2018年3月30日金曜日

フィードバックのコツ① フィードバックの型 ~4つの点を伝えることを目指す~

ラウンド後のフィードバックってすごく大事ですよね。
ディベーターからすると、ラウンドを客観的にみてくれていた人からのコメントを通じて次の試合は勝ったり、自身が成長するための貴重なインプットです。

ちなみに、学会の方でも、ジャッジが実質的なディベートの教育者というところで、その重要性はとても認識されています。(なお先日の学会の一つに、調査型ディベートの方のフィードバックを分析していた発表もありました)

フィードバックは奥が深く、ak_debateも色々模索中ですが、今回は今まで個人的に気を付けてきた点を共有します。今回は第1回ということで、"フィードバックの型"をご紹介します。

【結論】
フィードバックの"型"として、①良かったこと、②改善できること、③今後の実行方法/練習方法、④今後の期待の4点を徹底する

このような構成は、部内でのフィードバックの"型"ともしていました。先輩方がこの順番で話してくださっていて、いいなと思ったのでそれを型化しただけなので私はたいしたことはしていないのですが、これはすごく意味があると思っています。
もちろん全部言えるのが理想ですが、一部だけでも言うようにして、徐々に全部言えるようになっていこうと勝手に目標にしていました。

【詳細】
① "良かったこと"
特に、「良かったところ」は自分では見えづらいです(ディベーターの方々はとても自責の念が強い方も多いことも影響しているのかもしれません)。ですが褒められると嬉しいものです。世界最強ともいわれるディベート・コミュニティが一同に集うAustralsに行ったとき、ジャッジの方がかなり褒めてくださったこともとても印象的でした。(ディベーターが陥りがちな罠として"できないことへの傾注"があります。参考:どうすれば、上手くなれるのか? -"成長エンジンの設計方法"-

特にこれは高校生ディベーターや1年生等、ディベートを始めたときは手厚くやる必要があると思っています。UTDSでは、今はどうか分かりませんが、当時は8割くらい褒めて、2割くらい改善点、という分配だね、と先輩からアドバイスを受けました。

なお、褒める際は、できるだけ具体的に褒めることも大事だと思っています。「1st Argumentのこの話はxxx」のように、具体的に話しましょう。

これを行うためにak_debateは各スピーチのフローの際にそもそもArgumentやRefutationを「いいね!」「good!」「〇」や、「ん?」「△」等とつけているのですが、その結果を受けてささっと良かったところを書いたりしています。(uniquenessが良かった、イントロがパワフルだった、等)

② "改善できること"
一方で、次は勝ちたい、よりうまくなりたい、というようなニーズもしっかりとケアすることが重要だと思います。したがって、「どうすれば良くなるのか」という視点でもフィードバックすることが重要です。

ここでのポイントは、幾つかあります。まず、毎回できるわけではないですが、特に負けたチームに対しては、「どうやったら勝てるのか?」というところまで話せるようにできればしようと思います。競技って勝敗がつくので当然気になるのは「どうやったら勝てたのか?」だと思うので。例えばこういう風にUniquenessをつけて、だとか、この主要な点にこうやって反論して、だとか考えます。(もちろん難易度は高いのでMUSTではないとは思っています。ですが、ak_debateからすると、具体的な改善方法がなくても、気になったところだけ教えてくれるだけでも貴重なインプットですのでドシドシほしいです)

また、あくまで相手の感情にケアした形で言うことも重要だと思います。一方的に「全然ダメで」のような言い方は99%の場合避けたほうがいいです。当たり前ですが人格とは切り離し、I messageで話すことも有効でしょう。「今回のラウンドではXXと言ってくれたのですが、それは残念ながらYYだと私は思ってしまって、ここまでやってくれればさらに評価をあげられたのだけれども…」のような言い回しをできるだけ意識しています。

③今後の実行方法/練習方法
これも難しいのですが、できればラウンドの話だけにとどまらず、他のラウンドでも当てはまるような話まで、だとかpost-roundの話まで踏み込みたいなと思っています。そのためには、一段抽象化した理論化が必要になります。そこまで含めたフィードバックがあると、経験上ディベーターの成長スピードが速くなる傾向にあると思っています。

例えば、以前どこかで残念ながらparallel debateになってしまったラウンドがありました。(akもやってしまうので難しいですよね。ちなみにparallel debateというのは、Gov/Oppでケースが完全に平行線をたどることです。例えばTHW make aid conditional to democracyのようなモーションの際Govが"aidを受け取る!" Oppが"aidを受け取らない”とただただ平行線をたどったりします)この際、私は一段抽象化し、「こういう時は3つの話をできるようになるとよくて、①どちらのcaseがよりlikelyか、②相手のcaseで何が起きるか、③自分のcaseで何が起きるか、まで話すと良いよ」というアドバイスしたところ、ディベーターが深く頷いてくれたことは今でも覚えています。

また、時間がある場合は具体的に今後のために参考となる考え方(例えばTBH思考法、具体的にお勧めの)やお勧めの練習方法(例えば、プレパ・シートの作り方等)まで踏み込むこともあります。

繰り返しになりますがこれは難易度が最も高いと思っています。なので、毎回akもできるわけではありません。その場で理論化することは難しいですし、日々経験則的に理論化したものをシェアできないと大変だったりします。ですが、できればそこまで踏み込めるようにと日々目指しているところです。

④今後の期待
やはり最後は期待していることも併せて伝えると思います。もちろん、そのトーンなどは人それぞれになりますが、本当に感動した場合は相当に熱量をもって私も伝えます。色々まだ苦労している段階であっても、「ここがすごくポテンシャルがあるのでここを強みとしたディベーターになってほしい」ということとかもあります。

これをわざわざ別建てしているのは、「サンドウィッチ方式」にしたいというのもあります。要は改善点ってセンシティブです。辛いです。できなかったことを自覚している場合はそれがもう一回言われるわけですし。なので最後はまた良かったところでしめることで、前向きになってほしいなと思っています。

ちなみに、ちょっと話はずれますが企業では「3K」が大事だとされています。仕事の種類のほうではなく、「期待する(Kitai)、機会を与える(Kikai)、鍛える(Kitaeru)」の頭文字をとったものらしく、そのように部下を育成することが重要とのことです。最初の期待をするところで人が伸びる、というのは自分もありがたいことにそうだったなと思ったので、それを他の人もやる責任があるし、そのほうが今できなくても、長期的に伸びる、と思っているからかもしれません。

いかがでしたでしょうか。もちろんこの4点のフィードバックは理想像なので毎回することはできません。ですが、その型に当てはめて自分のフィードバックの今を"見える化"して、より良いフィードバックを目指していく一助になれば幸いです。

─────────────
(主要記事まとめはこちら

2018年3月27日火曜日

【80点超えのスピーチシリーズ各論②】Leader of the Opposition編

総論としての「80点超えのスピーチをするには」を受けた、各論シリーズです。
前回のPrime Minister編に引き続き、今度はLeader of the Opposition編です。

個人的に、Leader of the Oppositionは比較的難しいポジションだと思います。やらないといけないことがたくさんあるので。(余談ですが、日本だとロールごとに担当者を分けることもありますが、海外だと"1st Contact"ということで、LOとDPMは同じ人がやることもあるようです。)

そんな中ですが、Leader of the Oppositionとしてak_debateが行うほうが良いと思うポイントをご紹介します。

①まず前提として、Prime Ministerでも求められる(a)一連の"primary story"を立て切ることや、(b)主要な話への対応はLOとしても必要
これだけでも十分におなか一杯かと思いますが、(Prime Minister編をお読み下さい)結局リーダーというところで、ここはPrime Ministerと同じように重要になります。

② Governmentとの違いの明示化を通じたOpposition Modelの明示化
結局のところ、まずGovernmentとの違いを明確化することが重要だと思っています。これは各論では例えばProblemに対するアプローチの違いということにも表れます。

昔のエジュケでは、①Problemはない、②ProblemはあるがAlternative Wayによって解決できる、③ProblemはありGovernmentで解決できることは認めるがHarmがある、のどれかのスタンスをとれ、と言われた人もいたようです。これは間違いではないのですが、GovのPracticalな部分(Necessity, Solvency, Benefit>Harm)、Principleの部分(Justification)のどの部分にOpposeしているのか、のほうがより正しいとは思います。つまり、①Necessityがない(問題は無い/他の方法で解決できる)、②問題はSolveできない、③Harm>Benefit、④正当化し得ない、の組み合わせかと。

そしてそのスタンスによっては、Opposition Modelが具体的に説明されることが必要になります。特に海外ではその傾向が強いと思っています(参考:Australs体験記)例えば、BPということでやや雑いですが、WUDC 2010 QFのLOはそこを明示化しています。 THW ban all procedures to alter one's racial appearanceのOppositionで、多くの人のChoiceを促進するために、Researchを支援し、さらには同procedureに対するsubsidyもOKだとしています。その中で、cosmetic surgeryと同じように徐々に値段は安くなっていくため多くの人にとってアクセスすることができることも示唆しています。似たようなケースとして、UADC 2014 R8のLOもorgan shortageに対するアプローチをかなりの時間をかけて説明しており参考になります。

③ その上で、一言目から"Oppositionが勝っている感"の醸成
うまいPrime Ministerの後であればあるほど、空気をひっくり返しに行くことが重要になっています。例えば私はEUDC 2008 GFEUDC 2009 GFにおいて、シェンウーがLOを行う際、あえてゆっくり話しているのはトーンを変えに来ていることも大いにあると思っています。Logicalに来た場合はあえてEmotionalに、Passionateに来た場合はあえてCalmに、と雰囲気を作り変えられると良いと思っています。

内容面で言うと、例えばJapan BP 2013 SFにおけるLOはFragileであるContextを明示した上で、Arm Aidの必要性を言ったうえで、GovernmentのFailureも指摘しています。このように、相手ができていなかったことの指摘や、Opposition Modelの必要性を早めに話すことも一つ有益でしょう。

なお、もしGovernmentがあまりうまく行ってなかった場合は、それを「じゃあ代わりにやってやろうじゃないか」と説明する場合もあります。本来であればこういうディベートであった、というような"This debate is really about..."というイントロで入るパターンはこの例に入ると思います。この場合は勝ちを一気に決めに行く際に有効です。

─────────────
(主要記事まとめはこちら

2018年3月23日金曜日

【ディベートニュース速報】Kyushu Debate Open(QDO)、世界で初めてSDGsにコミットする国際ディベート大会に

2018年3月22日に、QDOは、世界で初めてSDGsにコミットする国際ディベート大会になることを発表しました。

・SDGsの説明(外務省)
 持続可能な開発目標(SDGs)は,2001年に策定されたミレニアム開発目標(MDGs)の後継として,2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」にて記載された2016年から2030年までの国際目標です。持続可能な世界を実現するための17のゴール・169のターゲットから構成され,地球上の誰一人として取り残さない(leave no one behind)ことを誓っています。SDGsは発展途上国のみならず,先進国自身が取り組むユニバーサル(普遍的)なものであり,日本としても積極的に取り組んでいます

・Kyushu Debate Openの説明

2014年に設立。九州地域の学生を主体に運営される、日本で唯一世界大会フォーマットで行われる即興型英語ディベートの国際大会。昨年は1/3の参加者が海外から参加。外務省・文科省・福岡県・福岡市が後援。

Link:
https://www.facebook.com/QDO.KyushuDebateOpen/posts/562234414152537