確保したいだとか(≒辞めないで欲しい)、強くなって欲しいだとか、ディベートと言う競技を超えて仲良くなって欲しい、のようなものが色々あるかと。

まずは、自由に妄想してみてください。こういう部になったらいいな、というのを。
その際に思考を走らせるために、国内でも海外でも有名なサークルや部を調べてみてもいいかもしれません。もしくは、ディベート以外のサークルを参考にしてみてもいいかもしれません。場合によっては、過去のディベート部の話を先輩に聞いてみてもいいかもしれません。

それを思い浮かべながら、できるだけ4月にどんな感じだといいかな、夏休みは?紅葉や梅子、Noviceの時期は?冬は?そして次の春は?…と想像してみてください。

その時に、具体的に「何人」人がいるかとか、「どういう人」がいるかとか、「どういう実績を残しているか」、だとか「どういう感情を抱いていて欲しいか」等、まるでドラマのように事細かに考えてみてください。

例えば、私がむかーし部長をやっていた時は、"黄金時代"を築く、と言うのが目標でした。当時は、JPDU Tournamentでブレイクしていないと「ジャッジ権」と言って大会でジャッジ提供の資格が無い時代でした。(なので、ブレイクしている先輩がいない部活は、すごく上の先輩に頼んだりとか、他大学の方に頼んだりしていました)なのでこれが無いとそもそも参加資格が増えない、ということで当時の部員6人がまず早い段階でディベーターとしてブレイクしないといけない、というのがありました。そうなると、春Tとかはできれば先輩たちと組みたい。だけど、それだけだと足を引っ張ってしまってブレイクできないかもしれないから、どういう練習法をとろうか。まずは先輩から学ぶことを主目的に、それまでの大会でも可能な限り自分たちよりうまい人と組んで練習しよう、ないし春Tでは先輩とのプレパ練を増やそう、等と言う風に考えました。

また、部員の数は「できればBPが自分たちの大学でできるくらい」にしたい、と思いました。というのも、最大で6人、だと同期が全員集まってもフルメンバーでのBPができません。BPシーズンである冬には10人くらい部に入っていて欲しいなと。そのためには、おそらく色々な理由で辞めていってしまうこともあるから、可能な限り新歓から人を増やしたほうがいい。例えば1/2になるとしても20人、1/4だとすると40人くらい最初の方の練習会には来て欲しいなと。

まずは、こんな風に「具体的に妄想」し、「逆算」していっているというのがお分かりいただけたかなと思います。

② その理想の状態に対するチャレンジを、失敗例も含めて考える

次に大事なのは、じゃあ一気に現実に引き戻しながらどのようにそれを実現するか、と考え始めることです。向き合うのがつらい話かもしれませんが、他の人がやめていってしまった理由が聞ければそれを、また自分たちが感じていて嫌だったことなどを考えてみてください。そしてそれはなんで、そう感じたのか考えてみるのです。

例えば、お恥ずかしい話ですが私の代は夏休みにほとんど練習に行きませんでした。夏休みって色々やるものだよね、となんとなく思っていて(それはそれで合っていると思いますが 笑)本当にほとんど練習に行きませんでした。今みたいにADIですとか、銀杏杯等もなかったのも影響しているかもしれませんし、秋Tは2年生以上が出るものということもあったかもしれません。とはいえ帰属意識は一定あった私は学期中になると普通に復帰やたくさん練習はするようになったのですが、残った部員もモチベーションダウンであったり、フェードアウトしてしまった人もいました。

冷静に、やっぱり2ヵ月間のブランクがあると戻ってきづらいですよね。その間に他の楽しいことにはまっていたらそっちにも流れますし。

また、失敗以外も当然「嬉しかったこと」も色々考えてみるといいと思います。例えば私が入部を決めたのは、先輩のフィードバックがすごく良かったからです。褒めてくれましたし、改善点のためのアドバイスがめちゃくちゃたくさん具体的だった。ディベートが終わった後「ああ、こうすれば勝てるんだな…」まですごくよく丁寧にフィードバックしてくれたと。また、海外生活が長かった私にとっては英語力が高い人がいるかがとても大事でした。(英語力を維持したかったので)。帰国生で性格もいい同期がおり、その人のスピーチに感動したというのも部に入ろうと思ったきっかけでした。

また、周りに聞いてみるとモデルディベートの影響は大きかったようです。ディベートって正直よく分からない、けど英語で7分間難しい話もできているの格好いい、という憧れをもってディベートを始めてくれる層が多かったようです。

③受け継ぐこと、変えることを考える。変化を恐れない。

ここまで考えると、理想の状態と、そのチャレンジも明確になっているかと思います。ここまで考えると、今年もやったほうがいいこと、やめたほうがいいこと、新しくやったほうがいいこと等が出てくるかと思います。

例えば、フィードバックの丁寧さや、新歓時のモデルディベート等は残すことにしました。これらはすごく重要だと思ったので。なお、過去の歴代部長が残してくれた引き継ぎ書、エジュケ資料はすごく読み込みました。また、練習の時のアロケーションで、帰国生同士で当たるようにする、等の工夫もした気がします。

やめたことは正直akの記憶であまり覚えていません…

ですが、新しくやったことは色々あったなと思います。分かりやすい例でいうと夏休みのI杯という1年生大会をはじめて開催しました。(今のようにありがたいことに多くの大学の方に参加いただけるような規模になり、自大学で開催できるようになったのは、ひとえに次の代以降の功労です。)この理由というのは、多くの人が夏休みにフェードアウトしてしまうということ。で、逆に今の6人が部に残ろうと思ったきっかけは紅葉杯への参加でした。そこで遠征してお好み焼きを食べるなどして仲良くなり、かつハラハラドキドキのブレイクアナウンスメントも含めた緊張感。大会中に多くの人と会えることも醍醐味でした。最終的に、ありがたいことに全チームブレイクということがあり、「ディベート楽しい!」となったのです。なので、ブレイク制のある大会ということに拘りました。

部員を引き留めたい、と言う意味がとても強かったので、確か8月開催でした。7月だと早すぎる、9月だと遅すぎる、と思いました。ちょうど練習するタイミングにも重なるかな、と。

同期でパワポが得意な人がいたのでその同期が格好いいブレイクアナウンスメントやモーション用のスライドを準備してくれました。また、フィードバックの質が大事だと思い、完全に招待ジャッジ制をとりました(当時はそういう概念があまり無かったと思います。)

大会に限らず、他にも色々な工夫を同期がやってくれました。新歓担当のあらゆるビラ、メッセージ等もそうですし、新入生のフォローであったり、合宿の企画だったり、色々同期で乗り越えた覚えがあります。自大学の先輩は、イベントはほぼ全部参加してくれました。もちろん、他大学の同期/先輩にもかなりジャッジだったりで練習に来てもらいました。これが功を奏したのかどうかわかりませんが、スクラム戦で、部員の数は目標の数に達し、1年生だけでBPのラウンドもできるようになりました。


なんか、総じてノスタルジーに基づいた、個人的にはエモいものの、下手したら誰にも刺さらないかもしれない内容になってしまいました。少しでも参考になれば幸いです。

2020年2月2日日曜日

レベルの高いラウンドをジャッジしないといけなくなった時は 7つのアドバイス

ジャッジをするのであれば、せっかくなのでジャッジブレイクも目指したいですし、何よりもそのラウンドでいいRFD(Reason for Decision)、フィードバックをして「ジャッジされてよかった」と思われたいですよね。

私も自分のスピーチよりもレベルの高いラウンドにジャッジとして入る際は緊張しながら入ります。ディベーターだけではなく、ジャッジにも見られている感覚も含めてあんまり好きではないです…。

では、そういう時はどうすればいいのでしょうか?7つのアドバイスを送りますので参考にしてみてください!

【短期的(大会でジャッジすることになっちゃった、という時)】
①意外となんとかなるはず、という気持ちで臨む
これって意外とあります。「オーソリ」とかって呼ばれる人も別に突拍子もないようなアーギュメントばかり言うわけではないです。それに、意外と失敗もします。極端な話「同じ人間だし」くらいの気持ちで向かっていくのは大事です。

②試合で出そうなアーギュメント、クラッシュを予想する(+人に聞く)
これは賛否両論あるのですが(変なバイアスがかかる、という場合もあるので)、個人的には推奨派です。どういう主張が来るのかなぁというのは、自分の周りの人に聞く、場合によってはACに雑談を仕掛けに行く、必要に応じてグーグルで検索する、等もいけると思います。また、「似たようなモーションがないかなぁ」と考えるのは大事です。(オーストラリアのディベーターは特にこういったパターン認識が上手なイメージです。)

③ラウンド中は、普段よりも「今ならどこにVoteするか?」と頻繁に問いかける
よく色々な人が、スピーカーごとにどっちが勝っているのか考える、のように言うと思います。これの背後にあるのは「正しく聞く(インプット)」と、「その結果どっちが勝っているのか考える(プロセス)」、「なんで勝っているのかと説明する(アウトプット)」の3つがぐるぐる行ったり来たりするほうが効率的!というところです。「ラウンドが終わってから考えよう」だと慌てふためくことになるので、普段よりも、PM、LOというスピーカー単位であったり、できればClash単位(例Free choice vs Paternalismの観点で今どっちが勝っている?」で、考えるのが大事です

④難しすぎて答えが出ないときは、いったん仮の答えを出して、後に進む
勿論本当は全部を正確に理解したいところですが、よく分からないArgument、Refutation等あると思います。ここでのポイントは、「とりあえず先に進む」ことです。意外とそれが重要ではない話かもしれないので、「今の私にはこれが限界!とりあえず分からなかったのは分からなかったとして置いておく!」って大事です

【中長期的(今後レベルの高いラウンドをみるために)】
⑤ラウンドが終わったら、ジャッジやディベーターからフィードバックをもらう
意外と色々教えてくれます。勉強中何で教えてください…とぜひ話しかけに行きましょう!

⑥ゆっくりでもいいのでトップラウンドを聞いてみる
例えばPMをメモを取りながらきく。そこで止めて、間に時間を置いて考える。そしてLOを聞く、止める、考える、等でもいいです。昔JPDUでこういう練習会もありました。先輩とかとやってみてもいいかもです。PM終わったけどもその実況と解説!みたいな感じで、このArgumentはこれくらい良かったねー、こういうところは弱そう、とかとある種「頭の中の思考」を共有する感じです

⑦結局、どこで躓いているのか明確にする
さっきの、「正しく聞く(インプット)」と、「その結果どっちが勝っているのか考える(プロセス)」、「なんで勝っているのかと説明する(アウトプット)」でいうとどこで躓いているのか明確にするのがいいです。その結果、色々な対策が出てきます。
例えば、
・インプットの課題:ノートの取り方で全部メモしてしまっている→略語を多く使う、一言では何か、を聞きながら考える
・プロセスの課題:クラッシュが見えなくなってしまっている→クラッシュ専用の紙を準備する(akの場合はスピーカーごとの紙とクラッシュ専用の紙を分けています)
・アウトプットの課題:勝ち負けの基準が足りない→基準のストックを増やす(例:こちらの記事等)

ちなみに、その他ジャッジに関連する記事はこちらにまとまっていますので適宜ご覧ください!(全般的な、主要記事まとめはこちらです)

ではまた!

2020年1月1日水曜日

ディベートの関わり方を悩んでいる人へ

2020年もどうぞよろしくお願いします!

ディベートの関わり方って悩みますよね。akも何度も悩みました。
長くディベートに携わってきた身としては、ありがたいことに色々な関わり方をさせてもらいました。それをまとめるとこんな風になります。



色々な人が色々な関わり方、まさに十人十色の関わり方があります。
ぜひ、色々な人に話を聞いてみてください。

私の場合はこんな感じです。(少しでもご参考になれば…)

・競技者としては、短い時間でチームメンバーと共に勝ち負けを競う知的スポーツであるところ、前よりできるようになる成長実感が日々楽しみでした。目標とする大会でのブレイク、優勝等は今でも覚えていますし、負けた試合は思い出すと今でも悔しさがこみ上げてきます。

・ジャッジとしても、国内外のディベーターを説得できた時の嬉しさがありました。特に最初は不慣れで、明確にイラジャだったと思います。それがうまくなっていくプロセスも好きでしたし、そもそも色々な話を知ることが好きな私は、「こういう話もあるんだ」「こんなアーギュメント思いつかないな」と感動を覚えました。

・上級生になってから、コーチをする機会が増えてきました。特に大学院になってからはその機会は増えました。ゼミと言う形をとったこともあります。ある時期は、1か月くらいつきっきりで後輩の練習を見ていた時期もありました。後輩の活躍は、自分の活躍よりも嬉しいものでした。

・運営/コミは私よりも上手な人、たくさんやられている方々もたくさんいらっしゃいますが、どちらも有意義で面白かったです。特に若いころにかかわった大会が今も続いているのを見ると感動ものですね。部長時代は仲間と共に過去の先輩たちのレガシーを梃に黄金時代を創ろうとしたこと、色々迷惑もかけましたし失敗もしましたし、当時の自分がイケていない部分はたくさんありますが、当時としてはやり切ったつもりでした。チームでなにかをつくっていく、というのはすごくいい経験でした。

・ディベートの研究は答えがないところにチャレンジする意味でとても面白いですし、社会に広める活動が最近は増えてきました。ディベートの良さ、楽しさをより多くの人が知ってくれるようになれば幸いです。

・また、ディベートの経験をもとに、色々なサークル、仕事等でご活躍している人たちがたくさんいます。akもディベートのAREAやHorizontal思考は特に色々なところで役立つなぁと思っています。

・また、何よりディベートで培った先輩・同期・後輩との関係は何事にもかえがたいですね。ある種の"戦友"ですし、"同志"です。今でも仲良くさせて頂いている方々もたくさんいて、ディベートをやってて良かったなと思います。