2014年11月14日金曜日

BP Discussion各論③ ブレイクラウンドでのジャッジ

予選のジャッジとブレイクラウンドのジャッジは基本的にやることはもちろん一緒です。
しかし、予選と異なることがいくつかあります。それを知らずに「基本的には予選と一緒だろう」とあまりブレイクラウンドのジャッジを経験せずにいると痛い目にあいます。

BPのブレイクラウンドは、

・ジャッジの人数が多い
・いわゆる「ジャッジの能力」が高い人が多い
・ディベーターもより接戦になる
・いわゆる「上位2チーム」を決めればいいとされている

当たり前ですがこういった変化が起きます。
となると、どういう工夫が必要になるでしょうか。僕は主に2つあると思っています。

① 考慮する点が多くなるため、議論を整理する必要性が高まる
人数が多いということは、それだけ議論をまとめるのに時間がかかるということになります。
とくにどのジャッジもブレイクしているということは説明能力に一定の合理性が推定され、なおさら議論が白熱します。
これは言い換えるとどういうことかというと、(1)基準が乱立し (2)その基準下でも見解が乱立しうることがよくあります。
そうなると、なおさら普段以上にチェアーのfacilitation能力が必要になるということになります。
個人的な経験則をベースにすると、チェアーのfacilitation能力が低いと、よく「なんでそんな結果になったのか」というディベートの不満につながりやすいです。

つまり、いったん物事を整理し、どこまで話してどこまで話していないのかを明確にする必要があります。当たり前ですが議論中は特にチェアーはノートを丁寧にとっておく必要があります。
こういうときはたまにチェアーとしては「一回議論を整理しましょう」と発言し、今までの議論を整理する必要があります。

例えば、「OGとOOの間でもめているときに、見ている基準としては今まで4つあがり、その中で2つはおおむね見解が一致しているが、残りの2つでは意見が分かれている。ここまでは大丈夫ですか?」のように一度議論を整理する必要性が出てきます。

一度議論を整理すると、やるべきこともわかってきます。それは前回書いたような方法でデッドロックを解消していけばいいからです。

また、議論がわき道にそれそうなときはすぐ戻しましょう。例えば、OGとOOの比較なのに、OOとCOの比較をしても意味がありません。

なお、チェアーにだけ責任を押し付けるつもりはなく、「いいパネル」の場合はチェアーに「一度議論を整理しませんか?」のようにチェアーだったらやるであろうことを提案しましょう。

なお、個人的な私見ですがブレイクラウンドでアロケーションをするときは、チェアーはできるだけ(もちろんダイバーシティ等も考慮しますが)ブレイクラウンドのディスカッションに慣れている人、もしくは予選でfacilitationの評価が高かった人を優先すべきです。

② 4チーム間を比較することを常に意識する

僕は個人的に「2チームだけ決めればいい」という考え方は、結果論であって、それは議論の過程に入ってくるべきではないと思います。
つまり、僕は最初から4チームの順位はしっかりブレイクラウンドであっても出すべきだと考えています。 なぜなら、そのほうがより細かく丁寧に比較ができるからです。

もちろん、明らかにbench winが起きている時などは別です。その時に細かく話すのは無意味ですから。また、1位と2位の差で話す必要がないというのもそうです。

しかし、ジャッジするとき(initial callを出すとき、最初のRFDを説明するとき)は必ず1-4位まで出しましょう。(予選と同様、2-3位で迷っている、のような説明方法はOKです)

そしてその後、「とりあえずCOを落とそう/あげよう」のように1チームだけを落としていく方法も合理的ではありません。あくまで、特定のチームを落とすとき/あげるときは他の3チームと共通の軸で比較して落としましょう。 
よく海外の"political judge"がするテクニックとして、とりあえず1番ライバルになりそうなチームをあげるか落とすかし、残りの中から結果的に自分の意見を押し通してあげるというテクニックがあります。
別にそれが起きているとかという話ではなく、どこか特定のチームをあげたり落としたりしてしまうと、実はその後しっかりと比較すると「あれ?このチームって本当にあがっているの?」となったりします。

また、そういったpolitical judgeがいない場合でもこういう悲劇は起こります。それはコンドルセのパラドックスを引き起こしている時です。(詳しい説明はWikipediaで)

ざっくりと説明すると、3チームの優先順位は人によって異なっている可能性があり、それが「投票する順番によって結果が変わってしまうこと」があるからです。
OG>OO>CGの人、OO>CG>OGの人、CG>OG>OOの人がいたら、堂々巡りになってしまうのです。
集団として優劣に循環ができてしまうという状況なわけです。

こういう場合は「2チームの比較」ではなく「3チームで共通の軸で比較」することが少なくともBPにおいてはパラドックスを一番解決できるので、ここでは大変ですが3チームを比較する基準が何か?という点を考えましょう。(大体の場合は、分析の深さや、Clash-baseでどうなったかなどに落ち着くとは思います。)

また、他のところでも書いた気がしますが、時系列順にどのようにディベートが動いていったのかを確認するのも大事です。(例えば、Opening HalfではややOGよりだがあまりまだ分からない状況で、CGがでたことによってGov benchが確実になったのであれば、CG>OG>OOになる可能性が出てきます。)

また、最終的にRFDを「Oralでディベーターに説明して、説得力を持つのか?」というチェックをかけるとさらにディスカッションの精度があがります。


いかがでしたでしょうか。BPのブレイクラウンドはレベルも高いですし、ディスカッションも普段より大変なところもあります。しかし、「議論をより整理すること」と「4チームをより(共通の軸で)比較すること」という点を意識するとディスカッションおよび結果の質があがると思います。

2014年11月6日木曜日

BP Discussion各論② 議論がデッドロックになった時

各論② 議論がデッドロックになった時

基本的に、ディスカッションのゴールは「ディベーターを最も説得できるRFDを考えること」に当たると思います。また基本的にはチーム間を比べる<基準>とその下の<比較>が必要なのでそれから逆算して考えます。

とはいえ、「initial reason for decision」、すなわち最初にチェアー、パネル、(トレイニー)があった順位とその理由をお互い言った後は何をすればいいのでしょうか。

無意識のうちに皆さんもやっていること思うのですが、改めてどのレベルの議論が必要なのか立ち返りましょう。

① 他の人が主張している基準下で、本当に公平に比較しているのか?
② 自分が主張している基準下で、本当に公平に比較しているのか?
③ 基準が乱立している場合、どの基準が妥当なのか?
④ 他の基準はないのか?

どのレベル間で話しているのかは常に気をつけましょう。
基本的には、①、②を精査する形になると思います。

例えば、「Engagementという観点からOG>OOです」となった時、「OOも十二分にOGにEngageしているのではないか」「むしろOO>OGではないか」という部分をノートを見ながら細かく判断していきます。

また、Opening HalfのClashを勝ったのはどちらなのか?と考えるときClashをつくりそのClashがどちらに傾いたのか見るのもここに入るでしょう。

問題は、その次のレベルとして基準が乱立した場合どうするかということでしょう。
ここに関しては正直難しいのですが、例えばEngagementとConstで対立したときとか困りますよね……。とはいえ、例えばTechnicalityやRoleを重視しすぎていないかだとか、他のチームを比較したときに用いた基準とconsistencyがあるのか等を見ていくのが重要でしょう。(例えば、1位と2位ではRelevancyをみていたのに、2位と3位のところでRelevancyを無視したら不公平に感じられます。)

また、議論が煮詰まったとしたら④として、他の観点はないのか考えてみるのも大事でしょう。意外と、こっちのほうがコストパフォーマンスがいい傾向があります。MotionへのRelevancy、具体性、Impact、Framing等比べる基準はたくさんあるので。

とはいえ、これら①-④を議論しても結論が出ず、例えばどっちの話も分かる状態になったときは残念ながらVoteを使う他ないでしょう。Voteは悪いことではないので。

とりあえず、どのレベルで議論をしているのかを意識すると、実は特定の議論しかしていなかったことに良く気づかされます。特に、③の視点や④の視点は議論を進ませることに役立つことが多いという経験則があります。

2014年11月2日日曜日

BP Discussion 各論① 大きく順位がずれたときはどうするか

BPのディスカッションの各論に関して書きたいと思います。全何回のシリーズになるかは不明ですが、まず書きたいと思います。

① 大きく順位がずれた時はどうするか
Opening Half、Closing Half, Government Bench Win等大きく意見が分かれる時があります。
その時はもちろん共通点があればそれは同意しておけばいいと思うのですが(ex.特定のチームの4位や、どこかOG>OO等全員の共通見解がある)それがない場合はどうすれば良いのでしょうか。

おそらくいくつかのアプローチがあるとは思いますが、一つのアプローチしかしらないのでそれを書きます。

ADIでどなたかのレクチャラーが言っていたことをそのままぱくるのですが、その場合は「ざっくりと4チームの評価に関して簡単に意見を交換する」ことが王道とされています。BP Novice 2011 Adjudication にも書いてありますが、これはやっぱり個人的にも時間はかかるもののうまくいきやすいと思います。なぜなら、順位の違いはだいたい1-2個のArgumentや反論の取り方によって大きく分かれることが多いため、どこが判断するところなのかわかりやすくなるからです。

その際、たとえばOGの話がOOと比べてどうなり(Clashはどうなったのか)、そしてCGが入ってくることによってどうかわったのか等に関して時系列順に評価が下せていくというのもメリットがあります。つまり、4チームすべてを比べる基準が自然にできやすいというメリットがあるということです。
また、この4チームの評価を話し合った後、一度各人で考える時間を設け、もう一度順位を出しなおすのがお勧めです。ディスカッションした結果順位が変動せずむしろ確証をもつパターンもありますしそれは問題ありません。場合によって、大きく順位がまた変更することが多いと思いますが少なくともその場合はコンセンサスに近くなっていきます。

実際、自分がとあるブレイクラウンドでジャッジした時、かなりの混戦でOpening Half, Closing Half, Government Bench, Opposition Benchほぼ全てがあった状況だったのですが簡単にOGからCOまでの良かったところ・悪かったところを羅列していくと、自然に「あ、この2チームに やっぱりなるんじゃないか」とコンセンサスに至ったことがあります。

また、他のブレイクラウンドでも、最初は大幅に違った順位が、このプロセス後1位と4位のコンセンサスに至り、2-3位の争いのみに議論の争点がうつったこともありました。上ほど理想的にはなりませんでしたが、かなり大きな前進だったと思います。

2014年11月1日土曜日

ジャッジテストの採点プロセス

ジャッジテストを受ける人にとっては、ジャッジテストがどのように採点されていくのかが気になる、という声を何名かの方に頂いたので書きたいと思います。

ジャッジテストは最初のアロケーションを決める、そしてその後のジャッジブレイクにもかかわってくる重要なファクターなのですがどのように採点されているのでしょうか。ここでは私がACだったときの話や、他の人がACをしているときのやり方をベースに書かせて頂くので、全員のACにおいて当てはまる話ではないと思います。

1. ジャッジテストの採点方針を決める
ACとしてどのようなところに気をつけてジャッジテストを採点するのか話し合います。例えば、以下のようなことが決められます。

・Voteがどれ程ACとあっているのかを重要視するのか?(UADCだとこれはかなり重視される傾向があるようです。また、BPの大会ですと「このチームが1位なのはクリアだが、2・3・4位はクロース」のようにグラデーションをつける場合もあります。だいたいReasonをかなり重視する形には落ち着いている気がします。)

・どこを見るか?→ちゃんとScoringまで総合的にみよう、等

・この際、2-3個ジャッジテストを全てのACが見ることによって点数基準を揃えます。その基準点をベースに採点を行います。

2. AC 2人が採点

・コンフリクトに気をつけた上でACの1人が、採点者としてAC2人をランダムに振り分けていきます。

・大会によってはジャッジテストを記入した人の名前をわからないようにして番号を振り分けます。(ABP, UADC, NEAO等)

・点数とコメントをつけて、Google Docs上のスプレッドシートに書き込みます。自分の分が書き込み終わったら背景を黒にしてもう一人の採点者が見えないようにします。(だいたい実際のAdjudication Feedback Systemに準じて行います。ex. 論理的か?包括的か?具体的か?等...)

・2人の間で大きな点数差があったら話し合うか、3人目のACが見て最終的な点数を決めます。

3. (返却)

・大会によってはジャッジテストを添削やコメントという形で返却します。
私見ですが、特に「ジャッジの権利」や「学ぶ機会の提供」「アカウンタビリティ」などさまざまな観点で行うべきだと思います。

・また、全体的なコメントとしてAC見解を出すこともあります。



なお、この後のプロセスは、こちらになります。