2018年9月30日日曜日

BP クロージングのプレパ方法

最近よく質問されることの一つが、BPのクロージングでのプレパの方法です。
もちろん絶対的な答えはないと思いますが、ak流のやり方をご紹介します


1. まずはオープニングと同じようにプレパ
まずは普通に考えます。Spiritってなんだろう、1st Principleのクラッシュってなんだろ、一番強い話はなんだろう、具体的なExampleやAnalogyはないかな、変なスタンスとかってあり得るかな、Necessity/Solvency/Justificationは?などです。いわゆるTop-Down, Bottom-Up, Horizontal は全部バランスよく考えます。
意外とOpeningが普通の強い話を埋めない場合もあります。その場合は普通の話を普通にして勝つスタイルになるかと思います。

2. アイデアの種を幅広に出しておく
これは、deputy以降だと必ずやります。普通の話じゃなさそうな話をあえて意識的に探すのが特徴かもしれません。それは例えば、
-中長期的にどうなるのか?(Secondary Mechanismに近いかもしれません) というのも、だいたい最初のメカニズムは強いチームは言うので。
-他のステークホルダーはいないか?(ある程度MECEに考えることも意識します。男性、女性、子供、貧困層、中間層、富裕層、マイノリティ、企業、政府、、、など、イメージとしてスキャニングしていきます。)
-モーションのワーディングの抜け落ちはないか?例えばなんでsubsidy? なんでaggressiveなど、ワーディングのチェックリストじゃないですが、ユニークネスを考えます。

3. オープニングで話されそうなことの仮説を立てる
これが結構大事かもです。強いラウンドになると、オープニングが普通に話すことは話してきます。つまり、1.は既にカバーされていることが多いです。
そうなると、じゃあどうやって抜くか、を考え始めます。それは例えばオープニングだと特定のクラッシュが水かけになりそうだからそれを超えよう。だとか、オープニングなと確実にこの話はされなさそうだからこの話を準備しよう、だとかになります。2.と組み合わせて確実に抜けられそうなNew ideaが1個でも見つかっていればしめたものだと思っています。

4. ラウンド中は、まずどのチームを倒しにいくかを考える
ラウンドに入ると、オープニングのファーストコンタクトの段階で、まずどこにどう勝とうか考え始めます。例えば自分のオープニングが圧倒的に強い場合は、斜めのオープニングにエンゲージしてもゾンビを倒してるだけで無意味です。逆に斜めが強くそこを対処する、またはオープニングがデッドロックになっていそうでそれを超える、とかもあるかと思います。または、クロージングになるとオープニングをごっそり抜きにかかり、クロージングの横のチームを上回る、というパターンもあります。いわゆるオープニングをBox Outしにかかる魅せ方になるかと思います。
また、試合によっては必死に2位をとりにいく、というのも戦略です。BPは、GF以外は1位になる必要はないのですから。

5. 3チームより上になる理由を考える
最後に、3チームを上回る理由を明示できるとなおよしです。なんであなたのチームはオープニングを超えているのか?横のクロージングを超えているのか、が大事です。もちろんIssue-basedが基本となり、一番クリティカルな論点に答えた、とかもあり得ます。
また、Macau Tournament of Champions 2018 GFでは、COがあえてほかの3チームのFailureをClashにするという面白い戦術を使っていました。1. OG’s missing counterfactual 2. OO’s missing mechanism、などのようなやつです。別にこれが良いというわけではないですが、結局相対的Impactを明示する、というところに尽きるかと思います。

2018年9月28日金曜日

海外の高校生/初心者向けトレーニング方法に学ぶ

最近、海外で高校生/初心者向けのディベートのトレーニング方法についてよくヒアリングしているのですが、日本と異なる(かもしれない)特徴がいくつかありました。示唆深いのでシェアします。

・まずは"スピーチ"することに慣れるところから
まずは身近なトピックで行う、母語で行う、準備時間を伸ばす、等としてスピーチをするところから始めることが多いようです。
いきなり7分に向けて話させる、という練習方法も私のときはあったりしましたが、おそらく人によるんでしょうね・・・

・"分析"とは何かを最初に抑える
海外ではArgument(立論)をWhy true?  Why important?の2つで構成していると教えていることが多いようです。(特にヨーロッパでは)。
日本で言うと前者がメカニズム、後者がインポータンス、インパクトとかと教わることが多い気がしています。AREAという型もここで
そしてそれらは、何度もWhy? How?を繰り返していく訓練になるらしく、「こうだと思う、理由はこうだ」「じゃあそれはなんで?」「こうだ」「それはなんで?」という風に対話を繰り返していくようです。
また、面白かったのはある国ではあえて「Example」はなし、という縛りをすることもあるようです。曰く、「Exampleだと逃げてしまう」とのことです。

日本のチームはよく「アイデアは良いが分析が浅い」と言われますが、
これはもしかしたらAREAの型は教える一方で、Rをひたすら深めていく、というところが足りないからかもしれません。例えば、Secondary Mechanismが弱い傾向にあるのは、私も以前この記事で指摘している通りです。

・早い段階で多くのMotionの種類に触れさせる
これは2つ意味があり、①Policy Motionに限らず、Analysis Motion (THBT, THR THS等)と、Actor Motion (TH, as X,...)にも早い段階から触れること、②テーマとしても色々多岐にわたらせること、がポイントのようです。
特に前段の"分析"とは何か、というところが分かっているので、それは普遍的にPolicyだろうが、Analysisだろうが、Actorだろうができるんだろうな~と思いました。
(日本だと、Policy Motion-heavyになっている大学もあると聞いたので、示唆かもしれません)

・反論でも最初から幅広に型を教える
日本だと昔ICUがメソッドにしていた5つの反論の型等もあったかと思いますが、
基本的にはArgumentの構成要素(Mechanism, Importance等)に対応する形で教えることに加え、
高校生の早い段階からEven ifの話をするようです。Argumentに対する反論をDirect Refutationだとすると、Even ifというのはIndirect Refutationだと呼んでいる国もありました。
(日本だと、Rに対するMechanisticな反論は教わる一方、
counterproductive, not mutually exclusive, even ifのようなバラエティを教えるのが少し遅い傾向にある、とヒアリングで聞きました)

ご参考になれば幸いです!

2018年9月3日月曜日

ジャッジのコツ ディベーターの話が理解できないあなたに

ジャッジは難しいですが面白いですし、やりがいもあります。そして何より、ジャッジの存在はディベート界において不可欠です。

かなり前のことですが、Golden Cupに参加した時や、また最近ディベートの初心者の方に対してジャッジのやり方をお話させて頂くことがあります。その際にまず最初に躓くのが「ディベーターの話を理解するところ」になります。「ディベーターが何を言っているのか理解することができませんでした…」という相談を受けることがあります。

これは、①英語力、②最低限の前提知識、③整理(構造化)のどれかがボトルネックになっていることが多いです。

①英語力
①英語力というのは、文字通りとなります。これも解像度をあげて考えると、例えば所謂「1-2年生の海外経験の無い人の話を聞けない」というものなのか「ネイティブの人の話を聞けない」なのかによって処方箋が変わってくるかと思います。前者であればpremitiveではありますが、文法であったり幾つかの単語力というところが良いかもしれません。

個人的には単語力の向上をお勧めすることが多いです。日本語が苦手な方のお話も、いくつかの単語を並べられるとなんとなくわかる、という経験って多いですよね。おすすめブックリスト50にも書きましたが、TOEFL 3800とかはおすすめです。ここでのランク2まで抑えておくとなんとなくは話は分かりますし、ランク3まで行けると大体困りません。後は英語力の向上方法の記事もご覧ください。

また、発音の問題であれば、結構耳で慣らしにいくのも重要です。よくイギリス発音が聞きづらい、というようなこともあるようで、友人はイギリス系のディベーターの音源を聞きまくっていたと言います。

②最低限の前提知識
②の最低限の前提知識、というのは、①ともかなり関わりますがそのトピックごとによくでるコンセプトやアクター等となります。5日間の記事でも書きましたが、1st Principleのような話もありますし、例えばCriminal Justiceであれば、Retribution, Deterrence, Isolation, Rehabilitationというようなコンセプト、lawyer, victim, perpetrator, prosecutor, judge, juryのようなアクターなどは抑えておきたいところです。Economyであれば、negative externalities (負の外部性)、information asymmetry(情報の非対称性)のようなコンセプトや、shareholder, investor, employee, employer, labor unionのようなアクターは知っておきたいところかと思います。ショートカットしたいのであれば幾つかの有名音源をさらっと聞くということでもいいですし、入門書的なものを英語とセットで一気に読んでしまうのもお勧めです。

とはいえ、15分-30分じゃあたふたしちゃいますよね。こういう時は賛否両論ありますが、ACであったり、他のジャッジの人と話をしてみたり、オンラインで少し議論を調べるような人もいるようです。あくまで最低限の前提知識の理解のためであり、その後のバイアスにはならないようには注意が必要ですが。

③話の整理・構造化
③の整理・構造化というのは実はあまり教えられることがないかと思います。結局ディベーターは15分-30分の準備時間しかないため、話がごちゃごちゃしてしまうことがあります。それらをうまくジャッジとして整理することは介入ではなく裁量ですが、これはどういうことでしょうか。例えば、

・ディベーターが伝えようとしていたキーメッセージを要約する(AREAで言う、Aの要約) 
(結局Argumentはこういう話だった、だとかCase(Argument/Refutation等を全て含んだ、イイタイコト)はこういう話だった、ということ) →特にボトムアップ型のディベーターの人は苦手な傾向にあります。

・キーメッセージの理由を整理する(AREAで言う、Rを整理)
(理由を4つあると言っていたが、実は結局2つめと3つめはほぼ同じことだった、等)

のようなことがあります。

人によっては図解することや絵でかくことで話を整理する場合もあります。

この整理・構造化は難しいので改めて詳細は別途どこかで話すかと思いますが、
すぐできるTipsとしてのポイントは2つあります。
(1) 「結局この話って何だった?」「Argumentを一言で言うと何だった?」と自分で問いかけること(ラウンド中に何度も聞きます。特にスピーチとスピーチの間)
(2) メモをとる紙とは別に、ラウンドの全体像が分かる紙を準備。(akの場合は、各スピーカーのフローをとる紙と、まとめる用の紙をわけています)そちらでは、たとえばPMが何を言ったのか、LOが何を言ったのか、等を書いていたり、BPであればチームとして何を言っていたかというキーワードを複数書いてあります。deterrence!とか、rehabilitation!とかそういうレベルだったりします。クリティカルな反論とかが来た場合はそれもNot mutually exclusive!のように書くこともあります。ポイントは「大きな流れ」を常に見える化することです。

いかがでしたでしょうか。ディベーターの話が理解できない方がよく陥りがちな3つのパターンに分けて紹介してみました。どれもすぐ出来るようになるものではないですが、いくつかTipsも書いてみたのでぜひ実践してみてください!

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主要記事まとめはこちら
※ ジャッジの部分では、よくあるディベーターからの疑問の解消法や、BPのジャッジのコツ等も書かれているのでぜひあわせてご覧ください