2018年10月7日日曜日

akが見た世界トップジャッジ陣のトレンドと、日本のディベート観との比較

今年はKyushu Debate Open、Macau Tournament of Champions、China BPと3つの国際大会に参加しました。

その中で、ひたすらに海外のトップディベーター(近年/今年の、WUDC CA/DCA、Champion、Best Speaker、Australs CA、Champion等)にジャッジされたり一緒にジャッジしたりした中で、akが重視する傾向にあるなぁと感じたことを書いていきます。

(最近国内の大会に顔を出せていないので、日本でもこのトレンドがあるのかもしれませんし、サンプル数は25位なので十分に優位なのかもわかりませんが、ご参考になれば幸いです。また、これらは「近年」重視されはじめたのか、前からなのか、等のところは分からないというところも断っておきます。ややcontroversialになるかもと思いながらも、議論するきっかけになれば幸いです。何かご質問などあればいつも通り当然どうぞ!)

1. Argumentの強さを測るのはWhy true?とWhy important?の2つのレンズ
こちらのMDGによる有名なビデオにもありますが、基本的にArgumentはこの2軸で評価されます。(この2つの掛け算によりArgumentの強度が決定される)

Why true?というのは、akの解釈では、いわゆるメカニズムと呼ばれるような"how"(なぜ起きるのか)が中心となると思います。これは、モーションに関連性の高い(Relevantな)5W1Hにより「なぜ特定のことが起きるのか」というのを深く説明できるか、だと思っています。(なお、Secondary Mechanismの重要性はこちらの記事で書いています)

Why important?というのは、絶対的Impact/相対的Impact両方になるかと思います。(これも同じくこちらの記事で書いています)なお、所説ありますが、特にPrincipleとしてのWhy important?の説明は特に日本勢は下手な傾向にあるのでは?とある海外ディベーターに指摘されたことがあります(大きな主権とか自由とか、正義とかです。)。

事実、直近のChina BPでも、例えば「OpeningはWhy true?はあったけどWhy important?がなかったよね」だとか、「ClosingってWhy importantが無かったから評価できないよね」というコメントが多々存在しました。

なお、これを日本のSQ, AP, Impactと対比してみると、基本的なフレームとしては悪くないのかもしれません。いわゆるWhy true?はSQ, APの説明にあたるかもしれないので。ただ、昨今盛り上がっているSQ, AP, Impact批判論にあえて乗っかるとすると、Why true?を証明する一手段としてのSQ, APのフレームワークとして位置付けるほうが良いのではないか、と個人的には思っています。

なお、ジャッジをしていると「どんなArgumentであってもこの2軸で判断すればよい」と思えるようになるので、よりシンプルにかつ感覚にあったジャッジができたような気がしており、個人的にもお勧めです。フィードバックでも"Why true?というところは例えばX. Y, Zと証明していたけどWhy important?が抜けていたよね"というほうが、海外ディベーターの納得度も個人的に高くなっているように感じました。

2. Counterfactualとの比較でWhy true?を証明
Counterfactualという言葉が最近流行っています。ジャッジでもよく聞きますし、ディベーターも「OGはCounterfactualがなかった」というようなFailure指摘をするようにも増えてきているように思えます。直近でもMacau Tournament of ChampionsのOW(GF Best Speaker, Champion)は1st ClashをOG's missing counterfactualと明示して笑いもとっていました。

Counterfactualは直訳すると「反事実」となりますが、akの解釈では"what would the world look like in their/our world"的に、「もう一方の世界観」だと思っています。例えば、THS the dominant narrative of Xの場合、「Xがdominant narrativeな世界」のcounterfactualは「そうでない世界」になりますが、それは例えば「Xが1 narrativeとなっている世界」もしくは、「Yがdominant narrativeになっている世界」になり得るかと思います。

これを日本の今までのSQ, AP論に当てはまると、SQのcounterfactualは例えばAPにはなり得ることはあると思います。一方で、毎回そうとは限らない(分かりやすいのはcounterplanがあるとき)ので、万全なフレームワークではないのでしょう。特に、Policy MotionではなくAnalysis Motion (THS, THR,等)のときはさらにそうかもしれません。

なお、China BPのBriefingでもAnalysis Motionでは「We need to describe and justify how an alternative world would look」と言っているので、counterfactualがなぜ起きるのかという説明も必要になる(Why true?の説明は当然必用)ことだけ留意ください。

感覚的ですが、本当に多くのジャッジ陣がRFDでも使うことが増えてきているなぁと思ったりしているので、ディベーターとしてスピーチで使うだけでも「おっ」と思わせられるかと思います。事実、China BPで3日目に大きく点数を伸ばしたThe Kansaiチームは、OFも"counterfactualがない"とスピーチにねじ込んでいたところを見ると、アジャストしたのかもしれません。

さらに日本のコンセプトに近づけて論じると、Oppのcounterfactualでは実際もっと悪くなってしまう、という考えだけを見ると、いわゆるBlack Marketの考え方の構図に近いのかもしれません。

3. Mutual Exclusiveであれば、一気に相手のWhy important?を弱体化
ここ数年流行っている概念の一つはMutual Exclusiveかどうかです。Mutual Exclusivityとは、Gov, Opp 2つのModel/Paradigm/Worldにおいてどちらかだけに排他的に存在するか?と問いかけている概念です。要はGov or Oppだけで起きるのか、Gov, Oppどちらでも同じくらい起きるのかという2パターンあるうちのどっちなのか、もし前者であればArgumentとして重要だし、後者であれば重要性ががくっと下がる、というものです。これは上記のWhy true? important?にのっとると、仮にimportanceもめちゃくちゃ説明していたとしてもnot mutually exclusiveということを証明できれば一気に弱くなる、という位置づけになるかもしれません。

もちろん、どのようにExclusiveになるのか/ならないのかというのはディベーターの説明に依存し、何ならそこが論点になることもある、というような感触を得ました。

日本での示唆ですが、反論の型の一つにIt is not mutually exclusiveという型を入れ込む、というのもアリなんじゃないかなと思っています。

なお、余談ですがあるアジアのトップディベーター曰く、この概念はここ数年のトレンドだとか。でも結構アジアでは前から聞いていたような気もしているし、Tateとかも"non-contentious"という反論も結構打ったりしていたなとも思ったので、もしかしたれあHorizontal思考のトップディベーターの中ではずっと概念としてはあったがそれが定着した、ということなのかもしれません。