2017年9月10日日曜日

即興型ディベーターは「ディベートノート」と「マターファイル」を持て

即興型ディベートでは、プレパ時間における電子媒体でのリサーチは禁止されています。一方で、今までの紙媒体での資料の持ち込みは可能となっています。

国際大会に行くと、Economistを持ち歩いていたり、「マターファイル(Matter File)」と呼ばれるリサーチした結果を持ち歩いている人がいます。

私も現役時代はファイルでいうと2冊分、特に国際関係のリサーチ結果を中心に持ち歩いていたりしました。(大学院の授業もそれに関連していたので、場合によっては試験用につくったノートがそのままディベートに流用されることもありました)

背景としては、ak_debateは細かい内容まで覚えるのは苦手だったので、細かい地名とか人名とかは持ち歩くことにしていたというところです。特に、議題が多岐にわたる中、全部覚えておくことは難しかったので。

過去に一度もノート/ファイルをしっかりと人に見せたことはありません。ak_debateの競争優位性にかかわるのでお断りしてきました。なのですが、そろそろコミュニティに還元したほうがいいなと思ったので、そのポイントを一部ご紹介します。

私は現役生に対しては、「ディベートノート」と「マターファイル」を持て、とアドバイスしています。

【ディベートノート】
「ディベートノート」とは、ディベートのスキルに関連する内容を纏める本になります。
これは実は主に2パートに分かれていて、①総論と②各論があります。
(ak_debateは面倒くさがりだったので、大きなノートを2分割してつかっています)

①総論:
具体的には、すべてのラウンドで使えそうな理論や自分の癖とその対応法、ロール特有の話、フォーマット(NA, Asian, BP)特有の話に関してまとまっています。(また、細かい話だと英語表現などに関してもまとまっています)

これは、ak_debateはかなり楽をしたい派だったので、上記のようなセクションがすでに分けられており、ジャッジからのフィードバックをその関連する場所に書いていくスタイルをしていました。例えばジャッジからのフィードバックで、「どのようなラウンドでも使える話」が来た瞬間に、関係あるページを探し、そこにコメントを書いていました。

例えば、signpost(いろいろな定義がありますが、ここではArgumentのタイトル)に関する部分では、例えば下記のようなことが書かれています。

・抽象と具体のバランスを必ず持つ
(抽象的な1. principle, 2. practicalは辞める⇒内容がわからないため。一方で、具体的なミクロすぎる話は話が分かりづらくなる)
・(参考)抽象的な話と具体的な話をあえて両方交えるスタイルもあり
(ウィル・ジョーンズっぽく;"or, if you prefer, principle of ..."のように言い換える)
・相手チームも考慮しているようにサインポストする
(in terms of X, which is better?  Nature of Y; a or b?)
・サインポスト間の全体最適も行う
(3つArgumentがあればそのMECE感も担保する。キャラクター/時間軸等)

②各論:
これは、各テーマに応じて使える話を纏めています。
Economics、Politics、CJS、Environmentのような抽象的なレベルで1-2ページずつ使っています。

ここでのコツは、過去に考えた内容はすべて書きつつ、リサーチもして重要なポイントも抑えたうえでラウンドを行い、フィードバックをもらうことです。つまり、「今まで知っている知見」を全力投球した後、フィードバックがくるので「あ、そういう視点もあるんだな」となって進化していくため最大出力が強化されます

例えば、taxというページでは、税金の類型化が(おそらくwikipediaか何かで当時は調べていたのですが)書かれています。富の再分配(redistribution)、景気調整(built-in stabilizer)、(産業保護含む)経済政策(economic policy)、sin taxと書かれています。
(これが網羅的なのかどうかなどはパッと見わからないですが、主要なものがまとまっていたのでしょう)

読み直していて気づきましたが、英語でも必ず書いていたり、関連する事例も書いてあったりするので、すぐディベートで使えるような状態にしている意識があったようです。

このように、ディベートノートは「汎用性が高い内容」になっています。たとえるならば、すべてのラウンドで必ず二塁打が打てるように意識してつくっていました。


【マターファイル】
こちらは、②の各論ノートとの違いが難しいのですが、かなり細かい調査結果になります。ぱっと見直すと、特に国際関係を中心にまとまっています。
イスラエル・パレスチナ問題における主要なステークホルダーや事件、EUにおける仕組みとその意思決定プロセス(ASEANとの比較含む)、アフリカにおける軍事介入の成功例/失敗例とその背後にあるメカニズム等がぱっと見た感じありました。

これらのファイルは正直「ホームラン型」の内容になっており、あたれば遠く飛ぶが、毎回使えるとは限らない内容になっています。なので、優先順位も比較的下げていましたが、もし今またディベートができるならば、こちらを圧倒的に精緻化して勝ちに行くと思います。(職業柄、リサーチも早くなりましたし。。。)

(余談ですが、また、ここは大変ではありますが確実に力がつく道でもあるので、個人/組織として大きな強みを具備できていない場合はチャレンジすることも大事かと思います。)

こちらも、ディベートノートと共通するのは「すぐラウンドに使えるようにする」ことで、特定部分を少し読んでカスタマイズするとすぐ試合で使えるようになっています。

(参考)
象徴的だったのは、アジア大会(UADC)のブレイクラウンド。アジアの強豪NUSに当たった際、アフリカにおける軍事介入のモーションでした。
まずプレパ時間は、素直にモーションを読みながら、かつ必要に応じてディベートノートのほうを使いながら主要な立論を考え、相手への主要な反論もつくりきりました。その際、Whipだったので、最後の5分くらいは私はマターファイルをさらに開いて、必要に応じて例を前のスピーカーに伝えました。

調子が良かったためディベートもよく見えていたため、試合を通じて"intervention" vs "negotiation"のボトルネックがあることも理解できたため、、negotiationがなぜうまくいかないのか、interventionがなぜうまくいくのかという話を過去の交渉/介入例を使いながらスピーチしたところ、80超えの点数が付き、「Whipで試合がひっくり返った」と、いつも動画で見ていた憧れのオーストラリア人ディベーターに言われたことは、僕の中でも大きく印象に残っています。

長くなりましたが、ディベート上達のために、ディベートノート、マターファイル両方を持つことをお勧めしています。マターファイルはまだしも、少なくともディベートノートは負担も少なく簡単にできるうえ、すぐ成長につながりやすいためお勧めです。

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