2018年9月3日月曜日

ジャッジのコツ ディベーターの話が理解できないあなたに

ジャッジは難しいですが面白いですし、やりがいもあります。そして何より、ジャッジの存在はディベート界において不可欠です。

かなり前のことですが、Golden Cupに参加した時や、また最近ディベートの初心者の方に対してジャッジのやり方をお話させて頂くことがあります。その際にまず最初に躓くのが「ディベーターの話を理解するところ」になります。「ディベーターが何を言っているのか理解することができませんでした…」という相談を受けることがあります。

これは、①英語力、②最低限の前提知識、③整理(構造化)のどれかがボトルネックになっていることが多いです。

①英語力
①英語力というのは、文字通りとなります。これも解像度をあげて考えると、例えば所謂「1-2年生の海外経験の無い人の話を聞けない」というものなのか「ネイティブの人の話を聞けない」なのかによって処方箋が変わってくるかと思います。前者であればpremitiveではありますが、文法であったり幾つかの単語力というところが良いかもしれません。

個人的には単語力の向上をお勧めすることが多いです。日本語が苦手な方のお話も、いくつかの単語を並べられるとなんとなくわかる、という経験って多いですよね。おすすめブックリスト50にも書きましたが、TOEFL 3800とかはおすすめです。ここでのランク2まで抑えておくとなんとなくは話は分かりますし、ランク3まで行けると大体困りません。後は英語力の向上方法の記事もご覧ください。

また、発音の問題であれば、結構耳で慣らしにいくのも重要です。よくイギリス発音が聞きづらい、というようなこともあるようで、友人はイギリス系のディベーターの音源を聞きまくっていたと言います。

②最低限の前提知識
②の最低限の前提知識、というのは、①ともかなり関わりますがそのトピックごとによくでるコンセプトやアクター等となります。5日間の記事でも書きましたが、1st Principleのような話もありますし、例えばCriminal Justiceであれば、Retribution, Deterrence, Isolation, Rehabilitationというようなコンセプト、lawyer, victim, perpetrator, prosecutor, judge, juryのようなアクターなどは抑えておきたいところです。Economyであれば、negative externalities (負の外部性)、information asymmetry(情報の非対称性)のようなコンセプトや、shareholder, investor, employee, employer, labor unionのようなアクターは知っておきたいところかと思います。ショートカットしたいのであれば幾つかの有名音源をさらっと聞くということでもいいですし、入門書的なものを英語とセットで一気に読んでしまうのもお勧めです。

とはいえ、15分-30分じゃあたふたしちゃいますよね。こういう時は賛否両論ありますが、ACであったり、他のジャッジの人と話をしてみたり、オンラインで少し議論を調べるような人もいるようです。あくまで最低限の前提知識の理解のためであり、その後のバイアスにはならないようには注意が必要ですが。

③話の整理・構造化
③の整理・構造化というのは実はあまり教えられることがないかと思います。結局ディベーターは15分-30分の準備時間しかないため、話がごちゃごちゃしてしまうことがあります。それらをうまくジャッジとして整理することは介入ではなく裁量ですが、これはどういうことでしょうか。例えば、

・ディベーターが伝えようとしていたキーメッセージを要約する(AREAで言う、Aの要約) 
(結局Argumentはこういう話だった、だとかCase(Argument/Refutation等を全て含んだ、イイタイコト)はこういう話だった、ということ) →特にボトムアップ型のディベーターの人は苦手な傾向にあります。

・キーメッセージの理由を整理する(AREAで言う、Rを整理)
(理由を4つあると言っていたが、実は結局2つめと3つめはほぼ同じことだった、等)

のようなことがあります。

人によっては図解することや絵でかくことで話を整理する場合もあります。

この整理・構造化は難しいので改めて詳細は別途どこかで話すかと思いますが、
すぐできるTipsとしてのポイントは2つあります。
(1) 「結局この話って何だった?」「Argumentを一言で言うと何だった?」と自分で問いかけること(ラウンド中に何度も聞きます。特にスピーチとスピーチの間)
(2) メモをとる紙とは別に、ラウンドの全体像が分かる紙を準備。(akの場合は、各スピーカーのフローをとる紙と、まとめる用の紙をわけています)そちらでは、たとえばPMが何を言ったのか、LOが何を言ったのか、等を書いていたり、BPであればチームとして何を言っていたかというキーワードを複数書いてあります。deterrence!とか、rehabilitation!とかそういうレベルだったりします。クリティカルな反論とかが来た場合はそれもNot mutually exclusive!のように書くこともあります。ポイントは「大きな流れ」を常に見える化することです。

いかがでしたでしょうか。ディベーターの話が理解できない方がよく陥りがちな3つのパターンに分けて紹介してみました。どれもすぐ出来るようになるものではないですが、いくつかTipsも書いてみたのでぜひ実践してみてください!

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主要記事まとめはこちら
※ ジャッジの部分では、よくあるディベーターからの疑問の解消法や、BPのジャッジのコツ等も書かれているのでぜひあわせてご覧ください

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