2019年5月3日金曜日

"戦場"としたいイシュー、選んでいますか?

令和になりましたね。皆さんいかがお過ごしでしょうか。

今日はディベートの戦略のヒントとなることに関してお話したいと思います。

突然ですが、皆さんは「"戦場"としたいイシュー」を選んでいますか?
それとも、取り急ぎ思いついた幾つかのイシューやアーギュメントを出していますか?
(※ イシューは、取り急ぎ相手から反論もされる"観点"、"Clash point"と同義だと思っていただいて構いません。)

最初のうちは思いついたイシューでの「ごり押し」でも勝てるのですが(何を隠そう私もそのタイプのディベーターです…)上手い相手になると、どのイシューを選ぶのか、所謂「イシュー・セレクション」が重要になります。(TBH思考法でいうHorizontalの話かもしれません。)

1. なぜ"戦場"としたいイシューが重要か?

少し話を抽象化して、「勝てる土俵を選ぶ」という表現はご存知でしょうか?自分に有利となるような分野であったり、テーマであったり、"モノサシ"であったり、色々あるかと思いますが、どこで戦うかが重要だということを表しています。

ディベートの各議題において、Gov/Oppが公平だということは、つまりは「Gov、Oppどちらにとっても有利な土俵が存在している」という意味でもあります。

より卑近な話で言うと、かなり相手から反論"されづらい"、とても強いイシューがあり得ます。説明責任も軽く、直観的(Intuitive)な話が多いかと思います。
例えば、THW mandate organ donations after death.というようなモーションで、Governmentで臓器不足が一定解消され、命が助かることはOppositionとしては戦えはしますがなかなか反論しづらいでしょうし、THW ban cosmetic surgeryのOppositionで、奇麗になれる、嬉しい、というような話も強いかと思います。

もちろん、それぞれそのような強いIssueへの対応策は諸々考えるのですが、「勝てる土俵」(≒戦場としたいイシュー)かというとそうではなく、「不利な土俵」(≒戦場とはしたくないイシュー)であることは間違いありません。

必死にミクロな反論を4-5個うったところで、「弱められてはいたが、残った」(≒mitigatoryだった)と評されることが多いかと思います。結局Closeになっても勝てない、というのはこれが原因だったりします。

2. "戦場"としたいイシューはどのように見つけるか?

では、どのようにして戦場としたいイシューを見つけるのでしょうか?

第1に、自分として"戦場"としたい基準を幾つか持っておくことが重要となります。これは、前述したような、説明責任の軽さや、直観的か否かということが基準になり得ます。Moral High Groundをとれるか(≒聞こえの良い話ができるか)、というようなものも直観的の一要素かもしれませんがあるでしょう。場合によっては、自分が知識的に知っている分野であったり、自分の信条とフィットしており話しやすい、というようなこともあるかもしれません。いずれにしろ、まずは議論単体であったり、あなたの強みと照らし合わせて考える部分が存在します。

第2に、相手に「反論されづらい」かどうかを見る必要があるかと思います。ここでは、自分の話に対して相手がどのように反論してくるか、何度か行ったり来たりすることがオススメです。どのような角度から来ても、そこそこ残りそうな話であればそれを"戦場"として相違ないということかもしれません。

第3に、あくまでこれは「相対論」となるので、他のイシューと簡単にでも良いのでスキミングできると良いです。つまり、複数イシューがあり得る場合はその中でもどれが強くなりそうか、という比較になり得ますし、相手が出してきそうな最も強いイシューと同じなのか、そうでないのか等も勘案できるとベストです。

3. どのように自分の"戦場"に持ち込むか?

ここまでくると、どの戦場で戦うかは分かったので、次は実際にその戦場に持ち込む必要性が出てきます。ここはある程度ケースバイケースではあるものの、例えば下記のような戦術が考えられます。

(a) その"戦場"に時間をかける
分かりやすい話かもしれませんが、1st Speakerの最初のArgumentから含め、スピーチのエアタイムを増やすことは一つできることかと思います。ジャッジとしても無視しづらいので。そして単に同じことを繰り返すのではなく、ロジック、例等可能な限り強めます。これをある種"squeeze the argument", "leverage the argument"というような表現を海外勢はしています。最大限活用するということかと思います。
(なお、ただし、結局のところArgumentは量×質なので、質があまりにも悪いとジャッジとしても判断してくれませんが…。)

(b) その"戦場"がなぜ大事か説明する
"This debate is about..."というようなフレーミングが一時期流行していましたが、このイメージです。なぜ話しているIssueが最も重要なのかを明示的に説明することが一手となります。結局はこのtradeoffが普通だよね、というSpirit of the Motionや、Core Issueに近いことを示すことであったり、相手の話を踏まえて"このイシューが最も重要だよね"ということを明示的/暗黙的なコンセンサスだとしてしまうパターン等諸々あります。

(c) 相手の"戦場"が関係ない/重要ではないと言いに行く
なぜ相手の話が重要ではないか、ということを示しに行くことも一つの戦術となります。明らかに関係ないよね、インパクト小さいよね、Exclusiveじゃないよね、Set-upと関係ない話をしているよね、等色々あるかと思います。

4. どのように"戦場"選びを型化していくか?

これらを一過性の取り組みとしないためには、幾つかの方法論があります。

・プレパの一つの問いにしてしまう(例えば、以前プレパ・シートについて書いたかと思いますが、ポイントとなるのは思考を走らせるための問いなので、そこに入れるのが良いかと。)
・"戦場"の基準を精緻化していく (2.の話ですね。これは、例えばうまいディベーターがどのようなイシューを最初に選んでいるのか、ジャッジがどのようなイシューでVoteを決めたのか、というようなところから考えるのも一手となります)
・大きな対立軸(≒Cookie Cutter)とセットで覚える (こちらの記事でも書きましたが、「大きな対立軸」っていくつかあります。結局はトレードオフがある程度ディベートは不可避なので、例えばRetribution vs Rehabilitation、Economy vs Environment等、幾つかのパターン認識を持つというのも効率的です)
・"戦場"選びに失敗したパターンのストック (akもよくやるのですが、なぜ失敗したのかを深堀りします。自分のバイアスが入りすぎた、相手に細かく対応しすぎた、等幾つかの恥ずかしい失敗事由にたどり着きます…)


いかがでしたでしょうか。ぜひ"戦場"としたいイシューを正しく選んでくださいね!

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主要記事まとめはこちら

2019年3月28日木曜日

3 Motions、どうやって選んでいますか?

Asianの醍醐味の一つでもある3 Motion。どうやって選んでいますか?というとなかなか答えられない人もいらっしゃいます。

ここでは、ak流のポイントを幾つかご紹介します。

① 3つの順番ではなく、まずはVetoを決める

もちろん、1, 2, 3を付けるのが最終的には大事なのですが、その中でも1, 2をどちらにするかという論点よりも、「どれをVetoするか(≒3にするか)」という論点のほうが重要です。つまり、自サイドにとって一番難しそうなモーションを選びぬくのです。

したがって、最初に3人で話し合う時は、どれをVetoするかをまずは話しましょう。

例を一つ出すと、下記のような状況になったとしましょう。

モーション Xさん Yさん Zさん
  A    1   1   1
  B    2   3   3
  C    3   2   2

この場合、Aは行うということなのでしょうが、BとCのどちらをVetoするのか?という点を最重視して議論すすことになります。この場合Xさん例えばCをVetoする理由を話し、Yさん、ZさんがBをVetoする理由を説明し、その比較を行うことになるかと思います。

② Vetoの"基準"をチームで共有する

Vetoがなかなか決まらないときにありがちなのは、Vetoの基準がチームとして存在しないことに起因することがよくあります。(もちろん、そもそもモーションがチームで見たときに悩ましい、のようなケースもありますが)巷でよく使われる基準としては下記のようなものが多いかと思います。

- 自サイドの分かりやすい、強い話が最後まで立つか?
- 相手サイドの分かりやすい、強い話にカウンターできるか?
- バーデンが重くないか?(all、neverのような場合は要注意。またモーションの性質上、分かりやすいか)
- Strategic Stance(model, counter-plan)によって大きく不利にならないか?もしくは有利にできないか?
- 自分たちが話しやすいか?(スタイルとして慣れている話、知識面でよく知っている話)

結局のところ、これらを総合してakは「勝ち筋が見えるか?」という観点を最重視しています。3行くらいでReason for decisionを説明できそうな試合展開ができそうか、というところですね。

このように基準を言語化しておけると、ブレイクラウンドなどあわただしい時にも慌てずに、基本に忠実に決めることができることが多いです。

③ 本当に困ったときの意思決定方法を決める

とはいえ、悩むことはあるかと思います。そうした際の決め方も事前に決めておくと納得感が高まりやすいです。

学生で現役だった頃からよく使っている基準は「リーダーが話しやすいか」です。結局のところリーダーでがん立ちさせる、ことが勝ちへの第一歩だからです。リーダーが自信がないと、後手に回ってしまいますし、プレパ中もMatterの共有で大きく時間を使ってしまうことにもなりかねない、という側面もあります。

他にも使ったことがあるのは、多数決です。これも分かりやすいですね。また、だれか意思決定者を置くというパターンもあります。これは賛否が分かれるかもしれませんが、「負けたら先輩のせい」マインドの重要性は以前「後輩と組む時に ~akが考えていたこと、やってもらえて嬉しかったこと~」でも書いた通りですが、あえてakが責任をとるというパターンもありました。何かあったら「僕がvetoをしくったから」ということも言えますし。また、思わぬ副産物として、「絶対に逃げられない」状態になるために必死に考えるようになるというメリットも実はあります。

④ ベストは1分半で意思決定する、という水準感で無駄をそぎ落とす

日本だと5分かけることが当たり前だという状況かと思いますが、UADCに2回、Australsに1回選手として行った経験から、中堅~強豪チームは1分半程で(場合によってはより早く)決めてきます。その時に衝撃を受けた覚えがありました。

「なんとなくの5分」の上限に甘えていたかもな、とその時思い、それ以降プレパ練では1分半で決めれるような目標として行っていました。

実は、①~③を念頭に何度かチームで合わせておくと、ディスカッションを効率的に行う仕掛けをセットにすれば十分に実現可能な水準です。「なんで1分半でできなかったんだろう?」と考えると、無駄が色々見えてきます。

例えば、細かい話でいうと、akはそのために、モーションを紙に書かないで考える癖をつけました。(書いている間に1分くらい立ってしまうことを経験したので、明確に問題だったなと思い。)

akがコーチした事例だと、他にも実はダラダラ話してしまっていた、すぐ確認したほうがよかったwordingを議論しなかった、gov/oppをしっかり確認していなかった、などよくありがちなミス・無駄に気づくというパターンなどもありました。


以上、3 Motionsの選び方に関するポストでした。

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主要記事まとめはこちら
3 motionsを選んだあとのプレパなどに関しては、「プレパ・シート」のシリーズなどがおすすめです。

2019年2月24日日曜日

Point of Information (POI)の4類型

Point of Information (POI)は即興型ディベートの醍醐味ともされています。競技ディベートの観点では、勝敗を分けえる理由にもなります。(例えば、私はある大会の決勝でPOIのやり取りの関係で優勝を逃したこともあります…)

一方で、POIに関するフィードバックはコミュニティとして少ないかと思います。この前のTitech Cupであるジャッジの方にPOIの話を(おそらく10年目で初めて)され、そういえばPOIに関して体系的に考えたことはあまりなかったな、と思い記事にしてみようと思いました。

私はPOIは4類型あると思っています。下記の4点です。
1. Clarification (確認)
2. Reminding/Hinting your argument (議論の提示)
3. Failure(相手の議論の欠点の指摘)
4. New rebuttals(新しい反論)

ak的には、幾つかのポイントがあるかと思います。

1. 4類型を引き出しとして具備せよ
POIは例えばこの4類型あるんだな、と自覚しておくことにより戦略の幅が広がります。つまり、「今はこのPOIのほうが有効だな」と言う風にケースバイケースで判断することにもつながりますし、場合によっては自分のPOIが偏っていることに気づくこともあります。まずは、自分として4つとも使いこなせるようになっておくという意識からスタートしましょう。

2. Clarificationは、最低限にすることが原則(他の3類型を基本は優先)
ただ単純な聞き逃しへの対応としてのClarification(これも定義に入りますか?等)はしっかりチームとして聞きましょう、ということに尽きるので割けるようにしましょう。どちらかというと、例えば定義が広くなり得る場合に確認し自サイドの議論を立たせようとするための確認であったり、Stanceをとらせることによって相手のケースの一貫性をつく/相手の説明責任を増やす、のような戦略的な面を除いてあまり有効ではない気がします。行うとしても1st Speaker相手かと思います。

例えば古い例で恐縮ですが、WUDC 2010 QFのTHW ban procedures that alters racial appearance.というようなモーションで、OGに対してCOはHow is this different from gender reassignment surgery?のようなPOIをしていたかと思います。これはOGが他のProcedureとの差分を説明することをある種強いているかと思います。ただ、BPという性質上、あまり議論を出しすぎるとOOに取られてしまうというなか行っているPOIだということに留意は必要です。

3. 自分が直接的に反論できないときはNew Rebuttalsを使え
AsianであればOWが新しい議論を出してきたとき、BPであればOpeningがClosingに対してであれば④のNew Rebuttalsが有効になり得ます。

特にBPであれば、直近のChina BP 2018のSFで、あるチームがOOで、CGと競っている際に、COがCGのコアとなる議論に反論していませんでした。その際GWに対してOOが直截的に反論し、それに対して対応できなかったCGを落とす理由になるなと思いながら見ていたところ、世界大会のDCAも含む他のジャッジも重くとっており、OOが上になりました。

直近のAsianのシーズンにおいても、OWで一気に議論を出される際に競っている場合はひっくり返し得る大きなファクターとなるのでぜひ活用しましょう。

4. これらの4類型は組み合わせも可能
必ずしもすべてのPOIがこの4つのどれか、というわけではなく、重なる部分もあります。便宜上分けていますが、例えばComparison的なPOIだと②と④が混ざるかと思います。具体的には、We told you the argument of X, how is this more important than Y in terms of utility?のようなPOIであれば、反論しながら自分の議論を押していることにもなるかと思います。

また、自分がすでにはなしたArgumentに対して反論が来ており、それに対する再反論で例を一つ入れ込む(直近ですと、Macau Tournament of Champions 2018のOGのImranがCOに対して行っていたような、他の国の例が当てはまらないというような反論)は、④にあたりつつも、②にも一部あたるようなものとしても捉えられるかもしれません。


以上、なかなか学ばないPOIに関するエントリーでした。

2019年1月7日月曜日

ディベート関連のお勧め資料一覧(暫定版)

2019年もどうぞよろしくお願いします!
以前Do not reinvent the wheel!という話をしましたが、では具体的にどういう資料をお勧めしているのかという話をさせてください。

(皆様の情報提供に応じて適宜アップデートしますので、お勧めの資料があればご教示ください!)

【日本語】

JPDU Resources
有名ディベーターの資料がたくさんあります。1年生の時にその時ネットにあがっていたものは全部読みました。もちろん、今の文脈では少し古くなってしまっているものもありますが、示唆に富みます。例えば、以前も、もし初心者が5日後に大会に出ないといけないとしたら、という記事でご紹介しましたがこちらのページにある奥田さんのPrinciple等は素晴らしいです。インテリジェンスに裏付けられておりかつ実践的です。
また、こちらのBPの資料は実は世界トップクラスのコーチであるローガン、シャーミラ等がレクチャーしていたADIの資料なので初心者向けではありつつも本質的な内容になっています。

Asian Bridge関連の資料
1年生のAsian入門の大会では、毎年教えることもお上手な方がお話されています。例えば2013年の分はこちらにありますが、例えば2018年はUTの栗田さんの戦略や、WADの藤田さんのArgumentに関するレクチャー資料はとても示唆に富みます。どちらも理論と具体例のバランスが素晴らしく、さすが1時代を築いたディベーター達ですね。(他の資料はFacebook Page等に上がっているかと思います)

去年の西日本のBP Noviceでは、色々な方々がディベートの練習方法などに関して書かれています。例えば、田中さん(仮)の「復習」という内容は骨太ですし、お勧めです。いかにしてPDCAサイクルを回すかということが具体論で書かれています。また、歴史的に見ても関西で殿堂入りするであろうディベーターである鍋島さんの練習方法に関する記事は、ぜひ地方大学/EFL/伸び悩んだディベーターには読んで欲しいです。

各種団体/大学ブログの記事
様々なブログで名記事があります。例えば、JPDUブログでは、圧倒的な分かりやすさを武器に独自のスタイルを築き現在はHPDUでもチーフコーチを務めている小野さんはAsianの在り方を一つ提示しています。他にも各大学のブログでは、色々な記事があります。

少し古いですが、有志によるブログです。色々な人が書いているのでオススメです。お好きな記事を検索していただければと思いますが、「純ジャパ」としての戦い方、各種大会のモーション解説、経済入門、Whipのやり方等色々あります。全般的に示唆に富みます。

後白 翼(WAD)さんの「debate音源入門」
多くの人が聞いている有名音源をビジュアルにもきれいなパワーポイントでまとめつつ、音源の使い方までしっかりと踏み込んでいる良い資料です。特に1-2年生にはまず勧めたいですね。

田村 光さん(KDS)さんの「How to judge BP rounds」
実力は既にご説明する必要はないですが、理論化に関して個人的に歴史的に見てもピカ一だと思う田村さんのジャッジのAll-In-Oneの記事です。ステップバイステップで相当に丁寧に書かれているので、少しBPをやりはじめたら読んで欲しいです。

yowainuさんの「弱者の遠吠え」
「ディベート留学」「EFL」「地方大学」がキーワードのブログ。動画の解説では有名音源を取り上げていたり、ヨーロッパの名門校・Leidenでのディベート留学での軌跡等も読みごたえがあります。

その他各種個人ブログ
一つ一つご紹介しようと思いましたが、弁論ブログでディベートブログで良記事がありましたのでそちらをご参照ください。(なお、弁論同好会さんは視点が素晴らしく、毎回更新を楽しみにしています)

その他国内のディベートレクチャー
弁論同好会さんがまとめられているこちらのプレイリストがとても良いです。上記でもご紹介しているAsian Bridge以外にも、Asian Okahashi、Gemini等多くの練習会の動画があり、必見です。

【英語】

MonashのDebate Handbook
言わずと知れたオーストラリアの強豪校のMonash大学が出している資料です。First Principleがコンパクトに美しくまとまっています。少し長いですが、ぜひ何度も読み返してほしい内容です。また、MonashのTraining Videoもいいですね。(過去に全部分担してノートをつくる、とかやりました)

EUDC Training Center
最近特に動画を見ているのはこれですね。ディベートのスキル×知識両面で、世界のトップディベーターの分かりやすい動画が多いです。
例えば、最近観てよかったのと思うのはSeven argumentation mistakes to avoid, with Olivia Sundbergですとか、Case strategy and construction, with Ashish Kumarとか。結構全部タメになります。最近のトレンドもわかりますし。

WUDC Mexico Training
2つ前の世界大会のトレーニング資料です。特に一つ目の動画のMDGのFramingの話はシンプルかつ具体的に今のArgumentの在り方を示しているかと思います。また、余裕があればジャッジのマニュアルも読んでみるといいと思います

Alfred SniderのVideo
ディベートの巨匠のディベート動画です。(ホームページの方は動画が残念ながら消えてしまっています…)オックスフォードのリディアン・モーガンのレクチャー等含め、今見返しても面白い動画が多いです。

LoganのVideo
二回も世界大会でCAを行っているアジアのスーパーディベーター・ローガンの動画です。このWhipとReplyに関する動画だとか、具体のモーションのブレストの内容(例はこちら)などもとてもタメになります。

その他個人の動画
・世界チャンピオンであるWill Jonesのディベートレクチャーはこちら
・世界最強豪のSydney大学で、世界チャンピオンであるChris Croke、Steve Hindのレクチャーはこちら

2018年11月26日月曜日

弁論ブログの「アロケーター」記事からakが受け取った3つの問いかけ

最近、キエフ弁論同好会さんが素晴らしい記事を連発しており、更新がとても楽しみです。

特に今回の記事「役職「アロケーター」がいてもいい気がしなくも無い」は、反響も大きいようです。ポイントとしては、従来ACは全ての役割(モーション作成、ジャッジ、アロケーション等)を等しくやると想定されてきていたが、大会運営を効率化するためには「アロケーター」としてアロケーションに専念する役割分担をAC内で行うべきでは、という問いかけです。(もちろんすべての大会で毎ラウンド行うべきか、というのは別の議論でしょうが。)

これだけでも当然示唆深いのですが、背後にある問いかけをさらにak的に深堀りすると、3つの問いかけを見逃してはいけないのではないか、と思いました。

1. 「AC」のベストプラクティスをコミュニティとして引き継ぐ工夫が必要ではないか?
まず、この記事で暗に私が注目しているのはN西さんの存在です。私も一度ご一緒したことがあるのですが、N西さんはまさにAC・コミの両輪どちらでも秀でている能力があり、大変すばらしいと思っていてこの大会でも素晴らしい貢献を果たされたのだな、と思っていました。一方で、ツイッター等の反応を見ると「このような制度は知らなかった」という声及び「この制度って他でもやっていませんでしたっけ?」という一見相反する声があります。これは、「ベストプラクティス」(wikiによると、ある結果を得るのに最も効率のよい技法、手法、プロセス、活動など)がコミュニティとして共有されていないことを示唆していると思いました。

もう5年以上前のことになりますが、私の同期にもAC・コミどちらをとっても優秀なディベーターがいました。彼と一緒にACを行った大会では全て「アロケーター」なる役割が当たり前に存在していました。どこかでやったことを聞いた人、もしくは思いついた「ベストプラクティス」がコミュニティ全体にいきわたれば、reinvention of the wheelも起きないのにな…と思いました。

その意味で、今回のブログは素晴らしいです。まさにコミュニティへの「公共財」を提供することで、ベストプラクティスを共有しているので。Fantasticですね。

2. 「アロケーター」が解決している課題は他の方法でもさらに解消する工夫ができないか?
アロケーターがSolutionだとすると、背後にあるProblemは「遅延リスク」や「ACがスピーディに帰って来ざるを得ないためフィードバックを受けられないリスク」等に当たるかと思います。これらはアロケーターで解決できる部分もあれば、それ以外の方法も取ることでより効果をあげる、というケースもあるかと思います。(また、ジャッジがいなくなってしまう、のようにアロケーターのデメリットを鑑みて採用しない場合の代替案にもなりますね)
例えば、アロケーション周りでakがよく経験した遅れるパターンはパッと見ても下記があります。

・事前にアロケーション・フィロソフィーを決めていない
(最後の方になって、この部屋にどのジャッジを入れるかでもめる、等)

・「質」と「速さ」がトレードオフの際過度に「質」を優先しすぎるアロケーション・フィロソフィーになっている
(例えば、Round 1の結果をすべてRound 2に反映する、等)

・アロケーションのインプットとなる情報をそもそも得られていない
(オフライン・タブの場合はランナーの配置方法等、オンラインの場合はそれとタブとの連携)

・アロケーションの最終責任者を決められていない
(ブログにも少し書かれていましたが、例えばそれはCAなのか、それともDCAのだれかなのか、等)

・(もしアロケーションを全員でやるのであれば)ACを近い部屋にアロケートできていない
(最新のTabだと、部屋もいじれるようですね)

これらともセットでより効率化を目指すことはできるのではないかな、と思います。
そういう意味で、以前取りあげたRyoso Cupも素晴らしいですね。アロケーションが相当に合理的に決められています。

(これは、ある種「大会のコンサル」をakが行った際に作成した「Debate Tournament Frameworkから見た Ryoso Cup 2016、Momiji Cup 2016」の成果物のP.9-10にも引用させて頂いております。(記事はこちら))

3. ACの「役割分担」はアロケーションに限らず考える余地はあるのではないか?
アロケーションはもちろん役割分担を必要に応じてするとして、それ以外の役割分担もセットになるかと思います。

例えば、Adjudication Core Manualでは、ACの仕事をCommunication, Rules/Guideline, Allocation, Motions, Seminar, Presentationの6つに分けています。(5つめと6つめは大会によって異なる)

例えば私が常にベストプラクティスだと信じてやまないLokeの大会ではこの分業も徹底されています。私がこの前行った大会でも最初に役割分担が徹底されました。
具体的には、下記のような役割分担がなされました。

・コミ・参加者とのCommunication=Lさん、(当日の対ジャッジはBさん、ak)

・Rules/Guideline作成・プレゼン=Pさん、Rさん、Jさん、ak

・Motions=リードはBさん、(それ以外も自然に精緻化する人、ディスカッションをファシリテートする人、EFL/ESL等の観点からaccessibilityを確認する人等、ディスカッションをしているうちに自然に役割分担がされました)

・Allocation=草案はTabのGさん、FinalizeはJさん/Hさん
(ポイントは、Tabが相当に世界トップクラスの方でACも何度も行っている方なので、ほぼ草案が通るらしいです。これも示唆深い)

・Presentation(モーション発表スライド、マッチアップ等)周りを奇麗にする役割=Tさん

これらのLeadはCAが行う、もしくは経験者の方がCAにこっそり耳打ちする、とかがいいのかもしれません。


取り急ぎ以上となります。
アロケーターはオプションの1つとして広まることを願いつつ、これら3つの問いに関しても併せてご参考になれば幸いです。

ちなみに蛇足ですが、ブログ記事があると、色々それをもとにインスパイアされるのでいいですね。弁論ブログさんの記事があったおかげでここまで書けました、改めて感謝です。たぶんブログが活発になると、こうやって「ブログ間のディスカッション」とかも増えていい気がします。

2018年11月11日日曜日

その練習、ボトルネックを解消していますか?

1. ボトルネックとは何か?
突然ですが「ボトルネック」という言葉を御存じでしょうか?
ググるとこの定義が分かりやすかったので引用します。
「ボトルネック」とは作業やシステムなどにおいて能力や容量などが低い、または小さく、全体の能力や速度を規定してしまう部分のことを指します。つまり、「ボトルネック」は全体の能力や成果に影響する問題となる要因です。 
大きなボトル(瓶)でも通り道が狭いネック(首)になっていると、一定時間当たりの出る液体の量は少なくなってしまいますよね。「ボトルネック」は、この現象に由来してさまざまなビジネスシーンに利用されているのです。
(参照:https://gakumado.mynavi.jp/freshers/articles/43640)

上の定義にもありますが、ボトルって通り道が広いところと狭いところがあります。全部広ければ一気に水はだーっと出るのでいいのですが、狭いところがあると少なくなってしまいます。その狭いところを広げることを「ボトルネックを解消する」ということとイコールになります。

コンサルティングでも「今の問題のボトルネックは何だろう?」という問いがよくされます。最も効率的に問題を解決しようとすると、「一番影響する原因」に対する処方箋を考えるのが良いからです。これは、特にヒト・モノ・カネや時間が有限である際にとても重要な考え方となります。資源があれば全部できるのですが、そうもいかないからですね。

2. ディベートでも重要なボトルネックの概念
そしてこれはディベートにも応用することができる考え方です。特にディベートは多くの人が長くて4年程費やすことがありますが、365日フルであるわけではありません。大学の授業はもちろんとのこと、他のサークルやバイト等も考えると時間はどんどん限られてくるからです。

今あなたがやっている練習法が「ボトルネックを解消しているか?」という点で見直してほしいというのが私のメッセージです。

凄く言い方を悪くすると「非効率的な努力」に時間を費やし、その結果としてなかなかディベートがうまくいかない、という現象に陥ります。「たくさん練習はしているつもりなのに勝てない」「あんなに練習したのにスピーカースコアが伸びない…」という悩みはないでしょうか?実は私もありました。

3. ボトルネックを解消できていない練習例

練習例1:ラウンド依存症
分かりやすいのはラウンド練にのみ傾注しているパターンです。何度もこのブログでも取り上げているように、ラウンドはある種総合練習であり、特定の能力を集中的に高める上では向いていません。これが「(想定外なことが起きそうな)具体的なラウンドでの立ち回りができない」「最近のディベートやジャッジのトレンドが分からない」というのがボトルネックなのであれば最適な練習なのでしょうが、そうでない場合はラウンドばかりやることは向いていないでしょう。

(Debating Cycle Theoryを見ても「ラウンド外」に注目する必要がありますし、どうすれば、上手くなれるのか? -"成長エンジンの設計方法"-でもラウンド依存症が陥りがちな罠としてご指摘させて頂いております。)

練習例2:「とりあえずIR」のリサーチ
他にもよくあるパターンは、とりあえずリサーチ=IRという等式に基づくことです。確かに、IRはできなかった時のインパクトが大きいためIRのリサーチは行いがちです。ですが、これはボトルネックなのか?というのは2つの問いが必要となります。

I. 知識不足と考えた際に、それはIRが最もボトルネックになっているのでしょうか?
例えば、IRは「大会でよく出るのか?」×「あなたが知らないのか?」の2軸で考えた際に最も優先順位が高いものでしょうか?
例えば、akの調査によると、最近の1年生の全国大会でIRの頻出度は11位です。もちろんこれだけで判断するのは浅はかですが(ACの傾向や近年のトレンド等、勘案すべき点は多数あるので)もし、政治、社会的弱者に関する知識が不足しているのであればそちらのほうがより「ボトルネック」ではないでしょうか?


(参考:【即興型ディベート部のマネジメント】練習における議題の選び方)

II. そもそも、私はディベート力は大きくは「インプット(知識)」×「プロセス(思考法)」×「アウトプット(英語プレゼン力)」で構成されていると思っています。(厳密には色々他もありますが)
これは一種ボトルネックを特定するフレームワークとして活用できます。

換言すると、何がボトルネックになっているのか、ということをアセスメントできるのはこういう問いができます。
・議題に関する知識が足りない?
・思考力が弱い?
・英語プレゼン力が弱い?

すなわち、ここで実はあなたはそこそこ知識はあるものの、実はそれを短時間でArgumentにする「プロセス」が弱いかもしれません。またはArgumentやRefutationも考えられているのかもしれませんが、英語力が追いついておらずスピーチに反映されていないかもしれません。正しくボトルネックを解消できていない典型例になり得ます。

4. どうすれば、ボトルネックを解消できる練習方法を立案できるのか?

すこし答えを頭出ししていますが、下記の3ステップをおすすめしています。

Step 1: ディベート力の「全体像」を考える
私は「インプット(知識)」×「プロセス(思考法)」×「アウトプット(英語プレゼン力)」が全体像の一つの切り方だと思いますが、他にも「プレパ(個人)」「プレパ(チーム)」「相手のスピーチを聞く」「自分のスピーチをつくる」のように時間軸で全体像を捉えることもできるでしょう。
さらに一段解像度をあげれば、「知識」も、CJS、経済、IR等たくさんあり得ますし、「思考力」もTBH思考法に分けることもできます。
(なお、思考法に関してはこちら、プレゼンに関してはこちらも参考になるかと思います)

Step 2:その中でも特に自分に欠けているものは何か原因を考える
これは、チームメイトやジャッジなどからのフィードバックをたくさん得ることも大事ですが、それらをもとに「なんで勝てないのか?」「なんでうまくならないのか?」という問いを繰り返すことが重要です。
なお、この際コーチを依頼することも効率的です。僭越ながら私の例では、チームとしての思考法の部分をボトルネックと特定し、過去にプレパ・シートを提案したことがございます。

Step 3:実際にそのボトルネック仮説に基づいて練習を行い、成果が出ているか確認する
その後はいったんJust Do Itという世界にもなります。
実際うまくなっているのか、というところを何かしらの方法で「見える化」していくことが重要になります。
分かりやすい指標は勝率やスピーカースコアになるかと思いますが、色々あり得るかと思います。
成果が出ていないのであればボトルネックが違う、もしくはボトルネックは正しく特定しているがアプローチが異なるのどちらかになりますので、それを修正していくことになります。

いかがでしたでしょうか?
ぜひ「ボトルネックを解消している練習」を毎回行ってくださいね。

2018年11月7日水曜日

紙なしスピーチにチャレンジ!

最近お勧めしている練習の一つに「紙なしスピーチ」があります。
文字通り、プレパ用紙を使わずにスピーチをすることです。(プレパ中はOKだが、慣れたら無しも良いかも)

海外のディベートサーキットでは(それこそオックスフォードとかでも)たまにやられる練習スタイルらしいです。

私もやってみたことがあるのですが、下記のようなメリットがありました

・スピーチを通じて「イイタイコト」が結晶化(クリスタライズ)される
(結局チームとしてのスタンスは?だとか一番伝えたいことは何か?だとかが必死に分かりやすくなる。特にボトムアップディベーターであるとすごく良いトレーニングかと。)

・上記と関連して、スピーチのストラクチャーが奇麗になる
(1st Argumentで言わないといけない点はこういう風に3点に整理する、のようなことができる、単純化しないと覚えられないので)

・「その場で考えながらスピーチする」ことで、プレパ時間の無駄を省ける
(これはakにとって実は1番のブレイクスルーでした。例えば1年生の時とかって最後の5分は自分で考える時間ね、のようなプレパスタイルが当たり前化していて、「5分は無いとスピーチができない」と思い込んでいました。実はそこまではいらないんだ、ということとかが分かったりします。)

・「その場で考えながらスピーチする」ことで、実はその場でロジックとかを深めたり話を取捨選択することができる
(その場では何を言うかとかを丁寧に考えるようになるので、あ、その場で実はもう一つロジック思いついた、というような現象も。)

・(プレパのメモも禁止の場合は)話の流れを必死に頭の中で整理し(Issueの見える化)、重要なポイントとその対応へと取捨選択できる(ボトルネックへの取捨選択)
(これも意外と重要でした。特にBPだとか、AsianのWhipとかになると、紙を書きすぎるクセがあったんだなと思いました。意外とその場で「結局論点は2つでここを倒せばいいのか」と考えられるようになりました。)

もちろん、全員に全員この練習がベストだとは思っていません、が、
・イイタイコトが実はなかなかはっきりしないボトムアップ系ディベーター
・ストラクチャーが汚いと言われるディベーター
・長い間とりあえず最後の5分はスピーチをつくっているディベーター
・議論が整理できないディベーター
・「重要じゃない反論を打っている」と言われるディベーター

にはフィットするかもしれません。仮説的には、1年生とかよりも少し後のディベーターのほうがいいのかもしれません。
ぜひ一度やってみてください。

(追伸:なお、実際にやる際に人によっては「こいつ舐めてるのか?(失礼なんじゃないか?)」みたいな目で見られることもあるようなので、事前に伝えておくといいかもしれません)