2018年2月25日日曜日

【80点超えのスピーチシリーズ各論①】Prime Minister編

以前、「80点超えのスピーチをするには」という記事を書いたところ、実は総アクセス数上位にきている人気記事となりました。ありがとうございます。

色々な人にお話を伺っていると、各ロールでどのようにすればいいのか、という一段各論におちた話のニーズがあることが分かったので、シリーズで書いてみようと思います。

今回はPrime Minister編です。NAにしろ、AsianにしろBPにしろ、最初のスピーカーとなります。プレパ時間がある意味一番少なく即興性も求められるロールではありますが、どのようにすれば80点を超えることができるのでしょうか?

色々な考え方があると思いますし、すべてのラウンドで当てはまるとは限りませんし、正直細かい話はいくつもありますが、あえて3つに絞るとすると、ak_debateは下記の通りだと思っています。例えば「80点スピーチ練」に対するフィードバックを行う際も、この3点に沿ってフィードバックするのも一案かもしれません。
(なお、関連記事として「Definitionの戦略」もご覧ください。)

①「やらないといけない」感を醸成する
多くの場合、いわゆる現状を改善するほうに肯定側は立たされることが多いです。Policy Motionの場合だと、チープな言い方ですがAfter Plan(政策後)がStatus Quo(現状)よりも良いと魅せることが必要になります。色々な見せ方がありますが、現状の酷さを絵にした上で、特定の理想像に向かい、アクションをとるべきであると思わせることになります。

例えば、有名な動画ですがWUDC 2011 GF (THW invade Zimbabwe.)で優勝したPMは0:20からムガベによる悪意のある"systematic oppression"があることを具体例を交え説明しながら、"aim of the government"として、民主主義の回復を掲げています。国際社会が何もしない時期が長すぎたという表現を使いながら、アクションの必要性を訴えかけています。

また、近年ではWUDC 2016 GF(THB that the world's poor would be justified in pursuing complete Marxist revolution.)では、"The global poor, all around the world, and no matter what country in which they live, currently live in a system of dictatorship."と、世界規模での問題として、貧困層がある種"dictatorship"により支配されているとパワフルなイントロでスピーチを開始しています。

また、Australs 2013 GF(That women should be criminally liable for harm to foetuses in utero as a result of their lifestyle choices)では"An unborn child, Mr. Speaker, is not a person.  But it WILL be a person"と、一番守りたいfetusを最初にイントロとして持ってきています。かつここで留意すべきうなのは、単純にfetusというのではなく、"unborn child"ということで、人の想像力を掻き立て、シンパシーを覚えさせ、次の文章である「しかし人になる」という次の文章に送り出しているところの美しさです。

このようなパワフルなイントロを実現するには、結局チームとして「何を一番押したいのか?」と考え抜く抽象化が必要になります。誰のアドボカシーになろうとしているのか、という問いでも良いかもしれません。(さらには、感情的な説得という意味では、即興型ディベートに必要な能力を身に着けるための練習法シリーズ② プレゼンテーション力もご覧ください。)

②「やらないといけない感」を起点とした、一連の"primary story"を立て切る

ぐっと空気を作った後は、そこから一連の有機的なストーリーを組み立てる必要があります。ここでミソとなるのは、Prime Ministerはいわゆる多くのがモーションを見たら思いつくPrimary Mechanismを立てる必要があります。(Primary MechanismがSecondary Mechanismと対比して話されている記事【SIDO/QDO/HKDO分析】アジアのBP大会で活躍するための3つのポイント)要は、誰でも思いつくような話はまずしっかりと話さないといけないという期待感があるというところで、そこは人によっては減点式に見られるくらいには厳しい目にさらされます。

したがって、いわゆる多くの人が活用するフレームワークはここで活用することで一定の網羅感を担保しにいくことで説得力が上がります。いわゆる、"Problem, Solvency, Justification"であったり、"Principle, Practical"であったり、それを一段かみ砕いた"Triple A + S/Q, A/P Impact"となります。もちろん型にそったスピーチをしろと言っているのではありません。フレームワークはあくまで思考の網羅性を担保する上での手段であり絶対ではありませんし、それがないからといって減点されるのもおかしな話ではあります。ただ、網羅されていることで説得力はあがるので、その要素をちりばめることが重要になるでしょう。

また、いわゆるモーションのキーワードは大抵は説明されていることが必要になります。要は、特定のキーワードを無視していないか、です。すべてのキーワードがその有機的なストーリーの中で「ならでは感」を醸成しているかと言ってもいいかもしれませんし、よりテクニカルに言うと、uniquenessがあるかだとかもしれません。

例えば、分かりやすい例では、WUDC 2010 Semis : THB that the United States government should subsidize Twitter to liberalize oppressed societiesでは、Prime Ministerは主要な議論を網羅しています。具体的には、Argumentは、Principleとしてなぜ(民主化を推進する)Rightがあるのか、外部からどのように民主化が実現されるか、内部からどのように民主化が実現されるか、という構造になっています。

上記を実現するためには、多角的な細かい分析力、具体的なケーススタディなどのストックなども必要になるかと思います。また、できればSecondary Mechanismまで踏み込むのような強みまで発揮できると、期待値を超えているため、スピーカースコアも伸びやすいと思います。

③ 相手の主要な話へリーダーから対応する
今まではどちらかというとTop-Down/Bottom-Upでのアプローチであり、Horizontalの考えが薄いともとれます。(参考:即興型ディベートに必要な3つの思考法 ~ak_debate提唱「TBH思考法」~)次に重要になるのは、相手の話への対応です。

これは様々な場面で行うことができます。例えばイントロの場面で相手の守りたい話よりもこちらの話のほうが重要であることを出すのであったり、Signpostで行うことも可能です。ですが、やや外す可能性があったとしても相手が確実に言うであろう話への比較を直截的にArgumentの中で行うことも一手です。(ただ、これは相手が予期しないcounter-proposalを出してきた場合や別のスタンスをとった場合は無効化されてしまうという短所もあります)

また、別の角度では、先ほどご紹介したWUDC 2016 GF(THB that the world's poor would be justified in pursuing complete Marxist revolution.)は、なぜ強いPrime Ministerかというと、Oppositionが話すであろう失敗のリスクや悪化の話に関して、「とはいえそういったpracticalな話とはindependentなprincipleの話である」と明言したフレーミングを行っていることです。このPrincipleの部分を守り切ることで勝ち筋に繋げていると評価ができるでしょう。

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(主要記事まとめはこちら

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