2014年2月24日月曜日

「自分より上手い(?)」とされている人と対戦する時、ジャッジする時の心構え

「オーソリ」という概念は僕は嫌いなのですが、「世間一般的に自分より今のところ成績を出している」とされる人とラウンドすることや、またジャッジとしてラウンドを見る事とはあると思います。

その時、どのようなマインドセットが重要なのでしょうか。

基本的にどちらにおいても、「実はたいしたことないんじゃないか」と思うことだと思います。
もちろんラウンド前・中の話です。私生活で人を見下すとかそういうのではないです、もちろん。
以下、ディベーター編とジャッジ編で分けて話します。

【ディベーター編】
「気持ちの持ち方」と「実際のパフォーマンス」はかなり相関関係があるというのは様々な研究によって明らかになっています。本当ならもっと出来たはずなのに諦めてしまって本来のパフォーマンスが出せないなんて、すごくもったいないと思います。

正直言って、ディベートなんて各モーション、ポジションによって大きく影響が出ますし、パートナーとの相性等も関係してきます。必ずしも相手が過去にブレイクしたり優勝したりしているからって、今回も勝つっていうわけではないのです。

なので、自信を持ってラウンドに入ってください。

一度どこかの投稿で書いたと思いますが、「白人が言ったからといってその瞬間、そのスピーチが日本人が言った内容よりも優れることなんてない」(意訳)ということをTateも言っていました。多くのレクチャラーが日本人にアドバイスする時に「自信を持つこと」と口をすっぱくして言っているのは、どこかで諦めている姿、もしくは自信がなさそうに映っているのかもしれません。

そういう意味で、ドヤ顔をし続けることというのは、すごく大事なんだと思います。

【ジャッジ編】
ジャッジしている時は、ディベートをしている時以上にさらに自信を持っていいと思います。
なにしろ、あなたには大きなアドバンテージがあるからです。ラウンドを客観的に見てよいという。笑

ディベーターはかなりあせっている筈です。プレパ時間も短いですし。それに、毎回良いスピーチをできるとは限りませんし。なので、ミスもでますしディベートのボトルネックにも気づきやすくなります。

それに、必ずしもディベーターの実績とジャッジの実績は比例関係にあるとは限りません。(あるときもありますが。)したがって、堂々とジャッジしてください。

「この話ってモーションの肯定・否定してるっけ?」「疑問に答えてる?」「相手にエンゲージしてる?」というような問いを立てていけば自然にラウンドが見えていくはずです。訓練はもちろん必要ですが。



以上です。もちろん、ディベーター、ジャッジ共に練習をすることは前提にあります。
いざ、ラウンドで「オーソリ(?)」とあたるときや、見るときにこういうことを念頭においておくといいんじゃないかなあという位置づけです。

2014年2月11日火曜日

MDO 2011 Semi Finalとバーデンコントロール

あの有名なMDO 2011 Semi Finalのディベートですね。 TateのPMスピーチも安定していてうまいのは流石ですが、それ以上に輝いているのはLoganのGWのスピーチでしょう。

合理的なバーデンコントロール(burden control)をしている点で特徴的です。

バーデンコントロールとは、「自分のサイドが証明しないといけないことを明確にしたり、必要に応じて下げたりすることによってモーションの肯定や否定につなげる」行程のことです。

例えばTateとかは、"reasonable improvement"をバーデンとしていることがよくあります。独裁国家の民主化とかは一朝一夕にはいかないけれども、これくらいはなるよね。みたいな言い方でうまく説明しようとしています。

今回のLoganの場合、ジョークを使いながら巧みにバーデンをコントロールしているのは流石ですね。
ディベートのバーデン解釈が複数あったところで、「scarce resourceにおけるtrade-offで、prioritizationのディベートである」ということは確かにPMからも言っているのですが、それをかなり明示的に強調している貢献は大きいですね。

留意すべきなのは、「gov/oppのバーデンはこれだ!」というよく分からない、非合理的なバーデンを投げるという印象操作の失敗例とは異なっているということです。バーデンは別にとりあえずディベーターが言ったら発生するわけではなく、あくまでAverage Reasonable Person (or Average Intelligent Voter)として合理的に納得できるものでないといけないので。それは、一般人がモーションをみたときに感覚的に感じるもの、もしくはディベーターの説明から合理的と解釈できるものではないといけないのは、「モーションの肯定・否定」の考え方の根底にもありますね。

今回のLoganは、コンテキストを説明することによって合理的にモーションからこのバーデンが導き出せることを丁寧に話していること、そしてoppが他のフレームワーク(need-base等)ができたはずなのにしなかった、と言っているところが、ディベートのバーデンの解釈をgovにぐっと引き寄せたのではないでしょうか。




2014年2月3日月曜日

ロジックってどれくらい大事なの?

「ロジックってどんくらい大事なんですか?」

という問いは、誰しもがなんらかのタイミングで聞いたり、思ったりしたと思います。
僕自身は非常にロジックを重視するタイプのディベーターであるため、多少なりバイアスはあると思いますが、何度考えても重要な気がします。

もちろん、いくつかの条件はあります。

例えば、「信じられないロジック」は僕も否定しています。
とりあえず無理やりcounter-intuitiveなロジックを出されたり、「それって起きるの?」って思うようなメカニズム。これらは、常識的にとれないものはとれないでしょう。

あと、「伝えたいことを効果的に伝えられなくなるほどのロジック重視」も僕は否定しています。
最近「パブリックスピーキングの要素をディベートへ」という声が前より強くなっているような気がしますが、それは同意しています。第三者に説得的に伝えるには、詰め込みすぎても伝わりませんし。
7分という制約の中で、学問書ほど書くのはできないでしょう。

また、「ロジックだけを重視すること」も僕は違うと思っています。
つまり、人を説得する上では感情的な側面とかも出てくるので。陳腐な二項対立ではありますが、ロジックとイラストのバランス、と言ってもいいかもしれません。
感情を持っている人を説得する上では、感情にも訴えかける必要があるでしょう。


しかし、ロジックはディベートの根幹にあることは間違いないでしょう。

僕がこう主張するのは、主に2つの理由があります。


第一に、ディベートの趣旨を達成する上でロジックが不可欠だからです。
そもそも、「モーションの肯定・否定とは何か?」と考えてみた時におそらく結局のところ、一般人がモーションを見たときにどう思って、その疑問を一つ一つ解消していくに尽きると思います。
よく使う例で恐縮なのですが、THBT Japan should possess nuclear weaponsというモーションであれば、「何で日本が?」「なんで自衛隊でも、軍隊でもなく核武装なの?」という疑問は当然に出てくるでしょう。それらの立証責任が出てくるのは当然であり、立証するには何かしらのロジックが必要になってくるわけです。

ここで、有名な演繹法なり、帰納法なりが登場するわけですね。三段論法とかも演繹法の一つですね。一応Wikipediaから「演繹」「帰納」を引っ張ってきます。
演繹(えんえき、deduction)は、一般的・普遍的な前提から、より個別的・特殊的な結論を得る推論方法である
帰納(きのう、Inductionεπαγωγή(エパゴーゲー))とは、個別的・特殊的な事例から一般的・普遍的な規則法則を見出そうとする推論方法のこと。

ディベートのような構造が出ているところから考えても、例えば法廷でも感情に訴えることも必要なところもあるとは思いますが、それ以上に条文や、判例との関係性が重視されています。

ディベートが人の営みについて議論しており、かつそれを参考としている学問でも「学説」などという形で「論理」が非常に重視されています。

したがって、ロジックが相当大事であることには間違いないでしょうし、また「論理的な説得方法」よりも「感情的な説得方法」を優先する合理的な理由もないように思えます。

第二に、日本人に不足しているところだという問題意識があるからです。

また、この前UADCを優勝したバレリーに「日本人は何が足りないと思う?」って質問したところ、「日本人はマターが少なく、分析が浅い」傾向があると言われました。確かに、UADCに言った時に「分析がまだまだ浅く、もっと深めないといけない」と言われたのは覚えています。ABPに言った時も、「Case Studyや、Comparison, Context (3C)でもっと分析を深めろ」と何度も言われました。

テートと一緒にジャッジをした時も、またはされた時もかなり細かくロジックを追っていることが特徴的でした。テートやローガンが"I have 3 levels of analysis"のように「level」と表現して分析を深めている傾向がありました。

「分析の深さ=ロジック」というわけではないですが、分析の深さとロジックの相関関係は強いと思います。というのも、ロジックなしに分析を深めるとなると、限界がありますしイラスト、Case Studyですら背後のロジックに支えられているからです。

僕が伝えたいのは、ロジックだけを鍛えなくちゃいけない!というメッセージではありません。もちろんバランスはあるので。
ただ、ロジックを軽視するのはまずいですし、ディベーターもジャッジも重視しないといけないでしょうし、たぶん今後も磨いていかないといけないところなんだろうなぁというところです。