2018年11月11日日曜日

その練習、ボトルネックを解消していますか?

1. ボトルネックとは何か?
突然ですが「ボトルネック」という言葉を御存じでしょうか?
ググるとこの定義が分かりやすかったので引用します。
「ボトルネック」とは作業やシステムなどにおいて能力や容量などが低い、または小さく、全体の能力や速度を規定してしまう部分のことを指します。つまり、「ボトルネック」は全体の能力や成果に影響する問題となる要因です。 
大きなボトル(瓶)でも通り道が狭いネック(首)になっていると、一定時間当たりの出る液体の量は少なくなってしまいますよね。「ボトルネック」は、この現象に由来してさまざまなビジネスシーンに利用されているのです。
(参照:https://gakumado.mynavi.jp/freshers/articles/43640)

上の定義にもありますが、ボトルって通り道が広いところと狭いところがあります。全部広ければ一気に水はだーっと出るのでいいのですが、狭いところがあると少なくなってしまいます。その狭いところを広げることを「ボトルネックを解消する」ということとイコールになります。

コンサルティングでも「今の問題のボトルネックは何だろう?」という問いがよくされます。最も効率的に問題を解決しようとすると、「一番影響する原因」に対する処方箋を考えるのが良いからです。これは、特にヒト・モノ・カネや時間が有限である際にとても重要な考え方となります。資源があれば全部できるのですが、そうもいかないからですね。

2. ディベートでも重要なボトルネックの概念
そしてこれはディベートにも応用することができる考え方です。特にディベートは多くの人が長くて4年程費やすことがありますが、365日フルであるわけではありません。大学の授業はもちろんとのこと、他のサークルやバイト等も考えると時間はどんどん限られてくるからです。

今あなたがやっている練習法が「ボトルネックを解消しているか?」という点で見直してほしいというのが私のメッセージです。

凄く言い方を悪くすると「非効率的な努力」に時間を費やし、その結果としてなかなかディベートがうまくいかない、という現象に陥ります。「たくさん練習はしているつもりなのに勝てない」「あんなに練習したのにスピーカースコアが伸びない…」という悩みはないでしょうか?実は私もありました。

3. ボトルネックを解消できていない練習例

練習例1:ラウンド依存症
分かりやすいのはラウンド練にのみ傾注しているパターンです。何度もこのブログでも取り上げているように、ラウンドはある種総合練習であり、特定の能力を集中的に高める上では向いていません。これが「(想定外なことが起きそうな)具体的なラウンドでの立ち回りができない」「最近のディベートやジャッジのトレンドが分からない」というのがボトルネックなのであれば最適な練習なのでしょうが、そうでない場合はラウンドばかりやることは向いていないでしょう。

Debating Cycle Theoryを見ても「ラウンド外」に注目する必要がありますし、どうすれば、上手くなれるのか? -"成長エンジンの設計方法"-でもラウンド依存症が陥りがちな罠としてご指摘させて頂いております。)

練習例2:「とりあえずIR」のリサーチ
他にもよくあるパターンは、とりあえずリサーチ=IRという等式に基づくことです。確かに、IRはできなかった時のインパクトが大きいためIRのリサーチは行いがちです。ですが、これはボトルネックなのか?というのは2つの問いが必要となります。

I. 知識不足と考えた際に、それはIRが最もボトルネックになっているのでしょうか?
例えば、IRは「大会でよく出るのか?」×「あなたが知らないのか?」の2軸で考えた際に最も優先順位が高いものでしょうか?
例えば、akの調査によると、最近の1年生の全国大会でIRの頻出度は11位です。もちろんこれだけで判断するのは浅はかですが(ACの傾向や近年のトレンド等、勘案すべき点は多数あるので)もし、政治、社会的弱者に関する知識が不足しているのであればそちらのほうがより「ボトルネック」ではないでしょうか?


(参考:【即興型ディベート部のマネジメント】練習における議題の選び方

II. そもそも、私はディベート力は大きくは「インプット(知識)」×「プロセス(思考法)」×「アウトプット(英語プレゼン力)」で構成されていると思っています。(厳密には色々他もありますが)
これは一種ボトルネックを特定するフレームワークとして活用できます。

換言すると、何がボトルネックになっているのか、ということをアセスメントできるのはこういう問いができます。
・議題に関する知識が足りない?
・思考力が弱い?
・英語プレゼン力が弱い?

すなわち、ここで実はあなたはそこそこ知識はあるものの、実はそれを短時間でArgumentにする「プロセス」が弱いかもしれません。またはArgumentやRefutationも考えられているのかもしれませんが、英語力が追いついておらずスピーチに反映されていないかもしれません。正しくボトルネックを解消できていない典型例になり得ます。

4. どうすれば、ボトルネックを解消できる練習方法を立案できるのか?

すこし答えを頭出ししていますが、下記の3ステップをおすすめしています。

Step 1: ディベート力の「全体像」を考える
私は「インプット(知識)」×「プロセス(思考法)」×「アウトプット(英語プレゼン力)」が全体像の一つの切り方だと思いますが、他にも「プレパ(個人)」「プレパ(チーム)」「相手のスピーチを聞く」「自分のスピーチをつくる」のように時間軸で全体像を捉えることもできるでしょう。
さらに一段解像度をあげれば、「知識」も、CJS、経済、IR等たくさんあり得ますし、「思考力」もTBH思考法に分けることもできます。
(なお、思考法に関してはこちら、プレゼンに関してはこちらも参考になるかと思います)

Step 2:その中でも特に自分に欠けているものは何か原因を考える
これは、チームメイトやジャッジなどからのフィードバックをたくさん得ることも大事ですが、それらをもとに「なんで勝てないのか?」「なんでうまくならないのか?」という問いを繰り返すことが重要です。
なお、この際コーチを依頼することも効率的です。僭越ながら私の例では、チームとしての思考法の部分をボトルネックと特定し、過去にプレパ・シートを提案したことがございます。

Step 3:実際にそのボトルネック仮説に基づいて練習を行い、成果が出ているか確認する
その後はいったんJust Do Itという世界にもなります。
実際うまくなっているのか、というところを何かしらの方法で「見える化」していくことが重要になります。
分かりやすい指標は勝率やスピーカースコアになるかと思いますが、色々あり得るかと思います。
成果が出ていないのであればボトルネックが違う、もしくはボトルネックは正しく特定しているがアプローチが異なるのどちらかになりますので、それを修正していくことになります。

いかがでしたでしょうか?
ぜひ「ボトルネックを解消している練習」を毎回行ってくださいね。

2018年11月7日水曜日

紙なしスピーチにチャレンジ!

最近お勧めしている練習の一つに「紙なしスピーチ」があります。
文字通り、プレパ用紙を使わずにスピーチをすることです。(プレパ中はOKだが、慣れたら無しも良いかも)

海外のディベートサーキットでは(それこそオックスフォードとかでも)たまにやられる練習スタイルらしいです。

私もやってみたことがあるのですが、下記のようなメリットがありました

スピーチを通じて「イイタイコト」が結晶化(クリスタライズ)される
(結局チームとしてのスタンスは?だとか一番伝えたいことは何か?だとかが必死に分かりやすくなる。特にボトムアップディベーターであるとすごく良いトレーニングかと。)

・上記と関連して、スピーチのストラクチャーが奇麗になる
(1st Argumentで言わないといけない点はこういう風に3点に整理する、のようなことができる、単純化しないと覚えられないので)

・「その場で考えながらスピーチする」ことで、プレパ時間の無駄を省ける
(これはakにとって実は1番のブレイクスルーでした。例えば1年生の時とかって最後の5分は自分で考える時間ね、のようなプレパスタイルが当たり前化していて、「5分は無いとスピーチができない」と思い込んでいました。実はそこまではいらないんだ、ということとかが分かったりします。)

「その場で考えながらスピーチする」ことで、実はその場でロジックとかを深めたり話を取捨選択することができる
(その場では何を言うかとかを丁寧に考えるようになるので、あ、その場で実はもう一つロジック思いついた、というような現象も。)

・(プレパのメモも禁止の場合は)話の流れを必死に頭の中で整理し(Issueの見える化)、重要なポイントとその対応へと取捨選択できる(ボトルネックへの取捨選択)
(これも意外と重要でした。特にBPだとか、AsianのWhipとかになると、紙を書きすぎるクセがあったんだなと思いました。意外とその場で「結局論点は2つでここを倒せばいいのか」と考えられるようになりました。)

もちろん、全員に全員この練習がベストだとは思っていません、が、
・イイタイコトが実はなかなかはっきりしないボトムアップ系ディベーター
・ストラクチャーが汚いと言われるディベーター
・長い間とりあえず最後の5分はスピーチをつくっているディベーター
・議論が整理できないディベーター
・「重要じゃない反論を打っている」と言われるディベーター

にはフィットするかもしれません。仮説的には、1年生とかよりも少し後のディベーターのほうがいいのかもしれません。
ぜひ一度やってみてください。

(追伸:なお、実際にやる際に人によっては「こいつ舐めてるのか?(失礼なんじゃないか?)」みたいな目で見られることもあるようなので、事前に伝えておくといいかもしれません)

2018年10月7日日曜日

akが見た世界トップジャッジ陣のトレンドと、日本のディベート観との比較

今年はKyushu Debate Open、Macau Tournament of Champions、China BPと3つの国際大会に参加しました。

その中で、ひたすらに海外のトップディベーター(近年/今年の、WUDC CA/DCA、Champion、Best Speaker、Australs CA、Champion等)にジャッジされたり一緒にジャッジしたりした中で、akが重視する傾向にあるなぁと感じたことを書いていきます。

(最近国内の大会に顔を出せていないので、日本でもこのトレンドがあるのかもしれませんし、サンプル数は25位なので十分に優位なのかもわかりませんが、ご参考になれば幸いです。また、これらは「近年」重視されはじめたのか、前からなのか、等のところは分からないというところも断っておきます。ややcontroversialになるかもと思いながらも、議論するきっかけになれば幸いです。何かご質問などあればいつも通り当然どうぞ!)

1. Argumentの強さを測るのはWhy true?とWhy important?の2つのレンズ
こちらのMDGによる有名なビデオにもありますが、基本的にArgumentはこの2軸で評価されます。(この2つの掛け算によりArgumentの強度が決定される)

Why true?というのは、akの解釈では、いわゆるメカニズムと呼ばれるような"how"(なぜ起きるのか)が中心となると思います。これは、モーションに関連性の高い(Relevantな)5W1Hにより「なぜ特定のことが起きるのか」というのを深く説明できるか、だと思っています。(なお、Secondary Mechanismの重要性はこちらの記事で書いています)

Why important?というのは、絶対的Impact/相対的Impact両方になるかと思います。(これも同じくこちらの記事で書いています)なお、所説ありますが、特にPrincipleとしてのWhy important?の説明は特に日本勢は下手な傾向にあるのでは?とある海外ディベーターに指摘されたことがあります(大きな主権とか自由とか、正義とかです。)。

事実、直近のChina BPでも、例えば「OpeningはWhy true?はあったけどWhy important?がなかったよね」だとか、「ClosingってWhy importantが無かったから評価できないよね」というコメントが多々存在しました。

なお、これを日本のSQ, AP, Impactと対比してみると、基本的なフレームとしては悪くないのかもしれません。いわゆるWhy true?はSQ, APの説明にあたるかもしれないので。ただ、昨今盛り上がっているSQ, AP, Impact批判論にあえて乗っかるとすると、Why true?を証明する一手段としてのSQ, APのフレームワークとして位置付けるほうが良いのではないか、と個人的には思っています。

なお、ジャッジをしていると「どんなArgumentであってもこの2軸で判断すればよい」と思えるようになるので、よりシンプルにかつ感覚にあったジャッジができたような気がしており、個人的にもお勧めです。フィードバックでも"Why true?というところは例えばX. Y, Zと証明していたけどWhy important?が抜けていたよね"というほうが、海外ディベーターの納得度も個人的に高くなっているように感じました。

2. Counterfactualとの比較でWhy true?を証明
Counterfactualという言葉が最近流行っています。ジャッジでもよく聞きますし、ディベーターも「OGはCounterfactualがなかった」というようなFailure指摘をするようにも増えてきているように思えます。直近でもMacau Tournament of ChampionsのOW(GF Best Speaker, Champion)は1st ClashをOG's missing counterfactualと明示して笑いもとっていました。

Counterfactualは直訳すると「反事実」となりますが、akの解釈では"what would the world look like in their/our world"的に、「もう一方の世界観」だと思っています。例えば、THS the dominant narrative of Xの場合、「Xがdominant narrativeな世界」のcounterfactualは「そうでない世界」になりますが、それは例えば「Xが1 narrativeとなっている世界」もしくは、「Yがdominant narrativeになっている世界」になり得るかと思います。

これを日本の今までのSQ, AP論に当てはまると、SQのcounterfactualは例えばAPにはなり得ることはあると思います。一方で、毎回そうとは限らない(分かりやすいのはcounterplanがあるとき)ので、万全なフレームワークではないのでしょう。特に、Policy MotionではなくAnalysis Motion (THS, THR,等)のときはさらにそうかもしれません。

なお、China BPのBriefingでもAnalysis Motionでは「We need to describe and justify how an alternative world would look」と言っているので、counterfactualがなぜ起きるのかという説明も必要になる(Why true?の説明は当然必用)ことだけ留意ください。

感覚的ですが、本当に多くのジャッジ陣がRFDでも使うことが増えてきているなぁと思ったりしているので、ディベーターとしてスピーチで使うだけでも「おっ」と思わせられるかと思います。事実、China BPで3日目に大きく点数を伸ばしたThe Kansaiチームは、OFも"counterfactualがない"とスピーチにねじ込んでいたところを見ると、アジャストしたのかもしれません。

さらに日本のコンセプトに近づけて論じると、Oppのcounterfactualでは実際もっと悪くなってしまう、という考えだけを見ると、いわゆるBlack Marketの考え方の構図に近いのかもしれません。

3. Mutual Exclusiveであれば、一気に相手のWhy important?を弱体化
ここ数年流行っている概念の一つはMutual Exclusiveかどうかです。Mutual Exclusivityとは、Gov, Opp 2つのModel/Paradigm/Worldにおいてどちらかだけに排他的に存在するか?と問いかけている概念です。要はGov or Oppだけで起きるのか、Gov, Oppどちらでも同じくらい起きるのかという2パターンあるうちのどっちなのか、もし前者であればArgumentとして重要だし、後者であれば重要性ががくっと下がる、というものです。これは上記のWhy true? important?にのっとると、仮にimportanceもめちゃくちゃ説明していたとしてもnot mutually exclusiveということを証明できれば一気に弱くなる、という位置づけになるかもしれません。

もちろん、どのようにExclusiveになるのか/ならないのかというのはディベーターの説明に依存し、何ならそこが論点になることもある、というような感触を得ました。

日本での示唆ですが、反論の型の一つにIt is not mutually exclusiveという型を入れ込む、というのもアリなんじゃないかなと思っています。

なお、余談ですがあるアジアのトップディベーター曰く、この概念はここ数年のトレンドだとか。でも結構アジアでは前から聞いていたような気もしているし、Tateとかも"non-contentious"という反論も結構打ったりしていたなとも思ったので、もしかしたれあHorizontal思考のトップディベーターの中ではずっと概念としてはあったがそれが定着した、ということなのかもしれません。

2018年9月30日日曜日

BP クロージングのプレパ方法

最近よく質問されることの一つが、BPのクロージングでのプレパの方法です。
もちろん絶対的な答えはないと思いますが、ak流のやり方をご紹介します


1. まずはオープニングと同じようにプレパ
まずは普通に考えます。Spiritってなんだろう、1st Principleのクラッシュってなんだろ、一番強い話はなんだろう、具体的なExampleやAnalogyはないかな、変なスタンスとかってあり得るかな、Necessity/Solvency/Justificationは?などです。いわゆるTop-Down, Bottom-Up, Horizontal は全部バランスよく考えます。
意外とOpeningが普通の強い話を埋めない場合もあります。その場合は普通の話を普通にして勝つスタイルになるかと思います。

2. アイデアの種を幅広に出しておく
これは、deputy以降だと必ずやります。普通の話じゃなさそうな話をあえて意識的に探すのが特徴かもしれません。それは例えば、
-中長期的にどうなるのか?(Secondary Mechanismに近いかもしれません) というのも、だいたい最初のメカニズムは強いチームは言うので。
-他のステークホルダーはいないか?(ある程度MECEに考えることも意識します。男性、女性、子供、貧困層、中間層、富裕層、マイノリティ、企業、政府、、、など、イメージとしてスキャニングしていきます。)
-モーションのワーディングの抜け落ちはないか?例えばなんでsubsidy? なんでaggressiveなど、ワーディングのチェックリストじゃないですが、ユニークネスを考えます。

3. オープニングで話されそうなことの仮説を立てる
これが結構大事かもです。強いラウンドになると、オープニングが普通に話すことは話してきます。つまり、1.は既にカバーされていることが多いです。
そうなると、じゃあどうやって抜くか、を考え始めます。それは例えばオープニングだと特定のクラッシュが水かけになりそうだからそれを超えよう。だとか、オープニングなと確実にこの話はされなさそうだからこの話を準備しよう、だとかになります。2.と組み合わせて確実に抜けられそうなNew ideaが1個でも見つかっていればしめたものだと思っています。

4. ラウンド中は、まずどのチームを倒しにいくかを考える
ラウンドに入ると、オープニングのファーストコンタクトの段階で、まずどこにどう勝とうか考え始めます。例えば自分のオープニングが圧倒的に強い場合は、斜めのオープニングにエンゲージしてもゾンビを倒してるだけで無意味です。逆に斜めが強くそこを対処する、またはオープニングがデッドロックになっていそうでそれを超える、とかもあるかと思います。または、クロージングになるとオープニングをごっそり抜きにかかり、クロージングの横のチームを上回る、というパターンもあります。いわゆるオープニングをBox Outしにかかる魅せ方になるかと思います。
また、試合によっては必死に2位をとりにいく、というのも戦略です。BPは、GF以外は1位になる必要はないのですから。

5. 3チームより上になる理由を考える
最後に、3チームを上回る理由を明示できるとなおよしです。なんであなたのチームはオープニングを超えているのか?横のクロージングを超えているのか、が大事です。もちろんIssue-basedが基本となり、一番クリティカルな論点に答えた、とかもあり得ます。
また、Macau Tournament of Champions 2018 GFでは、COがあえてほかの3チームのFailureをClashにするという面白い戦術を使っていました。1. OG’s missing counterfactual 2. OO’s missing mechanism、などのようなやつです。別にこれが良いというわけではないですが、結局相対的Impactを明示する、というところに尽きるかと思います。

2018年9月28日金曜日

海外の高校生/初心者向けトレーニング方法に学ぶ

最近、海外で高校生/初心者向けのディベートのトレーニング方法についてよくヒアリングしているのですが、日本と異なる(かもしれない)特徴がいくつかありました。示唆深いのでシェアします。

・まずは"スピーチ"することに慣れるところから
まずは身近なトピックで行う、母語で行う、準備時間を伸ばす、等としてスピーチをするところから始めることが多いようです。
いきなり7分に向けて話させる、という練習方法も私のときはあったりしましたが、おそらく人によるんでしょうね・・・

・"分析"とは何かを最初に抑える
海外ではArgument(立論)をWhy true?  Why important?の2つで構成していると教えていることが多いようです。(特にヨーロッパでは)。
日本で言うと前者がメカニズム、後者がインポータンス、インパクトとかと教わることが多い気がしています。AREAという型もここで
そしてそれらは、何度もWhy? How?を繰り返していく訓練になるらしく、「こうだと思う、理由はこうだ」「じゃあそれはなんで?」「こうだ」「それはなんで?」という風に対話を繰り返していくようです。
また、面白かったのはある国ではあえて「Example」はなし、という縛りをすることもあるようです。曰く、「Exampleだと逃げてしまう」とのことです。

日本のチームはよく「アイデアは良いが分析が浅い」と言われますが、
これはもしかしたらAREAの型は教える一方で、Rをひたすら深めていく、というところが足りないからかもしれません。例えば、Secondary Mechanismが弱い傾向にあるのは、私も以前この記事で指摘している通りです。

・早い段階で多くのMotionの種類に触れさせる
これは2つ意味があり、①Policy Motionに限らず、Analysis Motion (THBT, THR THS等)と、Actor Motion (TH, as X,...)にも早い段階から触れること、②テーマとしても色々多岐にわたらせること、がポイントのようです。
特に前段の"分析"とは何か、というところが分かっているので、それは普遍的にPolicyだろうが、Analysisだろうが、Actorだろうができるんだろうな~と思いました。
(日本だと、Policy Motion-heavyになっている大学もあると聞いたので、示唆かもしれません)

・反論でも最初から幅広に型を教える
日本だと昔ICUがメソッドにしていた5つの反論の型等もあったかと思いますが、
基本的にはArgumentの構成要素(Mechanism, Importance等)に対応する形で教えることに加え、
高校生の早い段階からEven ifの話をするようです。Argumentに対する反論をDirect Refutationだとすると、Even ifというのはIndirect Refutationだと呼んでいる国もありました。
(日本だと、Rに対するMechanisticな反論は教わる一方、
counterproductive, not mutually exclusive, even ifのようなバラエティを教えるのが少し遅い傾向にある、とヒアリングで聞きました)

ご参考になれば幸いです!

2018年9月3日月曜日

ジャッジのコツ ディベーターの話が理解できないあなたに

ジャッジは難しいですが面白いですし、やりがいもあります。そして何より、ジャッジの存在はディベート界において不可欠です。

かなり前のことですが、Golden Cupに参加した時や、また最近ディベートの初心者の方に対してジャッジのやり方をお話させて頂くことがあります。その際にまず最初に躓くのが「ディベーターの話を理解するところ」になります。「ディベーターが何を言っているのか理解することができませんでした…」という相談を受けることがあります。

これは、①英語力、②最低限の前提知識、③整理(構造化)のどれかがボトルネックになっていることが多いです。

①英語力
①英語力というのは、文字通りとなります。これも解像度をあげて考えると、例えば所謂「1-2年生の海外経験の無い人の話を聞けない」というものなのか「ネイティブの人の話を聞けない」なのかによって処方箋が変わってくるかと思います。前者であればpremitiveではありますが、文法であったり幾つかの単語力というところが良いかもしれません。

個人的には単語力の向上をお勧めすることが多いです。日本語が苦手な方のお話も、いくつかの単語を並べられるとなんとなくわかる、という経験って多いですよね。おすすめブックリスト50にも書きましたが、TOEFL 3800とかはおすすめです。ここでのランク2まで抑えておくとなんとなくは話は分かりますし、ランク3まで行けると大体困りません。後は英語力の向上方法の記事もご覧ください。

また、発音の問題であれば、結構耳で慣らしにいくのも重要です。よくイギリス発音が聞きづらい、というようなこともあるようで、友人はイギリス系のディベーターの音源を聞きまくっていたと言います。

②最低限の前提知識
②の最低限の前提知識、というのは、①ともかなり関わりますがそのトピックごとによくでるコンセプトやアクター等となります。5日間の記事でも書きましたが、1st Principleのような話もありますし、例えばCriminal Justiceであれば、Retribution, Deterrence, Isolation, Rehabilitationというようなコンセプト、lawyer, victim, perpetrator, prosecutor, judge, juryのようなアクターなどは抑えておきたいところです。Economyであれば、negative externalities (負の外部性)、information asymmetry(情報の非対称性)のようなコンセプトや、shareholder, investor, employee, employer, labor unionのようなアクターは知っておきたいところかと思います。ショートカットしたいのであれば幾つかの有名音源をさらっと聞くということでもいいですし、入門書的なものを英語とセットで一気に読んでしまうのもお勧めです。

とはいえ、15分-30分じゃあたふたしちゃいますよね。こういう時は賛否両論ありますが、ACであったり、他のジャッジの人と話をしてみたり、オンラインで少し議論を調べるような人もいるようです。あくまで最低限の前提知識の理解のためであり、その後のバイアスにはならないようには注意が必要ですが。

③話の整理・構造化
③の整理・構造化というのは実はあまり教えられることがないかと思います。結局ディベーターは15分-30分の準備時間しかないため、話がごちゃごちゃしてしまうことがあります。それらをうまくジャッジとして整理することは介入ではなく裁量ですが、これはどういうことでしょうか。例えば、

・ディベーターが伝えようとしていたキーメッセージを要約する(AREAで言う、Aの要約) 
(結局Argumentはこういう話だった、だとかCase(Argument/Refutation等を全て含んだ、イイタイコト)はこういう話だった、ということ) →特にボトムアップ型のディベーターの人は苦手な傾向にあります。

・キーメッセージの理由を整理する(AREAで言う、Rを整理)
(理由を4つあると言っていたが、実は結局2つめと3つめはほぼ同じことだった、等)

のようなことがあります。

人によっては図解することや絵でかくことで話を整理する場合もあります。

この整理・構造化は難しいので改めて詳細は別途どこかで話すかと思いますが、
すぐできるTipsとしてのポイントは2つあります。
(1) 「結局この話って何だった?」「Argumentを一言で言うと何だった?」と自分で問いかけること(ラウンド中に何度も聞きます。特にスピーチとスピーチの間)
(2) メモをとる紙とは別に、ラウンドの全体像が分かる紙を準備。(akの場合は、各スピーカーのフローをとる紙と、まとめる用の紙をわけています)そちらでは、たとえばPMが何を言ったのか、LOが何を言ったのか、等を書いていたり、BPであればチームとして何を言っていたかというキーワードを複数書いてあります。deterrence!とか、rehabilitation!とかそういうレベルだったりします。クリティカルな反論とかが来た場合はそれもNot mutually exclusive!のように書くこともあります。ポイントは「大きな流れ」を常に見える化することです。

いかがでしたでしょうか。ディベーターの話が理解できない方がよく陥りがちな3つのパターンに分けて紹介してみました。どれもすぐ出来るようになるものではないですが、いくつかTipsも書いてみたのでぜひ実践してみてください!

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主要記事まとめはこちら
※ ジャッジの部分では、よくあるディベーターからの疑問の解消法や、BPのジャッジのコツ等も書かれているのでぜひあわせてご覧ください

2018年8月4日土曜日

Do not reinvent the wheel!

最近、上級生の人に教育関係のお話をさせて頂く際に、
"Do not reinvent the wheel!"とお話させて頂いております。

Wikipediaによると下記の意味です。
車輪の再発明(しゃりんのさいはつめい、英: reinventing the wheel)は、車輪を題材にした慣用句であり、世界中で使われている。「広く受け入れられ確立されている技術や解決法を知らずに(または意図的に無視して)、同様のものを再び一から作ること」を意味する。
すなわち、実は簡単に学べることがあるにもかかわらず、それを苦労して学んでいる構図があるのではないでしょうか、と思っています。

例えばPrincipleに関して、特定の専門性(法律、経済、IR)、戦術(BPのClosingでの勝ち方)等に関しては、コミュニティを見ていると残念ながらReinvent the wheelが起きているような気がします。

逆にReinvent the wheelをしていない例は、いわゆる基本ルールに加え、AREA、Triple Aをはじめとした、1年生向けのベーシック・ディベート・スキルだと思います。

これは何もあなたのせいというわけではなく、日本ディベート界が持つ構造的な問題なのかもしれません。例えば、3年生で就職活動などをはじめとして一回ディベートから離れてしまうため指導者不足に陥ってしまうことはどの地域でもあるかと思います。ディベート・コーチというロールが(一部の大学が過去に行っていたことはありますが)あまり浸透していないこともあるかと思います。Pro-Amのように上級生-下級生が組む大会があまりないというのもあるかもしれません。また、全体的な運営体制が1年で引継ぎというところで、引継ぎの断絶が起きていることもあり得ます。

抽象化して、一般論としてReinvent the wheelをしないためには暗黙知を形式知化しアクセシブルにすること、もしくは暗黙知を継承できる制度になるかと思います。

>部の運営者の皆様
前者は、いわゆるレクチャー資料づくり、勉強会、資料共有等になるかと思いますが、例えばそれを部の単位でいうとIntelligence機能の具備もありますが、実は「レクチャー/エジュケのノウハウシェア」というところが抜け落ちている気がします。「レクチャーのレクチャー」とかが増えるといいのかもしれませんね。
現役の頃からを合わせると、10校以上に対してエジュケ等の相談を受けましたが、どうやら継続的にはないようです。昔はIXIAという部長会でインフォーマルで行われていた、ということも聞きますが。あと、UTでは伝統的に上級生が春合宿でレクチャラーを務めるような制度になっています。
あとは意外にも、「どこにどういうソースがあるかわからない」という情報の一元管理不足ということも根深いかもしれません。いわゆるディベートを熱狂的に行っている人はJPDUのセミナー資料も全部読んでいますし、ありがたいことに本ディベート自由帳も全部読んでくださっています。また、海外レクチャー系もEUDCも含め見ています。でもそうでないと、そもそも知らない…ということも大きいようです。

後者でいうと、コーチ制等があるかと思います。昔はUTでも例えばBP Noviceに向けて上級生が下級生に教える(最近だと道場という形で続いている模様)とかがあり、AGU等でも取り入れられていたと聞きます。海外ですと、Pro-Amが結構あるみたいで増えたらいいなぁと思っています。ただこれはちょっと留意が必要で、例えば社会人になると正直直前のドタキャンリスクがあっていつも申し訳ないという構図もあったりするので、それが解消されると(オーストラリアだと飛び入り参加とかもできるとか?)さらに嬉しいなと思ったりもします。

>レクチャー担当者の皆様
また、レクチャー担当の個人となると、まずは「類似資料をあさる」「他のレクチャー経験者に話を聞く」というようなところからスタートするといいかと思います。

akもUTでおそらく5年以上にわたって使われたエジュケ資料をつくるにあたっては、先輩のエジュケ資料を全部もらいました。JPDUの資料は全部読みました。Principleの今は有名となったTriple Aの型も先輩とディスカッションしたこともあります。

また、もし可能であればそういったレクチャー資料の公開等も行っていくとよいかと思います。どんな人にとっても「公共財」になるというところがあるといいなと思いディベート自由帳もスタートしているので、もしこのパッションに共感頂いたらぜひ。

Do not reinvent the wheel!