2018年4月15日日曜日

【80点超えのスピーチシリーズ各論④】Whip編(Asian Style)

総論としての「80点超えのスピーチをするには」を受けた、各論シリーズです。
今までのPrime Minister編Leader of the Opposition編Deputy Speakers編の続編となります。

最初に注意しておいたほうがいいのは、Whipはラウンドの流れに影響を受けやすく、また、Deputy Speakersの原則は引き継ぎぐことです。すなわち、「相手の一番強い話をつぶす」ことや、足りない点を伸ばすことも当然Whipでも継続されます。それ以外の点で幾つかポイントを書かせてください。(本当はこれ以外にも色々書きたいのですが、スピーカースコアに直結しそうなポイントであえて絞りました)

1. 汎用的なフレームを活用しながら、ラウンドに固有な纏め方を探す
よく「まとめ方に正解はない」と言います。一部の先輩にフィードバックを求めても「ケースバイケース」だと言われることもあるのではないでしょうか。確かにそうなのですが、「汎用的なフレーム」を参考にできる部分はあります。
例えば、下記のようなフレームがあり得ます。

<ディベートフレーム系>
・Principle, Practical
・説明責任(Necessity, Solvency, Justification) ※Solvencyに相手のHarmも含む

<4W系>
・(When)Time-frame-base (例:Short Term, Long Term)
・(Who)Actor-base (例:Impacts on Female, Impacts on Male)
・(Where)Place-base/Micro-Macro base (例:Impacts on Individual, Impacts on Family, Impacts on Society)
・(What) Keyword-base (例:Why ban?  Why now?)

このようなフレームを意識しながら、今までの双方の議論を纏めにかかります。
例えばですが、Australs 2013 GFのOW(GF Best Speaker)は大きくはPrinciple, Practicalのフレームワークに近いでしょう。(1. Whether this is a "just" law?  2. Impacts of the law 3. Social Perception )
また、Australs 2012 GFのGWもPrinciple, PracticalのClashながら、ラウンドの固有性を出しているサインポストになっています。(1. Is allowing these crimes worthy of criminal punishment? 2. What does the world look like, and what changes do we get under our policy?)。

もちろんフレームは結局のところ「なぜ勝っているか?」の合目的性とフィットしていないと意味がないですが、一つ参考になり得るかと思います。

なお、このフレームとラウンドの固有性を行ったり来たりするところが難しく、akは例えばポストイットを使用しながらラウンドを聞いています。そして大幅にスピーチ中に反論とかを動かし、クラッシュを作り直すこともあります。

2. 「勝たないといけない」部分に全力を注ぐ
「ここを取ったら勝てる」というようなポイントがあります。それは、ラウンドによって様々です。分かりやすく「分岐点」と呼ばれるようにClashの応報があるのであればいいのですが、必ずしもあるとは限りません。「自分がイイタイコトを言う際に、譲れないピース」というのを双方の論理構造からひも解く必要があります。

例えば、A→B→Cというような論理展開をしているとします。その場合、Aが証明されないとB, Cにいかない場合は、Aを全力で守りに行かないといけない場合があります。
この構図だと思っているのは、MDO 2011 Semiとなります。Govの論理構造というのは、「助かる人はZero-sumである(全員を助けることはできない)」→「そのような場合はLegalなchoiceを取った人を優先すべきだ」となっています。GWはその前者の前提を「This is not fair」と言いながらスピーチをしています。「PMからしっかりその前提を言っているにもかかわらず、Oppは反論してこなかった」と冒頭でいいつつ、相手のPOIへの反論で「もしZero-sumじゃない前提でディベートしないといけないのであれば、じゃあGovは負けるよね」という意図をジョークを交えて印象操作し、Govへの勝利を手繰り寄せています。

他にも、例えばTHW punish parents when their children commit crimes.のようなモーションの際に、論点となり得るのは親のcharacterizationです。Govは「親は子供の犯罪に大きく影響し得るため親もpunishすべき」、Oppは「親は子供の犯罪と関係ないので親をpunishするのはかわいそう」という風にラウンドが進んでいたとしましょう。その場合、論点となるのは「親はどのくらい子供の犯罪に寄与しているのか?」という点になるかと思います。Govであれば、多くの時間を子供と過ごすためモラル的な教育も含めて親が一番影響力があるというような話を展開するでしょうし、Oppであれば親以外の影響(social class、学校の先生等)と言ってくるかもしれません。その場合このポイントを全力でどちらかに持ってくるために反論したり伸ばしたりすることがWhipとしてあり得ます。
(あくまとして一例であり、他のstrategyも当然あり得ます)

3. Dropには敏感にあれ
AsianのWhipが、BPのWhipと違う点の一つはDropに対する厳しさだと思っています。(Dropとは、反論を「落とす」ことであり、議論を無視することだとご理解ください)BPは「【SIDO/QDO/HKDO分析】アジアのBP大会で活躍するための3つのポイント」で取り上げたように、Sell your ideaが重要になりますし、briefingでも「全部に反論する必要はない」と明示されることもあります。一方でAsianももちろん全部に反論することは不要だと思いますが、一方でDropに対して厳しい今年も事実です。

akもUADCでWhipをしていた時は、かなり細かめにWhipしました。一つの話に対して複数のレベルで反論しましたし、重要な話(格好いい話、聞こえのいい話、インパクトの大きい話等)は仮に1行だけでロジックが無かったとしても念のため反論しました。「反論していない」という理由だけで負けにするジャッジ陣対策でもありましたが。

また、先方のDropに対してもかなり厳しめにいきました。よくあるのが、PMやLOで話された内容が実はあまり反論されていないことです。これがDeputyでも特に伸ばされないと強いArgumentとなってくれないことがあります。そこでWhipでも改めて一つのClashにするくらいの勢いで「押しなおす」、そしてその際に相手のDropを強調していました。事実、ACに見られた予選ラウンドでも「Deputy以降の話等は優劣つけられなかったが、Whipが1つめに押した話は確かにLeaderから出ておりあまり反論されておらず、それで勝ちにした」と言われました。
(なお、この「押しなおす」というテクニックは意外と重要です。「浮いた」Deputy Speeches等を「埋め込む」ことも大事ですしね。)

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(主要記事まとめはこちら

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