2013年1月23日水曜日

リサーチがなかなか続かない人へ

リサーチがなかなか継続できないという相談をうけることがあります。
その時言うことがいくつかあるのでシェアします。

①リサーチのハードルが高すぎやしないか?
リサーチは別に分厚い本を読めということを要しません。(必要なときもあるかもしれませんが・・・)ちょっとスマートフォンやパソコンで記事を検索することもリサーチです。ちょっとしたことかもしれませんが、0よりマシですし、必要な情報を手に入れることができます。

②リサーチは相乗効果がある。最初は我慢!
リサーチは、少し知識が入ってくるとやりやすくなります。いわゆる「あ、これ前みたことある」という進研ゼミとかの広告であるようなあのパターンです。例えば僕自身最初はシリアとか何おこってるんだよEUとかわかんねー状況なときがあったんですが、繰り返しニュースをみているうちにだんだん分かっていきました。最初が大変だったりするのはどんなことでもありがちです。

③困ったら、思い切って聞く
意外と大事です。一人でやるとわからないことがあります。そういう時は詳しい人に聞いてみると、解説してくれたり必読書をすすめてくれたりします。一人で悩むより聞きましょう。

④目に見える形でリサーチをストック
マターファイルをつくったりすると自己満的ではありますが達成感を覚えます。あ、こんなに調べたんだ・・・と思うとだんだん嬉しくなるものです。しかも減るものじゃないですからね。
余談ですが、あの松井秀喜選手は「打率より打点のほうを気にしている」と話していました。これは、変動する打率よりも、減らない打点のほうが好きだからです。これと一緒!というと雑かもしれませんが増えていくもので軌跡がみえるのは嬉しいものです。

⑤他人を巻き込む
他人と一緒にやったりすると義務感もでてくるので続きやすいです。是非部としてやったりするといいんじゃないでしょうか?ちなみにうちの部はリサーチプロジェクトという形で全員を巻き込んでいます。

いかがでしたでしょうか。ぜひとも参考にしてみてください!

2013年1月21日月曜日

そもそもディベートって何なの?僕のディベート観


そもそもディベートって何なの?僕のディベート観

ディベートって何なんでしょうか?僕の独断と偏見をもとに、4年間ディベートをやった自分なりの答えを出してみました。

「ディベートとは、議題と一定のルールの下、相手のパラダイムよりも自分が守りたいパラダイムの方に優位性があることを第三者に説得する競技」だと思います。

細分化すると、以下の4つに集約されます。個人的に①②③が④より重要だと思っています。

①議題(モーション)の肯定・否定を行うこと
②相手チームに対応すること
③第三者を説得するということ
④そして、公平性を担保するためにルールが定められていること

①議題(モーション)の肯定・否定を行うこと
 当たり前のように聞こえるかもしれませんが、モーションの話をする必要があります。さすがに、タバコ廃止のモーションで国連の安保理の拒否権廃止の話をするような奇想天外なことはないと思いますが、そういう話ではありません。重要なのは、Spirit of the Motionに忠実に、関係のある話をしているかということです。Spirit of the Motionというのは、モーション作成者の議論の意図です。どういうことかというと、モーションを出す人というのは「理由があって」モーションを出しています。(少なくとも、そう期待されています。)モーション作成者の意図を汲み取って議論することが求められているのです。
 例えば、THW grant illegal immigrants legal status.というモーションがあります。違法移民に市民権などをあげるという議論ですが、これは事実2012年の大統領選時にアメリカで議論になっていました。また、2012年末の世界大会ではTHBT Japan should acquire nuclear weapons.というモーションが出ました。かなりラディカルなモーションではあると思いますが、背景には、領土問題や北朝鮮の動向、アメリカの力の低下などが挙げられるでしょう。こういった背景をベースに、話してもらいたい内容というのがあるわけです。こういった、モーションが出された背景を”context”といいます。具体的なcontextがない場合は、「こうしたほうが良い社会なんじゃないか?」というような意図や、「2つの考え方があるけれども、結局どっちが大事なんだろう?」という問いかけや、「今あるものって実は問題なんじゃないか?」という問題意識などがありえます。(THBT Chinese investment is better than Western aid.  TH opposes capitalism等。)場合によっては「将来こういう世界になったら、もしくはこういうことが可能な社会だったとしたら、何をすべきなのだろうか?」という思考実験的なモーションもあります。(例えば、Assuming that it is possible, THW forcibly erase traumatic memory of patients.)
 そして、基本的にGovernmentはモーションの肯定、Oppositionはモーションの否定が求められています。Spirit of the Motionをベースに、忠実に守りたい世界を守っていく必要があります。例えばですが、前述したTHBT Japan should acquire nuclear weapons.というモーションにおいて、Governmentは現在の日本問題、そして軍事化(militarization)の必要性を話すだけでは足りません。確かに、モーションの本質的な部分である「なぜ日本なのか?」というところには答えてはいるかもしれませんが、「なぜ核なのか?」という問いに答えていないからです。そしてもちろん、Oppositionはなぜ核がだめなのかという話をすることが必要になってきます。

 (ここはやや、今のディベート界だとGovernmentにバーデンが重いようにも思えます。ですが、世界大会でジャッジしていて感じたことは、ジャッジは素直にモーションを読んでその問いに対する答えを求めているという印象でした。
 これはなぜでしょうか?日常会話で考えてみてください。カフェで友人が「日本は核武装すべきだ」と言ったらどう思いますか?「何で日本が?」そして「なぜ核武装なのか?」という疑問が浮かぶはずです。つまり、モーションから素直に読み取って出てくる疑問に答えていくことが必要なわけです。言い換えると、Governmentは「なぜ日本が核を持つべきなのか」Oppositionは「なぜ日本が核を持ってはいけないのか」という問いに答えていくことが求められているわけですね。
 こういった、「なぜ日本」「なぜ核」といった答えは、uniqueness(固有性)と言われています。モーションに求められるのは、「なぜこれでないといけないのか?」という問いに対する答えです。
 そして、このような問いの答えを説明していくのが立論(Argumentを出すこと)に違いないでしょう。いわゆる”building your case”と言われるやつです。

②相手チームに対応すること
 そして当たり前かもしれませんが、ディベートにおいては相手チームがいます。相手が言ってきたことを無視することはディベートではなくただのスピーチです。重要なのは相手チームより説得的である必要があるってことです。これってどういう意味でしょうか。無理やり類型化すると「比較」と「反論」になると思います。
 まず「比較(comparison)」です。ディベートにおいて、議題として出されるのは全て「議論の余地があるもの」なわけです。死刑廃止では、政府の殺人が正当化されるのか、冤罪はどう対応するのか、被害者感情はどうするのか等はずっと議論されてきており終止符が未だに打たれていません。肯定側からすると、なぜ「廃止したパラダイムのほうが良いのか」という説明が必要になることは言うまでもありません。
 そして、どちらの側にも言い分はあるわけで、守りたいものはあるわけです。ディベートにおいては「なぜ相手の守りたいものよりこちらを優先する理由があるのか?」というような話ができると説得力があがります。中絶を例に挙げてみましょう。中絶を肯定する側は女性の権利、否定する側は子供の権利を主に押すことが考えられます。この場合、「なぜ女性の権利の方が子供の権利よりも優先されるべきなのか?」という問いに答えてくれると、説得力があがることは自明でしょう。そうでなく、ただ「女性の権利が重要」といったところで、相手もそれと同じくらい「子供の権利が重要」と主張するため、第三者からしてみると「どっちなの?」と思ってしまうからです。
 そして、これに関係して相手に反論(refutation/rebuttal)することが求められています。何をいまさらという感じもするかもしれませんが①は当然相手もしてくるわけです。相手も立論をするわけですから、それに対して反論をしていく作業が必要になってきます。なぜ相手が話していることはそんなに起こらないのか、なぜ起こっても問題ないのか、といったことを説明することが求められているのです。

③第三者を説得するということ
 ディベートって相手を誹謗中傷するあれでしょ。というイメージを持っている人も一部います。これは、ディベートに対する理解不足であると言わざるを得ません。少なくともParliamentary Debateは第三者を説得する必要があります。相手を誹謗中傷したところで説得はされないわけです。
 そしてさらに言えば、あなたの立論・反論・比較が説得力を持たなければまったく意味がありません。独りよがりな議論や、首をかしげたくなるような発言は納得できませんよね。
 ここで立ち返ってほしいのは、そもそもParliamentary Debateとはその名の通り議会を模倣したものだということです。つまり、政治家が一般市民を説得するというのがモデルになっているわけです。もしあなたが一般市民で、政治家が「こういった法案を通すべきだ!」と主張しているときに、どうすれば説得されるのでしょうか?
 ここが、ディベートにおける醍醐味だと個人的には思っています。そしてこここそが、ディベートの本質だと僕は思っています。というのも、ディベートの営みは「どうすれば私は第三者を説得できるのか?」という問いに自分なりの答えを出すことが求められているからです。
 先輩のディベーターや、海外ディベーターや、政治家や、芸能人や、コメンテーター、セールスマン、コンサルタント等、等、等。世の中には説得しようとしてくる人がたくさんいます。多少の好みの違いはあっても、説得されるパターンはひとつではないですよね。情熱的に話す人も、冷静に話す人も説得力を持っています。感情に訴えかける人もいれば、データや事例を多用する人もいます。説得方法は多種多様、十人十色なわけです。あなたの説得スタイルは何でしょうか?
 もう少しディベートに落とし込んで話しましょう。主にディベートは「マター(Matter)」と「マナー(Manner)」で構成されているとされています。マターとは、「何を話したか。」です。詳しい説明は他に譲りますが、ざっくり言うと論理や説明、事例・具体例、描写などでしょう。そしてマナーとは、「どのように話したか。」です。どのようにスピーチを分かりやすく構成したのか、ボディランゲージをどのように用いたのか、声のトーンは、どういう言葉を選んだのか等をさします。もちろん、マターとマナーを完全に分離することはできず、あくまで便宜的ですがこの2つが主にディベートを構成していることは間違いないでしょう。
 したがって、前の問いをもう少しディベートっぽく話すとどうすればマターとマナーを良くする事ができるのか、という形になるはずです。
 ここに関する答えは、各自違っていいと思います。でも僕なりの考えを少しだけ話すと、やっぱり現実的な議論話すていることが大事なんじゃないかなあと思います。毎年うちの後輩に話していることなのですが、現実離れした議論は説得力を持ちません。たまにディベーターはディベートという競技で勝ちを狙うため、もしくは周りが見えなくなるときがあります。とりあえずそれっぽい理由をつけて話せばいいんじゃないかという思考に陥ることもあるわけです。でもそれは、現実的に、また感覚的に受け入れるものなのでしょうか?机上の空論にならないことが重要でしょう。なぜなら、前述したようにモーションは意味があってつくられているからです。その意味を求める先というのは、あくまで現実世界なわけです。僕なりの持論ですが、「自分がこう言われたらどう思うか?」というのを自分に問いかけつつ議論を組み立てていくのが重要なんじゃないかなあと思っています。
 ちなみに、余談になりますが日本勢は特にマターを重視する傾向にあると思います。マターはもちろん大事なのですが、説得的なイラスト、word choice等も説得力を持ちます。海外勢とジャッジしていて思うのはマナーが説得力をどんどんあげていればそれを評価しているなあという印象です。

④そして、公平性を担保するためにルールが定められていること
 最後に補足的に付け加えますが、①-③を公平に行うためにルールが定められています。分かりやすい例としてはTime Managementでしょう。片方が10分話せて、あなたが5分しか話せないとしたら不公平ですよね。
 Definition Challengeというのも公平性の観点から導かれます。即ち、モーションを作った人が意図しなかったようなDefinitionでは、議論ができないことがあるからです。
 Counterproposalも、Oppositionの戦略として認められているはずです。Governmentが提示した問題には同意するものの、他の方法が良いと考える場合その選択肢を提供しているわけですから。
 各スピーカー、ポジションのRoleという概念もこういったところから生まれているのだと思います。Prime Ministerがどういった土台で議論するか定義してくれなければ、Oppositionは対応しようがありません。Asian StyleにおいてOpposition Whipが新しい議論を出してもGovernmentは反論のしようがありませんよね。
 Methodも公平性の観点から正当化することができます。例えば、Dynamicsですが、片方が最初から重要な議論を出しているのに、もう一方が後だしできるのであれば最初から出したほうに不公平です。#
 BPにおけるTechnicalityもここに入るでしょう。OGの議論がCOにつぶされたとしても、OGはもう一回反論する機会がPOIに限定されています。これでは不公平じゃないか?という観点からTechnicalityという考えがあるのではないかなと思います。

補足:メッセージ
いかがでしたか?僕なりの価値観を反映したものですが基本的に僕はディベートってこういうもんなんじゃないの?と思ってます。

そして。これを読んでいるあなたへのメッセージですが、僕はディベートはこうやって自分なりの答えをつくっていくところに面白さがあると思っています。そしてそれが強くなる上で有益だと思います。俺うまいんだぜどやぁという話ではないです。周りをみていると、うまいディベーターに共通しているのはやっぱり自分なりのディベート観を持っているってことです。ディベートってこうあるべきなんじゃない?という考えをもとに皆ディベートしているわけです。そこに優越性はないでしょうし、おそらく僕の価値観に賛同しない人も当然いると思います。でも大事なのは「ディベートって何なんだろう?」と考え抜けば抜くほど、自分なりの答えが出たり、「じゃあどうやったら自分がうまくなるんだろう」という道筋を示してくれたりすることです。

今ディベート界は変化を迎えています。僕が1年のときよりもモーションの性質も違いますし、国際大会で求められるようなPrincipleだとかCase Studyだとかが重要になってきました。おそらく、今の若い世代のほうが僕よりディベートを知っていることもあるでしょうし、むしろさらなる変化を楽しめる代でもあると思います。そして確実にディベートの公共財がストックされはじめてきていますし、ディベート人口も増えてきています。僕のこのチラシの裏レベルのディベート観よりも、「あなたのディベート観」に触れることを期待しています。

2013年1月17日木曜日

プレパ練の重要性

プレパ練はかなり効率的な練習方法なんじゃないかなーと個人的には思っています。
というのも、ラウンドはやっぱり時間がかかるわけで、例えばAsianをがっつりやると2時間くらいかかりますが、仮にプレパ練をしつつディスカッション等をしても1つのモーションにつき30分くらいで終わると思います。つまり、単純計算で4倍効率がいいんじゃないかなあとかと勝手に思っています。

何度も言うようですが、ディベートの練習方法は様々なので、ラウンド以外にも練習方法があることを意識しましょう。ラウンドをとりあえずやっておけばうまくなるというのはありません。ディベートに必要な能力は様々であり、それは場合によってはラウンドという方法以外のほうが効率的な練習であることがあるからです。

Motionの肯定・否定

Governmentはモーションの肯定、Oppositionはモーションの否定という説明責任があります。では、モーションの肯定・否定とはどういうことでしょうか。それは、Spirit of the Motion(モーション製作者が求めていること)がなぜ善い/良い・悪いのかを説明することです。

例えば、THBT Japan should acquire nuclear weapons.というモーションがあると、Governmentに求められているのは単にこのモーションが出された頃ホットだったアジアとの領土問題を話すだけでは足りません。また、武装(militarization)でもたりず、なぜ核なのかまで説明する必要があります。逆にOppositionは核によるHarmを説明することが求められます。


(これは今の日本ジャッジからすると少しバーデンが重いようにも思えるかもしれませんが、世界大会でジャッジしているとモーションを忠実に肯定・否定できているかで順位が大きく変動する傾向がありました。)