2020年3月14日土曜日

「オンラインディベート」か、「オフラインディベート」か?の議論は本質ではないよね?

コロナウイルスの対策の一環として、オンラインディベートが盛んになり始めました。オンラインでディベートをする、と言うこと自体は今までも多く存在しておりましたが、大会としてオンラインディベートが始まったのは一つ大きな一歩だと思っています。

新しい技術/試みが立ち上がる時は、賛否含め色々な議論がされるかと思います。私は、一つポジションとしては「オンラインディベート、オフラインディベートのどっちがいいのか?」のような議論は本質的では無いと思っており、正しい問いは「どのように、オンライン/オフラインのディベートを活用していくべきか?」だと思っています。

私は特に先日、オンラインでの大会(Asian Online Debating Championship:以下AODC)にジャッジとして参加したり、過去にはオンラインツールを活用して部内大会をジャッジしたり、練習では試合を行ったりもしてきました。参加者の規模や使用したツールは毎回違いますが、私の意見としては下記のとおりです。

・オンラインディベートは、地理的/金銭的格差の解消につながるポテンシャルがある
私はディベート格差を0にしたい、というパッションも持っておりますが、その一つに資するものだと思いました。地方の学校ですと、どうしても関東圏の練習リソースにアクセスできないこともありますし、金銭的な影響から国内遠征/海外遠征にも限界もあります。
例えばAODCでは韓国とシンガポールの高校生のラウンドを家からジャッジしましたが、こういうのが増えると良いな、と思いました。また、過去には九州大学の普段の練習試合を家からジャッジすることもでき、楽しかったなと思いました。

・シンプルにオンラインディベートは柔軟性や利便性が高い
AODCでは朝1からのラウンドでしたが、普段よりも長く家で睡眠時間を確保し、朝ご飯をしっかり食べてからジャッジし、昼ごはんもさっと普段のように食べたりすることができました。仕事柄リモートワークも多いおかげか、あまりストレスは無かったです。
移動時間がないことから、次の予定を入れる上でも柔軟に対応できました。

・一方で、悩ましいなと思うことはあいにくある
(a) 【映像は欲しい!】使用するツールによりますが、映像が無いと少し辛いなと思ったり、違和感を持つ部分はありました。映像がある場合ですといいのですが、無い場合ですと、ジャッジをしている際にNon-verbal languages(つまり、ボディランゲージ等)を見ることができないので、違和感を覚える(ないしは、そこを頑張っている人が評価されない?)のは正直ありました。また、Reason for Decisionを説明したり、Feedbackをする際はかなり相手の顔を見ながら臨機応変に説明のトーン、速さ、やり方等を変えられるのですがそれができないのはすこし苦労しました。(特に初めて会う人は…)
(b) 【接続環境は怖い】私の場合は過去の取り組みでは大丈夫でしたが、一部回線が聞きづらくなった時などは(練習の時はまたもう一回お願い、とかしやすいですが)ちょっとめちゃめちゃ聞くことに集中しました。一部のツールや回線状況に応じては、ラグも少し発生したりするらしいのでそれはリアルの良さを少し感じました。
(c) 【初めて使うツールはちょっと不便】普段からよく使っているツールであれば、使い方もわかりやすくすぐできるのですが、初めて使うツールである場合は少し操作がうまくいかず、結構運営の人にご迷惑をおかけすることになるなと思いました。これは、念のため断っておくとどのようなツールでも共通です。
(d) 【不公平感への配慮は必要】たとえばですが、AODCでは結局あるチームは1部屋に集まってラウンドしていたようです。(全員がリモートだと、チャットがしづらい等あるため)それは全員をある種同じ状態にしたほうがいいのかもな、とかは思いました。また、あまり即興型のディベートに関しては日本国内では事例を見たことがありませんし、オンラインとの差分は分かりませんが、より不正行為をしやすいみたいなものはあるのかもしれず(プレパ中に、コーチと話すとか?)懸念の声はあるようです。

・"悩ましさ"の解消はコミュニティとしての工夫/使い分けに依存。立ち上げ期は試行錯誤が続く可能性はある
強調しておきたいのは、別に上記の議論は「じゃあオンラインをやめよう、やっぱアナログだよね」と言う話がメッセージではありません。もしかしたら「オンラインがいいのか、オフラインがいいのか?」というような極端な議論になってしまうかもしれず、それはコミュニティとして望ましい方向性ではないと思っています。あくまで「どうやって活用するの?」という問いが良いと思っています。

例えばですが、(b)の接続環境は、事前のテスト等を通じて可能な限り接続ができるようにしておくことや、念のためPC、携帯の両方からアクセスできるようにすることかもしれません。また、万が一接続が切れてしまった際の事後策の合意だと思います。例えば練習などであれば、「再度やり直し」かもしれませんし、大会であれば「ディベーターであればディベーターの責任」と(割り切って行う)ことも一案かもしれません。

(c)に関しても、早めに利用者が使うということであったり、丁寧なマニュアルの準備等にもあるかもしれません。また、コミに新しい役職としてTechnology Officerかもしれませんが、技術面に関していつでも質問できる、ホットラインが重要になるかもしれません。(1人では全部に対応できないので、もしかしたらLINEグループ、Facebookグループ等のように、困ったらここ、みたいな風にするのかもしれません。)

(a)や(d)はより難しい問題ですが、(a)は、まずは顔が見えるツールを使うということかもしれませんし、すでにお互い顔見知りと言う関係であればまずは使おうよ、と言う話かもしれませんし、あとはあえて「見えないことが良い」(≒むしろ人のバイアスが減る?)ということに注目する、等かもしれません。(d)はルールの準備等かもしれませんね。

・どんな方法も完璧ではない。あくまで補完関係で、みんなで「どう使うのか」議論しよう
再度強調したいですが、オンライン/オフラインはそれぞれの良さがあります。最初に書いたように、アクセシビリティや柔軟性のメリットは、オフラインの大会よりも勝っているかもしれません。一方で、諸々の懸念もあったりします。ディベートで言う"not mutually exclusive"じゃないですが、オフラインでも起きる問題じゃん、のような話もあると思います。(例えば、不正行為等。)

やはりここからはコミュニティ全体で議論していくタイミングになると思います。なぜなら、例えば現在コロナ対策で必死に大会をオンラインで開くことになると思います。その中で何か失敗や問題があった際に、例えば、それが安易なコミ批判になることは避ける必要があると思います。(コミだって分からないこと、予想できないこともあると思いますし。)また、メリットがある中で安易に「これだからオフラインだ!」という風潮になり、オンラインにより恩恵を受けられる芽をつむことも良くないと思っています。どのような技術/新しいものにもつきものですが(パソコン/スマホ全般、Uber/Airbnbのようなたらしいビジネス等)、結局は使い方次第だと思います。

・じゃあ、どうするの?

オンラインでディベートに参加することになったら:
早い段階で普段よりも丁寧にオンラインツールを試したりしましょう。Online Tabと一緒の考え方かもしれません。他の人の迷惑を最小化したいですもんね。
また、何かあっても「批判」ではなく「建設的な議論」を意識しましょう。コミはリスクを負ってくれているというのはあると思いますし。

オンラインの大会/練習を運営することになったら:
どのツールを使うのか、どのようなルールを設けるのか、どのように懸念に対応すべきか、というのは過去の参加者/運営者、テクノロジーに詳しい人等も含めて考えつつ、もしかしたらコミュニティからのフィードバックも貰った方がいいかもしれません。
まずはとりあえずは慣れているツール、ということもあるかもしれません。
また、可能な限り使った際の工夫や試行錯誤の内容は、ぜひ可能な範囲でいいので発信してくれると嬉しいです!

どちらにしろ、コミュニティの一員として:
正直ケースバイケースというのは本当にあると思います。オンラインの懸念点は、練習なら普段からどんどん使うことを否定しきらないとも思いますし。一方で、ちょっと慣れていない、こういう懸念が怖い、のような議論もとても重要だと思います。いかにステップを踏んでいくか(まずはやりたい人が練習で使う、等)、かもしれませんしね。難しい議論、意思決定が続くかと思いますし、解は現時点で絶対はないですし、関係者の"腹落ち"が必要だと思いますが、少しずつ前進できればいいなと思います。

こんな感じです。きっと数か月、もしくは1-2年もしたらこんな議論は「化石」になっているのだと思いますが、移行期であるからこそ、ぜひ建設的なディベートができればと思います。


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